夕方、所用でどうしても出掛けなければならず、ぶらりと表に出たものの世間は3連休の中日で、炎天下の新宿の歩行者天国を歩くと人、人、人の山。そのことだけで随分気が滅入る。小1時間ほどで帰宅し、冷房で冷えた部屋でモーツァルトを聴きながら涼む。
40歳のシュライアーの張りのある声に、デームスの軽快なピアノ伴奏が映え、このアルバムは何度聴いても聴き飽きない。
モーツァルト:歌曲集
ペーター・シュライアー(テノール)
イェルク・デームス(ピアノ)
エールハルト・フィーツ(マンドリン)
1791年1月14日、貧困の極限にあえぐ中、愛らしい3曲の「子どものための小詩集」(第1曲「春への憧れ」、第2曲「春」、第3曲「子どもの遊び」)が生み出される。すでに言い古されていることだが、いずれも、あと1年足らずで死を迎えるとは思えない、天衣無縫さの中に「人間の持つ感情のすべてが純化した」奇跡の音楽。
おいで、いとしい五月よ、
今年も木々を緑にしておくれ、
そして、小川のほとりには
小さなすみれを咲かせておくれ!
どれほど楽しみにしていたことか、
すみれにまた出会えることを!
(~「春への憧れ」詩:C.A.オーヴァーベック)
モーツァルト:ピアノ・ソナタ第13番変ロ長調K.333
鳥羽泰子(ピアノ)
続いて、鳥羽泰子によるピアノ・ソナタ第13番変ロ長調K.333。第1楽章の軽やかで遊び心に溢れた主題が僕は本当に好きで、この音楽を聴いている最中は世間の喧騒を忘れて子どもの頃の懐かしい思い出に浸れるのだから不思議だ。この曲は1783年~84年、まさにウィーン時代の公私共に絶頂の時期に書かれており、心身ともに充実した天才の姿を見事に捉えている傑作である(それに、多少横道にそれるが、ケッヘル番号が3並び-調和の数字のぞろ目!-だというのもお気に入りである理由の一つ)。また、両端楽章にいかにも対比したかの如くの第2楽章のうら悲しげな表情が薄ら涙を誘う。人生のクライマックスにあろうがどん底に喘ごうがモーツァルトはモーツァルト。あらゆる感情が奔出し、独り無心に聴くモーツァルトは温かい。
ついでに、もうひとつエリック・ハイドシェックによるK.333。少々「翔んだ」モーツァルト。彼のモーツァルトで実演に触れたことがあるのは、確かK.332だけなのでいずれ機会があったらこの曲も聴いてみたいものだ。それにしても、モーツァルトの音楽をこれほどまでに自由に表現しうるのはハイドシェック以外にいないのではないか。まさに天衣無縫の音楽作り・・・。
おはようございます。
暑いですね。今回のモーツァルト、夏向きの選曲が素晴らしいですね!
一番目のシュライヤーの歌ったモーツァルト歌曲は昔からの愛聴盤、鳥羽泰子さんとハイドシェックの盤は未聴です。鳥羽泰子さんは、まったく聴いたことがないので特に気になるのですが、そんなにいいですか?
モーツァルト歌曲の他の録音や、シベリウス、テレマンなど夏向きの私の手持ちのお薦め盤を、と思ったんですが、また暑苦しい行為なので今日は止めます(爆)。
代わりに、昨日ぼーっとBGMで聴いていたSACDを・・・
「イパネマの娘」他 グレース・マーヤ
http://www.amazon.co.jp/%E3%82%A4%E3%83%91%E3%83%8D%E3%83%9E%E3%81%AE%E5%A8%98-%E3%82%B0%E3%83%AC%E3%83%BC%E3%82%B9%E3%83%BB%E3%83%9E%E3%83%BC%E3%83%A4/dp/B001AO15YA/ref=pd_sim_m_4
夏は、クラシック音楽以外の、こういうのもすごくいいですよ!! 録音もまた最高でした。やっぱりSACDはいいです!
>雅之様
やっぱりシュライアーのモーツァルト歌曲は愛聴盤ですか!
そうじゃないかと思ってました(笑)
鳥羽泰子はモーツァルト全ソナタを録音してますが、そのすべてを所有しているわけではないので、100%最高!と言い切るにはまだまだ情報不足です(もちろん実演も聴いていないので)。
とはいえ、昨日採り上げた音盤を聴く限り、そのどれもが昔の巨匠風の解釈で、しかもハイドシェックほど「崩して」いないところが良いですね。それに、何より一切反復をしていないところが煩わしくなく僕は好きです。
>夏向きの私の手持ちのお薦め盤を、と思ったんですが、また暑苦しい行為なので今日は止めます
そんなことおっしゃらずにおススメよろしくお願いします(笑)
>「イパネマの娘」他 グレース・マーヤ
これは聴いたことがないですね。もちろんグレース・マーヤというアーティストも初耳です。面白そうですね。