コリリアーノの「Mr.タンブリンマン」組曲を聴いて思ふ

corigliano_mr_tambourine_man10数年前、仕事の関係でピーター・バラカンさんとお会いする機会があった。とても気さくで壁のない方。確か携帯電話をもたない主義のちょっと変わった人(?笑)だったんじゃなかったか(今はわからないけれど)。理由も聞いたように思うが、忘れた。
今朝、NHK-FMをぼーっと聴いていたら、バラカンさんがリクエストに応え、1969年のワイト島フェスティヴァルでのボブ・ディランのライブ・パフォーマンスをかけながら、実は客席で実際に聴いていた旨を話されていた。彼はブロードキャスターという肩書をもっているが、やっぱり英国ロックをオンタイムで体感し、知り尽くしている本物の音楽評論家なんだと再確認。とにかく談話のすべてがとてもリアルなんだ。

そういえば、いつぞやのロッキング・オン誌上で(調べたら2009年7月号)、渋谷陽一氏が聞き手になっての「ピーター・バラカンが見た、1969年のイギリスとロック」というインタビュー記事にそんなことが書かれていたことを思い出した。

渋谷「ピーターと僕は同い年で、69年に18歳なわけなんですが、当然ロック・ファンだったわけですよね。69年というと何を思い出す?」
バラカン「いっぱいあるよね。とにかく名盤だらけの1年だからね。詳細はまったく憶えていないんだけど、ワイト島のフェスティヴァルに行ったことは今となっては大きな思い出だな」
渋谷「最初からむかつきますね(笑)」
P80

さすが、である。
今朝のラジオでは、そのワイト島でのディランとザ・バンドによる(?)「Mr.タンブリンマン」が流れた。観客の盛り上がりの凄さが印象的。ディランの声も、例のしわがれ声でなく、どちらかというと「ナッシュヴィル・スカイライン」の時のハイトーンの澄んだ声。これがまた実に良かった。

ところで、「Mr.タンブリンマン」にはもうひとつ素敵なバージョンがある。ザ・バースのデビュー・アルバムに収録されたカヴァー。僕にとっての「タンブリンマン」はどちらかというと、いかにもフォーク・ロック調のこちらの方。古い録音だけれど、イントロからディランのオリジナル・バージョンにはないワクワク感を与えてくれる。それと何とも明朗なハーモニー。

さらに、もうひとつ。ジョン・コリリアーノが「タンブリンマン」に触発され、ディランの詩に独自の曲を付け、組曲とした現代曲。

コリリアーノ:
ボブ・ディランの7つの詩による「Mr.タンブリンマン」
第1曲前奏曲「Mr.タンブリンマン」
第2曲「物干し綱」
第3曲「風に吹かれて」
第4曲「戦争の親玉」
第5曲「見張り塔からずっと」
第6曲「自由の鐘」
第7曲後奏曲「いつまでも若く」
3つの幻覚
第1曲「犠牲」
第2曲「讃歌」
第3曲「儀式」
ヒラ・プリトマン(ソプラノ)
ジョアン・ファレッタ指揮バッファロー・フィルハーモニー管弦楽団(2007.3&6録音)

ボブ・ディランの詩が使われているというだけで、曲は全くの別物。
コリリアーノはジャンルを問わず、過去の大家の作品にインスパイアされ、独自の路線の音楽を数多生み出しているが、この「タンブリンマン」組曲は出色。何と言っても圧倒的にヘヴィーな音調なのに、すべてが祈りに染まる。
特に、アカペラで始まる後奏曲「いつまでも若く」の静けさと美しさ!!(3分45秒以降オーケストラ伴奏が入った後の透明感!!)

“Forever Young”(いつまでも若く)
神の祝福がいつまでもあなたにありますように
ねがいごとがすべてかないますように
いつもひとのためになりますように
ひとがあなたのためになりますように
星までつづくはしごをつくり
ひとつひとつの段をのぼり
あなたがいつまでも若くありますように
(詩:ボブ・ディラン、訳:片桐ユズル)

 


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