ベルニウスのメンデルスゾーン「ドイツ典礼」&「6つのアンセム」を聴いて思ふ

mendelssohn_kirchenwerke5_berniusわずか1世紀か2世紀前、「信仰」は明らかに人々の生活の中心だったのだと古の音楽を聴くたびに思う。そもそも音楽は教会(宗教)発祥であり、音を奏でることそのものが祈りであったわけで、現在に至るあらゆるジャンルの音楽も、結局は人々を「癒す」目的で作られているものが大半なのだろう・・・。

39年という短い生涯の中で聖俗数多の作品を世に問うたフェリックス・メンデルスゾーンの教会音楽作品は、どれもが「崇高」という概念(枠)を通り越して、あまりに美しく、そして愛に満ち足りた旋律に溢れ、聴く者の心を焦がす。

晩年の「ドイツ典礼」など、本アルバムに収録されているのはたった3編にもかかわらず、古今のあらゆるミサ曲を凌ぐ美しさ。ヨハン・ヘルベックがブルックナーの「ヘ短調ミサ曲」の初演を聴いて「私が知る最高のミサ曲は、この曲とベートーヴェンの荘厳ミサ曲だ」と漏らしたという逸話を少し前にも紹介したが、より内省的で一層静的という意味でメンデルスゾーンのこの音楽はかの大曲を凌駕する。後々、ガブリエル・フォーレにつながる「音の詩」がここにはあるのだ。
同じく晩年の「6つのアンセム」に秘められた静かなパッションは、まさか本人は予想だにしなかっただろうが、残された短い命の期間にそれまでの「すべて」を凝縮する緊張感に支配され、自身の魂すらをも癒す力に漲るほど。ハレルヤ・・・。

メンデルスゾーン:教会作品集Ⅴ
・「ドイツ典礼」~キリエ、グローリア&サンクトゥス(1846)
・教会音楽(3つのモテット)作品23(1830)
―深き悲しみの淵より、われ汝を呼ぶ
―われら人生の半ばにありて
―アヴェ・マリア
・レスポンソリウムと讃歌「讃歌の歌」作品121(1833)
・6つのアンセム作品79(1843-46)
―われらの心を喜ばしめよ(降臨節用)
―喜べ、もろびと(クリスマス用)
―われらの避難所なりし主よ(新年用)
―主よ、われらの罪によりて(受難節用)
―われらの罪のために(聖金曜日用)
―すべての称賛をこえて(昇天祭用)
・詩篇100番「全地よ、主に向かって喜びの声をあげよ」(1844)
・それ、主汝のためにみ使いたちに命じ
フリーダー・ベルニウス指揮シュトゥットガルト室内合唱団(1996.6-7録音)

1845年から46年のフェリックスを振り返る。

この実り多い時期が終ると、メンデルスゾーン一家はライプツィヒに戻り、そこで10月からフェリックスはゲヴァントハウス管弦楽団の1845年から1846年のシーズン音楽会の指揮をニール・ガーデと分かち合った。10月23日には、フェルディナント・ダーヴィトが自分に献呈されていた「ヴァイオリン協奏曲」を際だって華々しく独奏し、メンデルスゾーンはシューマンの「交響曲第1番」を見事に指揮していた。数日後には、彼はベルリンで自作の「コロノスのオイディプス」とラシーヌの「アタリー」のための重要な付随音楽(第1幕から第4幕をすめくくる合唱曲)を披露した。・・・(中略)・・・
12月の4日と5日のライプツィヒでの演奏会で、メンデルスゾーンは「スウェーデンのナイチンゲール」、女性歌手ジェニー・リンドの伴奏をしたが、彼女が歌った曲の中には有名な「歌の翼に」が入っていた。1846年1月1日には再び、クララ・シューマンのピアノでロベルト・シューマンの「ピアノ協奏曲イ短調作品54」の演奏が行われ、メンデルスゾーンが指揮をした。24日、フェリックスは自作の劇音楽「夏の夜の夢」を、2月14日にはリヒャルト・ワーグナーの「タンホイザー」の序曲を指揮したが、ワーグナーはきわめて無愛想な批評をしている。・・・(中略)・・・
その後6月13日には、メンデルスゾーンは彼自身の祝典曲「芸術家たちに」が演奏される合唱行事のためにケルンにいる。
彼が長い時間を費やしたこれらの行事の間中、メンデルスゾーンはどうやって作曲する方法を見つけていたのかという疑問が起きる。
レミ・ジャコブ著・作田清訳「メンデルスゾーン」P184-186

指揮に演奏に作曲にと、八面六臂の活躍を見せるフェリックスはおそらくその一方で過大な肉体的消耗を強いられたのだと想像するが、そんな中であったがゆえにこそ、「信仰」に裏打ちされた、かといって決して抹香臭くない素晴らしい教会作品を生み出すことができたのだと思われる。精神的には、魂的には相当に充実していたということ。これこそ「聖俗のバランス」のうちに在る奇蹟・・・。

 

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