愛知とし子ファミリー音楽会

chopin_liszt_argerich_abbado.jpg多治見市文化会館小ホールでの「愛知とし子ファミリー音楽会」はお蔭様で盛況のうちに終了した。「親子でお出かけ、初めてのクラシックコンサート」という副題どおり、0歳児から70歳超まで老若男女問わず400名近いお客様にご入場いただけたようで、感謝の限りである。終演後のアンケートを見ると、プログラムにも演奏そのものにも大変ご満足いただけたようでよかった。ただし、さすがにあれだけの数の乳幼児が入っていると泣き声や話し声で少々うるさいのは確か。中には「もっと演奏者に気を遣って欲しい」、「うるさくて閉口した」などのご意見もいただいたが、コンサートの趣旨が趣旨。大目に見ていただかざるを得ない。とはいえ、一方で真剣な眼で舞台を見つめ、耳を澄ませて一所懸命聴いていただいた子どももたくさんいたゆえ、ニーズがあることはよくわかった。特に未就学児をお持ちのお母さんなどはコンサートに行きたくてもなかなかそういう機会がないということなので、こういうファミリー向けのクラシックコンサートをもっともっと数多く提供していければ良いなと心底思った次第。

ところで、オンステージについて・・・。最近は随分舞台慣れしてきたようで(偉そうな言い方だけど・・・笑)、愛知の曲間のトークは流暢でかつ機転が利き、わかりやすくてとても良い(何事も場数をこなすことは大事である)。そして、肝心の演奏内容。第1部、1曲目のドビュッシー「月の光」から余裕のある演奏。続いてのモーツァルト「きらきら星」変奏曲、ショパンの「幻想即興曲」いずれも弾き慣れた楽曲だけあり、ほとんど乱れを見せず、沈着冷静に進められてゆく。次の「トルコ行進曲」もいつもの速めのテンポで颯爽と歌い切り、前半最後の難曲「ラプソディ・イン・ブルー」に至っては、若干テクニック的に問題を呈したものの、強力な打鍵で快演を披露し、会場の皆さんからは万雷の拍手喝采で迎えていただけたように思う。彼女の場合、ゲネプロなどに比べると本番では必ずと言っていいほど快速テンポになるが、結局その「勢い」が「彼女らしさ」なんだろうな。そのことが素直に心地良いと思える。

さらに、休憩を挟み、メイン・プログラムであるサン=サーンスの組曲「動物の謝肉祭」は愛知とし子が創作した物語を付けての演奏(本邦初公開である)。久須本芳子さんの朗読は、よく通る声質と相まってニュアンス豊かな言葉遣いで、音楽のもつ力と意味が一層漲り、一役どころか二役も三役も買っていただけたように思う。ありがとうございました。

ちなみに、アンコールではちょっとしたサプライズを。瑞浪市立瑞浪小学校の校長である林茂雄先生にご自慢のリコーダーを披露していただいた。愛知とし子のピアノ伴奏に乗せて、客席に座っておられる先生がリコーダーで「夕やけこやけ」を吹き始め、そのまま舞台まで歩きながらアルトとソプラニーノを持ち替えて演奏してくださった。おまけに、舞台上ではアルトとソプラノ二刀流での「かっこうワルツ」まで披露してくださり、会場は大いに沸いた。終演後いただいたアンケートでは、校長先生の演奏に感激したという声も多く寄せられ、ピアニストのお株を奪いかねない人気ぶりで(笑)、とても楽しいひと時だった。何と林先生からはCDのプレゼントまでいただいた。「アルゲリッチはお好きですか?」と問われ、2枚の音盤を差し出された。「どちらかお好きなほうを差し上げます」ということだったので、所有していなかった1枚を遠慮なくいただいた。重ね重ねありがとうございます。

ということで、せっかくなので早速いただいた音盤を。

ショパン:ピアノ協奏曲第1番ホ短調作品11
リスト:ピアノ協奏曲第1番変ホ長調
マルタ・アルゲリッチ(ピアノ)
クラウディオ・アバド指揮ロンドン交響楽団

どういうわけかアルゲリッチデビュー当時のこの音盤は所有していなかった。ショパンは後年録音したデュトワ盤をよく聴いていたし、ツィマーマンの例の弾き振りの音盤が出てからはあの演奏一途になったので、あえて購入する必要性を感じなかったのか・・・。それでも若き日のアルゲリッチとアバドが組んだ演奏は文字通り「颯爽」としたもので、これぞまさに「快演」という名に相応しい録音であることを再確認した。リストの方も然り(僕の好みでは、アルゲリッチの場合どちらかというとリストに分がある。アバドの伴奏についても然り)。


5 COMMENTS

雅之

おはようございます。
土曜日はありがとうございました、お疲れさまでした。
また、お父様にも美味なお土産を頂戴し、感謝感激いたしております。
ありがとうございました。
ファミリー向けとはいえ、愛知とし子さんの演奏を、久しぶりに堪能することができ、うれしかったです。家族も、とても素晴らしい演奏だったと申しておりました。朗読付きピアノ編曲の「動物の謝肉祭」も、とても楽しめました。また、アンコールの校長先生のリコーダー、私も感動してしまいました。
ただし、今回の演奏会の趣旨に賛同し、よく理解して聴きに行ったのですが、会場の子供の泣き声や会話には、さすがに閉口してしまいました。妻や娘も少しそうでしたが、周囲の席の小学校高学年~中学生くらいの女の子とその母親など、真剣に音楽を聴きたい人たちは、音楽に集中できず、露骨に不快感を示していました。また、演奏中に会場を走り回る子供が何人かいたのも、問題だと思いました。最低限、演奏者に対する敬意を示すよう教育するのも、親の義務なのではないかと思いました。
本当は、乳幼児向け、小学校低学年、高学年、中学生と、対象年齢を分け、それぞれの年齢層に向け、別々に企画、実施するのが理想なんでしょうね。今回はそんな課題も、少しだけ感じました。
結果、愛知とし子さんの大人向けのリサイタルにも、ますます行きたくなりました(笑)。

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岡本 浩和

>雅之様
おはようございます。
先日はありがとうございました。またご指摘をありがとうございます。本当におっしゃるとおりで、最前席におりました僕でも後方の「うるささ」が気になっていたくらいですから、真剣に音楽に対峙しようと期待していらしたお客様には大変申し訳なかったと反省しております。やはりある程度の年齢分けは必要ですね。
実は、「音浴じかん」の経験上、お母さんに子どもが愚図ったときの対応について、あれこれ指示し過ぎない方が意外にゆったりと聴いていただけて逆に良かったりしまして・・・。
400名規模のホールになりますと、こちら側が、具体的に明確に事前に注意を喚起するようなお願いをしないとだめですね。
それと、少々愚痴にもなってしまいますが、子どもが騒いだときに注意をしない若いお母さんがとても多いことにびっくりしました。アンケートでも「演奏者にもっと配慮してほしい」旨のことを書かれている70代の女性がいらっしゃいました。本当に最低限、演奏者に対する敬意を示すよう親は子どもに教育しないといけませんね。
>当は、乳幼児向け、小学校低学年、高学年、中学生と、対象年齢を分け、それぞれの年齢層に向け、別々に企画、実施するのが理想なんでしょうね。
まさにその通りです。僕も勉強になりました。次回以降の開催の折の参考にいたします。
>結果、愛知とし子さんの大人向けのリサイタルにも、ますます行きたくなりました(笑)。
ぜひともよろしくお願いいたします。

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るみ

こんにちは。
私の友人家族も、多治見のコンサートに参加しました。すっごくよかったと大絶賛でしたよ!!
求められていますね。
田舎では特に求めている人が多いけど、なかなか機会がなくて本物を体験する場が少ないので、定期的に開催されるのは本当にすばらしいと思います。
求められてる場所で自分のできることを表現して、みんなを笑顔にできることって本当に素敵だよね。
同じ地元出身でがんばる愛知さんを心から応援します!!

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岡本 浩和

>るみ
こんばんは。
>すっごくよかったと大絶賛でしたよ!!
それはよかった。宣伝していただいてありがとう。
これからもよろしくね!

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まーの

るみちゃん!ありがとう♪
お互いの表現方法で、みんなを幸せにしちゃいましょう~!
るみちゃんの一歩一歩確実に広げていく姿勢も
本当に素晴らしいと思っています!
私もるみちゃんを応援しています!

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