ワルター&フェリアーの「大地の歌」

「大地の歌」の第6楽章「告別」。
それもフェリアー独唱のワルター&ウィーン・フィルによる演奏。いわずとしれたデッカの名盤。蒸し暑い水無月中旬の黄昏時に真に相応しい調子の音楽。知人からオーパス蔵盤を譲り受けたので、アナログ盤、そしてCD初期に手に入れた輸入盤とともに聴き比べてみた。

興味深いのは、オーパス蔵盤にはCD復刻にあたって2種の盤、すなわち「ヴォーカル主体の盤」をソースにしたものと「オーケストラ主体の盤」をソースにしたものが収められていること。極めてマニアックな試みで(そもそも同じ録音でミキシングをいじって、しかもリリースされていたとはついぞ知らなかった)、比較してみると確かに違う。「大地の歌」は管弦楽の音量と独唱の音量のバランスをとるのが非常に難しいようで、実際に舞台に触れたとき、必ず歌の部分が聴き取れない瞬間があるのに閉口するのだけれど、オーケストラ主体の盤というのはどちらかというと実際のバランスに近いイメージということだろうから、聴き応え十分・・・。どちらにせよマイクを通しているので、あの声量のないパツァークの声も実に意味深く聴こえる・・・(笑)。

結論を述べると、アナログ盤の音の抜けが抜群に良いこと、弦の音が艶やかですっきりしていることに驚嘆。LP初期盤は3面に収録されていたようだが、僕が所有するMZ5013は2面収録で決して音質的には万全ではないはずなのにもかかわらず、不思議に心に届く。それと、アナログ・レコードというのは面白いもので、聴けば聴くほど音が良くなり、味が出てくる。生きてるんだ・・・。
それにしても、オーパス蔵は良い仕事をする。アナログ盤の良点を削ぎ落とすことなく完璧に再現しようというプロデューサー氏とエンジニア氏の気合いが伝わる。初期CDとは雲泥の差。同じデジタルでもこうでなくてはならぬ。

マーラー:交響曲「大地の歌」
ユリウス・パツァーク(テノール)
カスリーン・フェリアー(コントラルト)
ブルーノ・ワルター指揮ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団(1952.5録音)
*アナログ盤(MZ5013)
*CD(Decca 414 194-2)
*オーパス蔵(OPK 7036/7)

第6楽章「告別」だけを繰り返し。
後半の次の歌詞が僕のお気に入り。

Ich suche Ruhe für mein einsam Herz.
Ich wandle nach der Heimat, meiner Stätte.

Ich werde niemals in die Ferne schweifen.
Still ist mein Herz und harret seiner Stunde!

Die liebe Erde allüberall Blüht auf im Lenz
und grünt aufs neu!
Allüberall und ewig Blauen licht die Fernen!
Ewig… ewig…

私の孤独な心、癒すべく憩いを自ら求めゆき
私が歩み行く彼方には、私が生まれし故郷あり

私は二度と漂白し、さまようことはあるまいよ
私の心は安らぎて、その時を待ち受ける

愛しき大地に春が来て、ここかしこに百花咲く
緑は木々を覆い尽くし 永遠にはるか彼方まで
青々と輝き渡らん
永遠に 永遠に・・・

私が生まれた故郷ではすべてがつながっていたのだと王維の原詩は訴えるのか?

下馬飲君酒
問君何所之
君言不得意
歸臥南山陲
但去莫復問
白雲無盡時

深い・・・。

 

 


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シュヴァルツコップ ワルター指揮ロイヤル・コンセルトヘボウ管 マーラー 交響曲第4番(1952.6.6Live)ほか | アレグロ・コン・ブリオ へ返信するコメントをキャンセル

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