グランプリ・コンサート2011

昨日とは打って変わって見事な秋晴れで汗ばむほど。晩秋の東京の空模様はまったく読めなくて体調を崩す人も多いよう。そういう僕も少々風邪気味・・・。

津田ホールで開かれた「グランプリ・コンサート2011」を訪れる。2度目のアタッカ・クァルテット詣で。4人は11月4日の札幌を皮切りに、11月22日の大阪公演まで全国を縦断中だが、全く疲れを見せず、むしろ絶好調の様相。ベートーヴェンの作品132をメイン・プロにした果敢なプログラムからは自信のほどが伺える。

2011年第7回「大阪国際室内楽コンクール」第1部門(弦楽四重奏)第1位
グランプリ・コンサート2011

2011年11月20日(日)14:00開演
於:津田ホール

プログラム
・シューベルト:弦楽四重奏曲第12番ハ短調D.703「四重奏断章」
・ジョン・アダムス:舞曲についてのジョンの書
・ベートーヴェン:弦楽四重奏曲第15番イ短調作品132
アンコール~
・ハイドン:弦楽四重奏曲第82番ヘ長調作品77-2からメヌエット
・ドヴォルザーク:弦楽四重奏曲第12番ヘ長調作品96「アメリカ」からフィナーレ

シューベルトの前衛性が如実に見え隠れする名演。とても23歳の作品とは思えない厳しさと優しさをあわせもつ傑作であることがアタッカ・クァルテットの演奏により証明される。作曲中力尽きたのであろうシューベルトの心持が何だか理解できる・・・。
ジョン・アダムスの作品は興味深い。全10曲から8曲が抜粋されて演奏されたが、ミニマル的なテープ・ループを土台にして果敢に挑戦的に音楽が彩られる。テープ音源がいつ終わるともなく繰り返される様は宇宙の永遠性、普遍性を示すよう。偶然にも、左側に高音部を奏する「女性奏者」、右側に低音部を司る「男性奏者」が配置されるが、ユニゾンで演奏されようとハモろうと決して交わることのない瞬間が、音楽が進行するにつれひとつになってゆくよう。そう、その名の通り「踊ること」で思考を無にし、結果人々は宇宙と一体化する、そんなような「景色」を表現するような作品に僕には思われた。本当に興味深い・・・。
15分の休憩後、いよいよベートーヴェン。その演奏は・・・、圧巻だった。中心楽章である第3楽章「リディア旋法による、病気から回復した者の神に対する聖なる感謝の歌」の敬虔な祈りと生き長らえる歓喜の見事な表現!!聖なるものと俗なるものが交わり、いつの間にかひとつになるというこの感覚が、演奏者と聴衆が一体化する瞬間とリンクし、まるでその場を宗教的儀式のようなエクスタシーに誘ってくれる。この音楽が体感できただけでも本日の価値は大いにある。アンコールの2曲も素敵だった。

彼らの今後の活躍が楽しみだ。


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アレグロ・コン・ブリオ~第5章 » Blog Archive » アタッカ・カルテットのメンデルスゾーンを聴く

[…] 久しぶりにメンデルスゾーンのカルテットを聴きたくなって、昨年2度ほど生演奏に触れたアタッカ・カルテットのCDを取り出した。そういえば最初のサントリーホールでのリサイタルの折に購入したきりになっていたものだ(ほとんど未聴のまま棚に眠る音盤がいくつもある・・・苦笑)。ヤナーチェクの第2四重奏曲とのカップリング。あくまで独断と偏見で述べさせていただくと、(漠然とした言い方が許されるのなら)彼らの演奏には「男性的なもの」と「女性的なもの」が混在しており、実にそれらが上手く調和した時に特別な名演奏が生まれる。そしてどちらかと言うと女性2人が「男性性」が強く、男性奏者2人が「女性性」が強い、そんなことを感じた過去2回のコンサートだった。ということは内面的にも外面的にも非常にバランスのとれた(両性具有?)カルテットだということだ(本当か?笑)。 […]

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