バイロン・ジャニスのシュルツ=エヴラー「美しく青きドナウ」アラベスクほかを聴いて思ふ

byron_janis_blue_danube353ショパンの円舞曲の弾き方一つとってみても、独特のリズム感と呼吸、ためのセンスに遊び心と音楽性の高さが垣間見える。イ短調作品34‐2にある憂愁は、この人の演奏を得て明朗な舞踊曲として甦る。そして、遺作のホ短調円舞曲には仄暗い情熱がほとばしる。
あるいはまたト短調のバラードは、先日聴いたエレーヌ・グリモーのそれと比較してみて実に男性的なごつごつとした響きで、まるで別の作品を聴くかのようにエネルギーは内側にこもる。

バイロン・ジャニスは外面上の美しさを追わない。それよりも内面的なパッションを重視するのである。この人の生き様を僕は知らない。しかし、少なくともピアノ演奏を聴く限りにおいて、彼がどれほどの壮絶な人生を歩んできたのか真に興味深い。それくらいに揺れに揺れる激しい音楽が奏でられるのである。

リストの「愛の夢」第3番については、いかにも夢見るような旋律をゆっくりと歌わせながら奏でる何気ない音楽の「ため」に心打たれる。何という呼吸の深さ。また、ハンガリー狂詩曲変ニ長調ラストの猛烈な勢いに、血気盛んな24歳の青年の未来への希望と果敢な挑戦を思う。

さらには、ブラームスのワルツ。可憐な作品39-15、そして流れるように奏される作品39-1から作品39-6までの、激しさと優しさが同居する妙味。

ヨハン・シュトラウスⅡ世/アドルフ・シュルツ=エヴラー:
・「美しく青きドナウ」の主題による演奏会用アラベスク
ブラームス:
・ワルツ変イ長調作品39-15
・ワルツロ長調作品39-1
・ワルツホ長調作品39-2
・ワルツ嬰ハ長調作品39-6
ショパン:
・ワルツ第3番イ短調作品34-2「華麗なる円舞曲」
・ワルツ第14番ホ短調(遺作)
・バラード第1番ト短調作品23
・練習曲第8番ヘ長調作品10-8
リスト:
・「愛の夢」第3番変イ長調S541-3
・ハンガリー狂詩曲第6番変ニ長調S244-6
バイロン・ジャニス(ピアノ)(1952.8.20-22録音)

しかし何より素晴らしいのが、世紀末的退廃が映され、超絶技巧を要するシュルツ=エヴラーの「美しく青きドナウ」の主題による演奏会用アラベスク!!
シュトラウスⅡ世の生んだあの名旋律が、まるで小さなサロンでジャズを奏でるように軽快に、そしてとても10本の指で弾かれているとは思えないほど重厚に紡がれるのである。

かのマイケル・ジャクソンも愛聴したといわれるバイロン・ジャニス。
選曲のセンスといい、暗さを秘めた内燃する情熱的演奏といい、真に素晴らしい。

 

ブログ・ランキングに参加しています。下のバナーを1クリック応援よろしくお願いいたします。


音楽(全般) ブログランキングへ


コメントを残す

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください

アレグロ・コン・ブリオをもっと見る

今すぐ購読し、続きを読んで、すべてのアーカイブにアクセスしましょう。

続きを読む