かつての北の芸術家諸氏が南国イタリアに憧憬を抱いた理由がよくわかる。
大いなる開放感、そして、陽気でエネルギッシュな歌。
岡田尚之凱旋リサイタルを聴いた。
音楽は人心を鼓舞する。イタリア歌劇のいくつもの有名なアリアを聴いて、その楽観性を羨ましく思った。どんな苦難にあろうと、未来に対する前向きさは人後に落ちない。ゲルマン民族の多くはその空気に触れ、類い稀なる創造の花を咲かせたのだろう。
前半は北の音楽。
もの悲しくも簡明なリヒャルト・シュトラウスの歌曲は、作曲家の現実的な心を反映する。一切のひねりなく、直接的に表現する岡田尚之の歌は温かさに溢れ素晴らしかった。何という明朗さ。また、フランツ・リストの歌も、彼らしいヴィルトゥオーゾ的伴奏に乗り、実に愛らしかった。さらにはセルゲイ・ラフマニノフの北の大地らしい春めいた愉悦に心動いた。
岡田尚之凱旋テノールリサイタル
2016年9月1日(木)19時開演
王子ホール
岡田尚之(テノール)
ヴィンチェンツォ・タラメッリ(ピアノ)
リヒャルト・シュトラウス:
・「ひそかな誘い」作品27-3
・「明日!」作品27-4
・「献呈」作品10-1
・「万霊節」作品10-8
リスト:
・「私は地上に天使の如き行いを見た」S270-3
・「それは素晴らしいことに違いない」S314
ラフマニノフ:
・「歌うなかれ、美しい人よ」作品4-4
・「春の水」作品14-11
休憩
・ジョルダーノ:「ある日青空を眺めて」~歌劇「アンドレア・シェニエ」
・ヴェルディ:「あのひとの面影を見たときに」~歌劇「ドン・カルロ」
・プッチーニ:間奏曲~歌劇「マノン・レスコー」(ピアノ独奏)
・マスネ:「おお、裁きの主、父なる神よ」~歌劇「ル・シッド」
・レオンカヴァッロ:「衣装をつけろ」~歌劇「道化師」
・ドニゼッティ:シンフォニア~歌劇「ロベルト・デヴリュー」(ピアノ独奏)
・プッチーニ:「誰も寝てはならぬ」~歌劇「トゥーランドット」
~アンコール
・ロータ:ゴッドファーザー「愛のテーマ」
・モドゥーニョ:ヴォラーレ
後半は十八番のイタリア歌劇アリア集。
声量から表現から前半とは打って変わって圧倒的だった。
ジョルダーノの「ある日青空を眺めて」を耳にしたとき、会場を震撼する歌に感動した。それにしても素晴らしかったのは今や知らない人がいないだろうプッチーニの「誰も寝てはならぬ」。短い歌の中に込められたカラフのモノローグにトゥーランドット姫へのただならぬ愛を想像した。
初来日だというタラメッリのピアノはコレペティトゥアらしく端整で心地良く、プッチーニとドニゼッティの名旋律を見事に表現(シンフォニアに出る英国国歌の荘厳さ!)。
ちなみに、アンコールにはポピュラーな2曲を、それこそ喜びに満ちた歌で。
嗚呼・・・。
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いいですね!!
ところで、イタリアは日本と並ぶ巨大なパワースポットのひとつかも。
http://mainichi.jp/articles/20160826/k00/00m/040/083000c
私は「世界遺産 ポンペイの壁画展」を見てきました。
http://www.chunichi.co.jp/event/pompei/
>雅之様
「ポンペイの壁画展」、良いですねぇ。
イタリアと日本とはどこか共通点のようなものを感じますね。歌劇アリアなどはまさに演歌に近いですし。