自律的に・・・、そして他者を想い・・・

brahms_rosel_2.jpg人間を知ることって面白い。2年前まで、ある意味(?)大変な重労働環境の中で10数年という長い間、人に深く関わり、ともに泣き、ともに笑い、ともに喜ぶという生活をしてきたのには相応の理由があった。そのときは自分の将来や自分自身の生活のことなどはっきり言ってまったく考えていなかった。ただひたすら「人と出逢い、触れ合う」という仕事に邁進するのみ・・・。それはまるで麻薬のようだったのかもしれない。ただ、いつまでも依存しているわけにはいかないという一種の焦りから、その場を飛び出したのがつい昨日のよう。もう丸2年だ。

世の中の今のような状況は、当時予想だにしなかったが、こういう不景気の時代になると、自律的に生きることの重要性が身に染みる。自律的に・・・、そして他者を想い・・・・(言い換えれば、自分軸をしっかりと・・・、そして外に意識を向け・・・)

「クララ・シューマン~光にみちた調べ」(カトリーヌ・レプロン著、吉田加南子訳)が面白い。
晩年のロベルト・シューマンについて想いを馳せるにつけ、この天才音楽家に発見され、巨匠の死後、クララとプラトニックであれ深い関係にあったであろうヨハネス・ブラームスについて考えることが多くなる。もう20年以上も前・・・完璧主義者で納得のゆかない楽曲に関しては必ず破棄していたヨハネスが後世に残した作品はどれひとつとっても愚作はないと信じ、日々聴き漁っていた頃がとても懐かしい。
1854年、シューマンがエンデニヒの療養所に入院後、ブラームスがシューマン家の人々(すなわちクララ夫人や7人の子どもたち)を自分ごとのように心配し、面倒をみたというエピソードを知ると微笑ましい(晩年の気難しい彼の風貌からは想像すらできないが、気立ての優しいはにかみ屋の性格であったことがよくわかる)。当時、シューマンとクララの間に生まれた末子フェリックスの誕生日を記念し、青年ブラームスから「シューマン変奏曲」がクララに贈られている。

ブラームス:シューマンの主題による変奏曲嬰へ短調作品9
ペーター・レーゼル(ピアノ)

かつてドイツ・シャルプラッテンから出ていた独奏曲全集からの1曲。この音楽に関しては、この音盤での演奏しか聴いたことがないゆえ比較のしようがないが、レーゼルは初期ブラームスの深い愛情と優しさに満ちた音楽をオーソドックスに上手く表現していると思う。

「ブラームスは私の心を慰めようとして、この壮大でしかも内面的な深さをもった主題による変奏曲を作曲した」~クララの日記より

「ブラームスは私にとって最も親しい、そして最も真実味のある支えです。ロベルトが病気になった初めの時から、彼はそばにいてくれます。私が試練を受けているその傍らに立っていてくれます。彼は私とともに苦しんでくれたのです。」(クララからエミーリエ・リストへの手紙)

以後、クララは夫ロベルトへの感謝表明の時と同様、ブラームスへの感謝の気持ちを、自分が演奏するときに彼の曲を弾く、という形で表すことになる。クララ・シューマンという不世出の女流ピアニストの力により、ロベルト・シューマンとヨハネス・ブラームスという歴史に名を残す大作曲家が生まれ得たといっても過言でないほど、彼女の果たした役割、そして存在そのものは大きい。不思議でもあり、必然でもあった三角関係・・・。それぞれが自律的に生き、お互いがお互いを必要としていた(想いをもっていた)人間関係は素晴らしい。


4 COMMENTS

雅之

こんばんは。
・・・・・・ある時ブラームスは、「シューマンから習ったのはチェスくらいのもので・・・・・」ということを言ったという。こういう言葉は喜んで語り伝える人が多いから用心が必要だ。・・・・・・(前田昭雄 著『シューマニアーナ』春秋社)
用心深いブラームスにしては不用意な失言です(笑)。
すみません。なかなかスキを見せないブラームスをからかうのは「ネタ」としてやりがいがあるので、彼の偉大さを誰よりも認めたうえで、つい指が勝手に動いてしまいます。スキだらけのかわいそうなシューマンをからかう気にはなれませんが・・・。
まあ、いいでしょう(何がいいのかよく分かりませんが・・・笑)。シューマンを語ると熱くなりすぎるので話題を変えます。
CDのボックス・セットもの、安いのでついつい買ってしまい困ります。
レーゼルのブラームスは、ピアノ独奏曲全集を数年前に入手しましたが、これは私も大好きな演奏です。次いで「レーゼルの芸術 協奏曲編」(10CD)も買い、ザンデルリンクとのラフマニノフ他、すべて落ち着いて聴け深みのある、旧東ドイツでの名演で、こちらもすべて愛聴盤になっています。
http://www.hmv.co.jp/product/detail/1068585
去年はデームスの演奏で、シューマンのピアノ独奏曲全集を買いました。
http://www.hmv.co.jp/product/detail/2636187
これも、決して技術偏重の演奏ではありませんが、レーゼル同様、心ある人に聴いていただきたいCDです。

返信する
岡本 浩和

>雅之様
おはようございます。
ご紹介の前田昭雄氏の書籍、僕も随分昔に読みました。10何年ぶりかにひっぱり出してきて読み返しました。
書いてますね、「チェスくらいのものだ」と・・・(苦笑)。
ただ、このエピソードの出所がわからないのと、こういう言葉は前後の文脈あってのものですからそのまま鵜呑みにはできないですねぇ(といってブラームス擁護)。
シューマンvsブラームス、この話題でまたサシ飲みできますね(笑)。
レーゼルのこのブラームス全集も安くなりましたね。
僕は95年に徳間から出た¥1,000盤で蒐集しました。当時安いなぁ、と思って飛びついたのですが、それ以上に安くなってますからねぇ、今は。デームスのシューマン全集ももってますよ。13枚組で2,000円強。驚きです。
ただ、もっているというだけでまったく聴き込んでおりません。いわゆる積んどく状態で・・。これだけCD代が安くなると、逆に聴かない音盤が増えて、一生懸命じっくりとひとつひとつ聴いていた昔が懐かしいです。これも「退化」みたいなものですね。

返信する
畑山千恵子

2007年4月29日、紀尾井ホールでのベーター・レーゼルのリサイタルを聴きにいき、大変感動しました。そして、5月7日までゲルハルト・オピッツのブラームス全集との聴き比べをして、両者とも甲乙つけ難しでした。そして、12月4日、27日、ゲルハルト・オピッツのベートーヴェンツィクルスを楽しみにして、聴きに行きました。大変素晴らしい演奏で、ペーター・レーゼルのリサイタルに行った人も聴きに来た人もいると思います。
2008年9月20日、10月2日、ペーター・レーゼルのベートーヴェンツィクルスが始まりました。これはCDも出て、全集になります。12月9日、26日、ゲルハルト・オピッツのものもあり、こちらは2005年から始まりまして、この年が最後でした。何と、第29番「ハンマークラヴィーア」、第30番が聴き比べとなりまして、これまた甲乙つけ難しで、CDも同じこと。テンポの違いがあるだけで、繰り返しもやっていることでは同じでした。
21世紀ドイツ・ピアノ界を代表するピアニストとして、ペーター・レーゼルとゲルハルト・オピッツの名が一緒に挙がるようになりましたね。

返信する
岡本 浩和

>畑山様
こんばんは。以前のブログでもレーゼルとオピッツのことでコメントをくださいましたよね?ありがとうございます。
意外にも(失礼ですが!)素晴らしいですね、レーゼルは。
彼のベートーヴェン・ツィクルス聴いてみたいものです。

返信する

コメントを残す

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください