5歳の僕

The_Who_Tommy.jpg僕はどうもJimmy Pageに弱いようだ。五反田で時間を潰すためにふと立ち寄った本屋で彼を含めた4人のモノクロ写真が表紙になった雑誌と目が合い、久しぶりに購入した。
rockin’ on(2009年7月号)「1969年、ロックの全てはここから始まった!」

どうやらこの年はあの伝説のウッドストック・フェスティバルの年であり、ビートルズが解散した年であると同時にレッド・ツェッペリンがデビューした年でもあるのだ。いつだったかも書いたように思うが、幼児の記憶が比較的鮮明である僕はこの年の思い出も断片的にではあるがある。保育園の年長組だったこの年、名前はとっくに失念したが皆よりひとつ年上の男の子がいた。どういう理由だったかは今となってはわからないが、一足早く卒園するということで(つまり、半年ほど早く小学校に上がるということ)、彼一人の卒園式(のようなものだったか?)が挙行された。それ以外全く何の覚えもないが、全員で写った記念写真のシーンを妙に覚えている。古いアルバムをひっくり返せばその時のモノクロ写真が出てくるだろうが、確か1969年の11月じゃなかったかと思う。それと、当時の保育園の旧友が兄貴の影響だか何だかで、砂場でドラマーの格好をし、子どもながらに威勢よく声を張り上げていた姿が不思議に焼きついている(それも、ただそういう記憶でしかないのだが)。だから何なんだと言われれば返す言葉はないが、この69年という年は不思議にクリアな年なのである。そういえば、実家の母屋ではない古びた別棟の小屋の壁には1969年のカレンダーが貼られてあったが、あれは今も残っているのだろうか・・・。

ところで、件のrockin’ on誌では、渋谷陽一氏とピーター・バラカン氏の対談が掲載されており、二人のやりとりが面白い(昔から松村雄策氏との渋松対談が有名だったが、今でもそのページが存在しており、ぶっ飛んだ・・・笑)。渋谷陽一氏に言わせると「Jimmy Pageは対象化能力が高かった」らしい。

バラカン「・・・彼はスタジオ・ミュージシャンをやって何でもこなせる人だったし、何が売れるかもわかっているし、そういう商人根性が最初からあった人だし」
渋谷「商人根性じゃなくて、対象化能力って言うんです。まぁいいや」
バラカン「どういう意味なのそれは」
渋谷「つまり、ちゃんと距離を置いて、客観的にものを見れるという能力」
バラカン「それは商人根性だよ」
渋谷「(笑)。まぁ、ものは見方ですよね。とにかく、イギリスにおいてとんでもないことが起きてたんだね」

確かにものは言いようだが、「対象化能力」という表現はいけてる(笑)。

五反田のとあるベンチャー企業で1時間半ほど打合せをした。組織内での経営理念の浸透が急命題で、それを体験ワークという切口でやってもらいたいという要望を受け、社長からいろいろと実情を伺った。要は、社長のダミーが養成できれば簡単な話なのだが、ことはそう安易ではない。ベンチャーとはいえ、急成長している企業の社長は前述の「対象化能力」に長けているようで、社員がなかなかついていけないのではないか。社長は「ともすると自分ができたのだから誰でもできるだろう」と想定するらしいのだが、そもそもそれが間違い。時間をかけ「マインド」を培うそれなりの労力はやっぱり必要だろう。

成功しているトップの思考は、明らかに「商人根性」とは違う。単に金儲けをしようとしているのではない。とはいえ、お金を儲けるということにネガティブ感情は一切ない。高収益を挙げることを自らにも社員にも課している。あくまで(社会的意義のあるモノを提供できる)自社が儲けることが社会貢献につながる、否、社会貢献度の高い仕事をすれば必然的に儲かるようになっているんだという強い信念に貫かれているのである。僕の感覚では「商人根性」というと「お金ありき」のように感じられて守銭奴のような印象が強いが、「対象化能力」と表現すると、なるほどそれは重要だと思えるのだから言葉は使いようである。「対象化能力」・・・、良い言葉だ。

閑話休題。

あれから40年・・・。rockin’ on誌が推薦する「The 30 Best Discs of 1969」を眺めてみるだけで、あの年の凄さが尋常じゃないことがよくわかる。Led Zeppelinの1枚目、The Whoの「Tommy」、The Beatles「Abbey Road」、The Bandの2枚目、Jeff Beck「Beck-Ola」、さらにさらにKing Crimsonのデビュー・アルバム、そしてThe Rolling Stones「Let It Bleed」などなど、枚挙に暇がない。やっぱり少なくともあと10年早く生まれて、オン・タイムで体験したかった・・・。今晩は久しぶりにロック・オペラ「Tommy」を聴いて盛り上がろう・・・。

The Who:Tommy


2 COMMENTS

雅之

おはようございます。
>やっぱり少なくともあと10年早く生まれて、オン・タイムで体験したかった・・・。
うーん、ちょっと複雑です。もろにオン・タイムで体験した日本の団塊世代に対しては、私はかなり批判的ですので・・・。例えば「The Who」→「モッズ・カルチャー」→「労働者階級」→「学生運動」→「挫折」→「一転して体制側の働き蟻」といった連想を、同時代の当事者として身に沁みて実感しないで済む我々の世代の方が、ある意味ずっと気が楽かも・・・と思ったりもします。
まあ、当時は既成の社会の価値観に対する若い世代の問題意識は今よりずっと強かったですし、体制側は体制側でアポロを月に行かせちゃったり・・・、本当に勢いのある時代でしたよね。なのにその後、何でこんな閉塞感溢れる世の中になっちゃったんでしょう? 誰がそうしちゃったんでしょう? 1970年の大阪万博のころ私は小学校低学年でしたが、こんな21世紀になるとは思ってもみませんでした。当初の私の予定では、そろそろ「ドラえもん」が我が家にも来るころなんですが・・・(爆)。
《お気楽な、今朝の私の連想》
「Tommy」→「Pinball Wizard 」→「1973年のピンボール」→「村上春樹」→そうだ、妻が先日買って読破した「1Q84」を私も早く読み始めなきゃ!!

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岡本 浩和

>雅之様
おはようございます。
>連想を、同時代の当事者として身に沁みて実感しないで済む我々の世代の方が、ある意味ずっと気が楽かも・・・
なるほど、一理ありますね。ただし、皆がそうじゃないと思うのでやっぱり実体験したかったです。特に、渋谷氏をはじめ、もろに「ロック・ミュージック」の世界にどっぷり浸りきって仕事にまでしてしまったような人にはある意味惹かれますね。
>その後、何でこんな閉塞感溢れる世の中になっちゃったんでしょう?誰がそうしちゃったんでしょう?
そうですよね・・・、三島由紀夫が嘆いて書いた通りの世界になってしまっています。政治の世界の深層は闇の中でしょうが、僕も「真実」を知りたいです。
>私の予定では、そろそろ「ドラえもん」が我が家にも来るころなんですが・・・(爆)。
(笑)
ところで、村上春樹「1Q84」の売れ行きがすごいですねぇ。
僕はある時期に追いかけるのをやめてしまったので、しばらく読んでいないですが、これだけ評判になると読んでみなきゃと思います。

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