信仰

sibelius_tapiola_jarvi.jpg「レコード芸術」の今月号を斜め読みしていたら、ブラームスのウィーンでの住居の写真が目に飛び込んできた(第二次世界大戦によってこの建物は完全破壊されたので現物は存在しないらしい)。小さな写真だが、仕事部屋の壁にはラファエロ作「サン・シストの聖母」の複製が架かっているのが確認できる。この絵はドストエフスキーも好んでいたようで、彼の晩年の住居の壁にも同様に架かっていたことを何かの本で読んでいて知っていたものだから、ちょっと不思議な気がした。
二人の共通点といえばせいぜいいかめしい髭面くらい(とはいえ、よくよく考えてみるとその芸術性には何か通じるものがあるのかもしれないが・・・)。生まれ育った土地も言語も、そして信仰する宗派も違う二人だが、同時代を生き(ドストエフスキーが一回り年上)、それぞれの分野で後世の人々に多大な影響を与え続ける天才である。

カトリック信仰の象徴でもあるラファエロの絵画を「ロシア正教」を信仰するドストエフスキー、方や「プロテスタント」信仰のブラームスがお気に入りだとは面白い。
芸術創造という側面から考えると、宗派などというのはたいした問題ではないのかもしれない・・・。

今宵、名古屋でセミナーを開催するにあたり、ひとりでも多くの方にご参加いただきたくSに知人を紹介してもらおうと食事した。つい先日霞ヶ関でランチをしたばかりだが、話は尽きず都合4時間弱・・・。面白いものだ。

シベリウス:交響詩「タピオラ」作品112
ネーメ・ヤルヴィ指揮エーテボリ交響楽団

北欧の漆黒の世界を描いたシベリウスの最後の大きな作品(とはいえ20分ほどのものだが)。
「タピオラ」とは、フィンランドの英雄叙事伝「カレワラ」に出てくる森の神「タピオ」の土地を意味する。以前ヤルヴィ指揮エーテボリ響の演奏でシベリウスの第5交響曲を聴いたことがあるが、とても自然な形でシベリウスの世界を創出した名演奏であった。
この「タピオラ」の演奏も美しい・・・。

日本は八百万の神の国というが、多くの日本人は「信仰心」を忘れている(ように思う)。特定の宗教に入信する必要はないが、「目に見えないもの」を信ずる心は忘れてはならない。

そこに北国の暗い森が広がる。
原始的な夢の中に太古の神秘を秘めて、
そこには大いなる森の神が住む。
森の精が暗がりの中に蠢く。
~名曲解説ライブラリー「北欧の巨匠」

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1 COMMENT

アレグロ・コン・ブリオ~第4章 » Blog Archive » 思相(おもあい)

[…] ジャン・シベリウスについてはベルグルンドやネーメ・ヤルヴィ、新しいところではセーゲルスタムがヘルシンキ・フィルと録音したものを愛聴しているが、それらの「北欧型演奏」とは正反対の、南国の熱帯雨林のような様相を呈するバーンスタインの表現も、シベリウスのある一面だと捉えられなくもなく、繰り返し聴くたびに「発見」があり、閉ざされた世界において、不信に満たされた人間関係において、自ら心を開けっぴろげにしてみると意外にすんなりと「わかり合えるものなんだ」ということを諭してくれるよう。 […]

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