真実(真理?)とは決して表に出されないものなのだと思った。
本邦初紹介の「禁じられた遊び」別オープニングと別エンディングの衝撃。
あの悲しいストーリーが架空の物語として紹介されるのである。
ここではブリジット・フォッセーが本編とは別の少女として登場し、次のように語る。
二人を私たちの島に呼んだらどう?
みんなで抱き合うの。
道を教えてあげてね。
カモの親子についてくればいいって、
ここなら誰にも意地悪されない。
待ってるって言ってね。
早く来てって。
この言葉だけで僕には十分。
戦争と死、そして悲しい別れというものは狡猾な人間たちが生み出した茶番のようなもの。しかし、たとえそれが茶番であったとしても誰にも抜け出すことのできない環の中にある「物語」なのだとルネ・クレマンは伝えたかったのではなかろうか。
そして何より、この別バージョンが公開から数十年を経て日本人の目に触れるのだから、まさに現代において僕たちが気づかなければならないこと、志をもって動かなければならないことを示唆しているように僕には思えてならない。少なくとも今この時点でこの映像を観た僕にとっては十分に重みのあるもの。
・ルネ・クレマン監督「禁じられた遊び」(1952)
ジョルジュ・プージュリー(ミシェル)
ブリジット・フォッセー(ポレット)
リュシアン・イベール(ミシェルの父)
ジュザンヌ・クールタル(ミシェルの母)
ジャック・マラン(ジョルジュ・ドレ)
ロランス・バディー(ベルテ・ドレ)
アメデー(フランシス)
ルイ・サンテーブ(司祭)
ピエール・メロビー(レイモン)
アンドレ・ワスリー(クエル)、ほか
ナルシソ・イエペス(音楽および演奏)
ロベール・ジュイヤール(撮影監督)
隣人の不仲、そこでの禁じられた恋。都会の女の子と田舎の男の子の出会いと別れ。何でもない日常の描写が別オープニングと別エンディングによって見事に生まれ変わる。
その上、たった一本のギターで奏でられる、イエペスによる有名なテーマ音楽「愛のロマンス」のあまりの哀しい美しさ。何と慈悲深い(ブリジット・フォッセー演じる)ポレット、何と純真な(ジョルジュ・プージュリー演じる)ミシェル。
子どもにとって儀式(つまり冠婚葬祭)などどうでも良いことなのである。生という真実、死という事実がそこにあるだけ。ミシェルが十字架を盗み、動物の墓をつくることはむしろ死に対する讃歌であったのかもしれぬ。
日々蓄積される知識によって大人は雁字搦め。
枠を出よう。
そしてみんなで抱き合おう。
道を教えるのだ。
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コメントが遅くなり、すみませんでした。
(偶然にも?)、私の55歳の誕生日に粋な計らいでこれを採り上げていただき、感謝感激です。
本邦初紹介の「禁じられた遊び」別オープニングと別エンディング、示唆に富んでいますよね。
この名作映画も、芸術作品が時代時代によって受容のされ方が変化していく好例でしょうね。
私の手元に、「大アンケートによる洋画ベスト150 (文春文庫―ビジュアル版) 」( 1988/7) という本がありまして、あの立川談志がこんな感想を述べています。
・・・・・・『禁じられた遊び』を見た時、もう生きてるのが厭になっちゃったくらいに感動した。新宿の封切館で、キャロル・リードの『落ちた偶像』とたまたま二本立てでやってて、『落ちた偶像』を見に行ったら、『禁じられた遊び』の途中だった。十字架を捨てたりメソメソ泣いたりするんで、「何だいこれ」と思っているうちに、ジワジワときた。一緒に見たやつなんか、浪花節と任侠物しか行かないって男なのに、もう涙、涙、滂沱(ぼうだ)の涙ってやつ。忘れられないよね、こういうのは。・・・・・・
談志師匠が生きていて、本邦初紹介の「マクラ」と「落ち」を見たら、何と言うのでしょうね(笑)。
https://www.amazon.co.jp/%E5%A4%A7%E3%82%A2%E3%83%B3%E3%82%B1%E3%83%BC%E3%83%88%E3%81%AB%E3%82%88%E3%82%8B%E6%B4%8B%E7%94%BB%E3%83%99%E3%82%B9%E3%83%88150-%E6%96%87%E6%98%A5%E6%96%87%E5%BA%AB_%E3%83%93%E3%82%B8%E3%83%A5%E3%82%A2%E3%83%AB%E7%89%88-%E6%96%87%E8%8A%B8%E6%98%A5%E7%A7%8B/dp/4168108082/ref=sr_1_1?s=books&ie=UTF8&qid=1483701028&sr=1-1&keywords=%E6%B4%8B%E7%94%BB%E3%83%99%E3%82%B9%E3%83%88150
>雅之様
あ、誕生日でしたか!まったく偶然とはいえ、つながっているようですね。(笑)
いただいたBDを2ヶ月近く放置してしまいました。お詫び申し上げます。
それにしても、別オープニング&エンディングに吃驚しました。
なるほどと納得。最高です。ありがとうございます。
談志師匠にも観ていただきたかったですね。