日中・春の祭典

scriabin_horowitz.jpgS社のT社長のご好意で、初台の新国立劇場・中劇場で開催された日中青少年友好交流年「日中・春の祭典」に招待していただいた。日中平和友好条約締結30周年の記念、そして数ヵ月後に迫った「北京オリンピック」など日本と中国の相互理解を深めるためのイベントとして企画されたようだ。第1部は、日中の児童合唱団のコーラスやパメラ・ニコルソン氏の作曲した楽曲の世界初演などが組み込まれていたが、何と言ってもヴァイオリンの魔術師の異名をとるヴァスコ・ヴァッシレフ氏の演奏が素晴らしかった。昨年の東京国際音楽祭の懇親パーティーで同席させていただいた時に、彼の気さくな人となりに接し、いっぺんにファンになってしまったのだが、今日はクライスラーの「中国の太鼓」作品3やサラサーテの「カルメン幻想曲」作品25のスーパーテクニックを聴かせていただき、失礼な言い方だが、これを聴くだけでも相当価値のあるコンサートであったと感じた。
ところで、第2部は史志有氏作曲の中国音画「清明上河図」全曲というプログラムで、全12曲80分という大作。中国楽器である二胡や古琴、琵琶などがオーケストラと協演する様はさながら西洋と東洋が融合する「平和」の音楽を想起させるが、如何せん80分という長時間、聴衆を集中させるには辛いものがあった。おそらく中国楽器の持つ波動なのだろうが、二胡などの響きは「眠り」を誘発する音色で、まったりとし、ついついウトウトとしてしまったことを正直に告白しておく。決して難しい音楽ではないし、むしろ世界プレミアなわけで、歴史的な場面に遭遇しているわけだから価値は十分にあるのだろうが・・・。
それにしても、ヴァッシレフの音楽はいかす。The Rolling Stonesのメンバーに気に入られ、ツアーにも同行したそうだから、クラシック音楽に限らずあらゆる分野の音楽に精通するのだろう。彼のテクニックとセンスは、パガニーニやリストを髣髴とさせる(もちろん想像だが・・・)。

ホロヴィッツ・プレイズ・スクリャービン
ウラディーミル・ホロヴィッツ(ピアノ)

ナルシスト、スクリャービンの傑作ピアノ音楽を集めた1枚。彼の音楽は、ホロヴィッツの超絶的な演奏によって知られるようになったと思うが、数十年を経た今でも色褪せない重みを持つ。アシュケナージやポゴレリッチ、ポンティの弾いたスクリャービンもいかすが、本家本元ともいえるホロヴィッツの演奏は一線を画す。僕は「ホロヴィッツの思い出」と題するLDを所有するのだが、自宅で「焔に向かって」作品72を演奏するホロヴィッツの恐ろしいまでの集中力が記録されている映像がその中に残されている。強靭な肉体と精神を要求する途轍もない楽曲を晩年のスクリャービンは書いた。この映像は必見である。

ラフマニノフ、スクリャービン、ショスタコーヴィチと20世紀に活躍したロシア(ソ連)の作曲家の音楽をここのところ集中的に聴いているが、色合いは全く違うもののロシアという大地に根付いた「暗鬱さ」は共通しているように思う。とはいえ、やはりショスタコーヴィチは別格だ。

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