1990年、バーンスタインが第1回パシフィック・ミュージック・フェスティバルで来日した際の映像が残されている。まさかこれが最後になるとは思わず、数公演分のチケットをがっちり押さえたにもかかわらず、運悪く最初の2公演のチケットを友人に譲ったばっかりに、バーンスタインの見納めができなかったことを随分後悔した記憶が蘇る。直後にリリースされた前述の映像を観るにつけますますその想いが募ったものである。
上記DVD(かつてはLDだった)はシューマンの第2交響曲をメインに、リハーサル風景や本公演を余すことなく伝えてくれる傑作ドキュメントだと僕は思うのだが、その中で、バーンスタインが残した次の言葉がシンプルに教育者バーンスタインのもっとも人間らしい一面を表していて、僕の心を揺さぶり続ける。
“I love two things, music and people.”
音楽好きに悪人はいないという。ましてや人間好きだともいうならなおさらだ。先日の多治見での愛知とし子コンサートの際、瑞浪小学校長の林先生にアンコールでご自慢のリコーダーを披露していただいたことは昨日も書いた。先生の演奏姿や、それに対して応える聴衆の様子を見ていて、ついついそのバーンスタインの言葉を思い出し、彼が若者を中心に構成されたオーケストラに対して十分なスキンシップをとりながら教えていたその感動的な光景も何やら重なり、世の中にこういう先生が増えればもっともっと「良くなるだろうに」と考えさせられた(それに、上品で気さくな雰囲気の中に「熱いもの」を持っておられるその生き方のようなものに少々感動すら覚えた)。
同じように人と舞踊、そして音楽が好きであっただろう振付家にモーリス・ベジャールがいる。僕が残念でならないのは、80年代初頭の二十世紀バレエ団の来日公演に触れ得なかったこと。当時バレエに全く興味なく、ジョルジュ・ドンはおろかベジャールのことすらまったく認知していなかった僕には、当然その舞台のこともアンテナに引っかからなかった。おそらくNHKで放映されたであろう「芸術劇場」での実況録画すら観れなかったことに今更ながら地団太を踏む(せめて録画ビデオでいいからどなたか所有されている方がいるなら一度この全盛期の二十世紀バレエ団の動く姿を観てみたい!!)。後にLDで、キーロフ・バレエ団とのコラボレート公演の抜粋版で「エロス・タナトス」のいくつかを観たときに心底そう思ったのである。90年代に入り、ドンが亡くなり、モダン・バレエには急速に興味を失することになるが、ちょうどバブルのあの頃、何度も来日し、バレエの素晴らしさを教えてくれたベジャールとドンには感謝してもし切れない。ともかくあの当時のベジャール・バレエ団は本当に最高だったと思う。
ニュイ・ブランシュ・ド・ラ・ダンス
キーロフ劇場バレエ、ベジャールと二十世紀バレエ団(レーザーディスク)
当初から不思議にも僕の心を捕らえて離さないダンス。それは、マイアベーアの音楽による男性群舞をバックにして若きファルク・ルジマトフがソロを踊る「1830年」からの抜粋。バレエ音楽を音楽のみで単独で聴き続けるのはなかなか手強いが、これについてはダンスもさることながらその音楽に打ちのめされた(それほど感動的な音楽では決してないと思うのだが、今だにこのマイアベーアの音楽は僕の好物である)。
マイアベーア:バレエ組曲「スケートをする人々」(ランバート編曲)
リチャード・ボニング指揮ナショナル・フィルハーモニー管弦楽団
歌劇「預言者」からコンスタント・ランバートがバレエ用に編曲したこの組曲は知る人ぞ知る粋な音楽。マイアベーアについては、かのワーグナーが敵対視するほど当時一世を風靡していたオペラ作曲家という程度の知識しか持たないが、1曲目から無性に魂を鼓舞する不思議なエネルギーをもつ。「スケートをする人々」というタイトルの由縁は定かでないが、音楽を聴く限りにおいてあまり意味を為さないように思う。むしろあのベジャールのダンスが強烈過ぎて、僕の場合マイアベーアというと即座に「1830年」を連想してしまうほど。
おはようございます。
多治見での愛知とし子さんのコンサート、確かにアンコールでの校長先生のリコーダー演奏は感動的でした。涙が出そうになったほどです。
しかし、楽しく幻想的な絵と朗読付きのピアノ編曲、「動物の謝肉祭」がやはり最高に楽しかったですね。
実演に接し、この曲にも、いろんな可能性があるなあとも思いました。
例えば、バレエとのコラボも面白いかもしれません。ミハイル・フォーキンがアンナ・パヴロワのために振り付けた「瀕死の白鳥」はあまりにも有名ですが、
http://www.worldfolksong.com/songbook/ballet/dying_swan.htm
「動物の謝肉祭」全曲自体が「マ・メール・ロワ」のように、バレエの演目になりそうですよね。愛知とし子さんとバレエ団のコラボ企画も、実現したら面白いかもです。
考えてみればクラシックの曲は、何でも振りつけて踊りの曲に出来そうですね。「浅田舞&真央 スケーティング・ミュージック」の曲目を眺めていても、そう思います(このCD、さすがに私は所有していませんが・・・笑)。
http://www.hmv.co.jp/product/detail/2625065
ちなみに浅田真央の2009-10のシーズンは、ハチャトゥリアンの「仮面舞踏会」やラフマニノフの前奏曲「鐘」がプログラムですね。ラフマニノフの曲も、フィギアスケートでは、本当によく使用されますね。
前にもお話したことがありますが、私の従兄はバレエ団のダンサーをやっていたりもするのですが、私はバレエには全く詳しくありません。
キーロフ劇場バレエ「ニュイ・ブランシュ・ド・ラ・ダンス」の映像も、何かで見た記憶はありますが、よく憶えていません。ベジャールが天才だったという知識はあるのですが、残念ながら語れるまでには至りません。
>雅之様
おはようございます。
「動物の謝肉祭」よかったですよね。企画としてもとても面白いものになったと思います。おっしゃるとおり、バレエの演目になる可能性も秘めている組曲だと僕も思います。
>愛知とし子さんとバレエ団のコラボ企画も、実現したら面白いかもです。
確かに!
>「浅田舞&真央 スケーティング・ミュージック」の曲目を眺めていても
さすがに僕もこれは持ってないですが、おっしゃるとおりクラシック音楽の可能性って広いですよね。
そうでした!雅之さんの従兄氏はバレエ・ダンサーでした!80年代の数々の公演はNHKに残っているはずですから何とか権利関係をクリアしてリリースしてもらいたいものです。
雅之さん
バレエも楽しそうですね!
すっかり忘れていましたが、3年ほど前に「マ・メール・ロア」にも
自分なりの創作物語を書いて演奏をしたことがありますよ。
このときは、男性1人、女性2人バージョンでした。
これも楽しかったです!
物語を考えるのって、とっても楽しいんですね。
文才はないですが、妄想族なので色々と浮かんできます。(笑)
しばらくは、動物の謝肉祭を広めてみようと思います!
まーの様
>3年ほど前に「マ・メール・ロア」にも
自分なりの創作物語を書いて演奏をしたことがありますよ。
うわー! それは実演に行きたかったです!
再演は、もう絶対に無いのでしょうか?
今だったら、やさかのっきぃさんの絵付きで、久須本芳子さんにも朗読に加わっていただいて(校長先生にも・・・笑)、「動物の謝肉祭」といっしょに、演目に入れられるではないですか!
より磨きをかけて、ぜひ!ぜひ!!
そうですねぇ。
ただし、これは連弾なので、素敵なパートナーが
見つかったらやりたいです♪
>雅之様
こんばんは。
確かに「マ・メール・ロワ」連弾と「動物の謝肉祭」の組み合わせで、しかも物語付のコンサートはいけますねぇ。
誰か良いパートナー見つからないかなぁ・・・。
あ!マ・メール・ロアと組み合わせるなら
動物の謝肉祭も2人でやれば、迫力満点だなぁ。
いいかも!!