サロネン:シルベストレ・レブエルタス作品集

シルベストレ・レブエルタスの音楽には生命が漲る。
万物の命の根源である鼓動と緊張と弛緩を生み出す呼吸の反復。そこには人の心を震撼させる力が存在する。土俗的な、つまりそこに住まう民族のつながりを表現するリズムの応酬。残念ながら僕はメキシコに足を踏み入れた経験がないが、こういう音楽はどこかで何度も聴いたことがある。ストラヴィンスキーのロシアの大地に根差した広大で深遠、かつ野蛮な音塊を髣髴とさせるが、いや、ここにはもっと抑圧されたネイティブとその地を侵略しようとしたヨーロッパ人との相克が感じられるところが興味深い。そう、中南米の土着の音楽がいわゆる西洋古典音楽の語法と無理矢理出逢わされて生じた「混血音楽」。
そういえば、我が伊福部昭氏の音楽にも似たようなニュアンスがある。ポピュラーでいて、どこか不思議な抵抗と郷愁を感じさせる音楽。

蒸し暑い。
雲間を抜ける太陽の光を見ていて、どうにも日常の鬱積を一気に解放したくなった。

打楽器の低音の響きが心を揺さぶる。どうしてこういう音楽が無視されているのだろう。この作曲家の音楽はもっと聴かれるべきでは。20数年前、初めて聴いた時には卒倒した。その時も同じような感想を持った。しかし、いまだにレブエルタスはポピュラリティを獲得しない。この人の作品は絶対に日本人好みのはずなのに。

レブエルタス:
・センセマヤ
・オチョ・ポル・ラディオ
・マヤ族の夜
・ガルシア・ロルカへの讃歌
・窓
・真面目な小品第1番
・真面目な小品第2番
エサ=ペッカ・サロネン指揮ロスアンジェルス・フィルハーモニック、ロスアンジェルス・フィルハーモニック・ニュー・ミュージック・グループ(1998.3.30-31録音)

傑作は「マヤ族の夜」!!昔、実演に触れたとき感動した。もともとは映画のための音楽として作曲された作品らしいが、もうこれは4つの楽章を持つ一大シンフォニーと言って良い。
第1曲「マヤ族の夜」は、極めて壮大な主題を持つ物語の前奏曲。部族のお祭の幕開けと中間部の静けさの対比。それはまさにマヤ族の敬虔な祈りを表す。
スケルツォ楽章である第2曲「ハラナスの夜」の快活さは、それこそ抑圧された部族の解放の叫びだ。おどけた雰囲気の中にどこか感じられる哀愁。
さらにアンダンテ・エスプレッシーヴォの第3曲「ユカタンの夜」、何と浪漫的で懐かしい音楽なのだろう。ネイティブ・メキシカンの束の間の安寧。
そして、いよいよ終曲「エンカタミィエントの夜」の熱狂と爆発。ここはこの作品のクライマックスだ。第三世界的混沌とした打楽器のリズムの極致、その上に被さるように高鳴る金管群の雄叫び!!下手なロック音楽を聴く以上のカタルシス体験!!
コーダにおける第1曲の主題の回想シーンでは・・・、思わず笑みがこぼれる。何と素敵な音楽であることか。
未だこの音楽に触れ得ていない皆様にぜひともお勧めしたい。
サロネンの指揮も抜群。

 


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