ハチャトゥリアンの「ガイーヌ」!

khachaturian_vpo_gayaneh.jpg明日は「早わかりクラシック音楽講座」である。何と30回目になる。始めた当初、これほどまでに続くものだとは夢にも思っていなかった。何となく乞われるがままに半分洒落でスタートしたが、始めると意外に面白く、自分自身の勉強にも大いになり、それより何よりご参加いただいた皆様に喜んでいただけ、半ばライフワークになった感がある。望外の幸せである。

交響詩『ツァラトゥストラはかく語りき』を採り上げるにあたり、シュトラウスがインスパイアされたニーチェの原作を読んでみようとしたが歯が立たず(笑)。というより、難しい哲学の話など持ち出したところで、誰にも理解してもらえないだろうし、せっかくの休日の午後のひとときを「眉間に皺を寄せながらわけのわからない講義」を聞かせられるお客様の立場になったとき、まったくのひとり善がりになりそうなのでやめた。
では、「ツァラトゥストラ」といえばキューブリック監督の『2001年宇宙の旅』について多少は言及した方がいいかなと思ったが、この映画も多分に哲学的スピリチュアル的で、ほんの数分の講義で片づけられる代物でもないのでやっぱりよすことにする。というより、その場の雰囲気をみてどうするか決めるとするか・・・。

実際、この映画には元々書き下ろしのサウンド・トラックが存在し、それを監督が全く気に入らず、既存のクラシック音楽を流用して今の形になったということだから、『ツァラトゥストラ』が有名になったのはこの映画のお蔭なのだが、ひょっとするとこういう形で世に出回らなかっただろう可能性もあったわけで、偶然というのは本当に面白いものである(今や『ツァラトストゥラはかく語りき』といえば誰しもスタンリー・キューブリックのこの作品を思い出すほど、音楽と映画が一体になってしまっている感がある)。

ところで、映画『2001年宇宙の旅』にはジェルジー・リゲティをはじめ、当時まだまだ現代音楽であったいくつかの斬新で美しいクラシック音楽が使用されている。そのひとつ、ハチャトゥリアンの「ガイーヌ」組曲からロシア的ロマンを漂わせる子守歌のように美しい『ガイーヌのアダージョ』。

ハチャトゥリアン:バレエ組曲「ガイーヌ」
アラム・ハチャトゥリアン指揮ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

090925_tani.JPG映画のサントラではロジェストヴェンスキー指揮レニングラード・フィルの演奏が使われているようだが、今日は作曲者の棒によるいわゆる自作自演の名盤を。シュトラウスといい、ハチャトゥリアンといい、あるいはブリテンといい、自作にその後の指針となる名盤を残す20世紀の音楽家が極めて多いことにふと気づく。それになぜかウィーン・フィルとの相性が良いようだ。本家本元にこういう名演奏を創られてしまうと後の指揮者は大変だろうに・・・。

三軒茶屋で転職が決まり大阪に赴任するK.T.君の壮行会。久しぶりに顔を合わす面々とのひととき。僕は髪を切って一層若返ったらしい(笑)。


2 COMMENTS

雅之

おはようございます。
交響詩『ツァラトゥストラはかく語りき』くらい、冒頭の導入部の「つかみ」の分かりやすさ、通俗性と、その後の部分の難解さに落差のある曲もありませんよねえ(笑)。
私がクラシックファンになる前、冒頭の「つかみ」だけに惹かれていた曲には、他に、ベートーヴェン「交響曲第5番(運命)」、チャイコフスキー「ピアノ協奏曲」などもありますが、こういう曲には、作曲家の本当に伝えたい部分が兎角聴かれないという共通性があると思います。逆のパターンもありますね。ベートーヴェンの「第九」は、第4楽章のあの有名なテーマに行くまでが、初心者には長い!長い!(笑)。
「早わかりクラシック音楽講座」30回目、おめでとうございます。
クラシック音楽の醍醐味は、日頃忙しさに追われている人たちが、ゆったりとした時間の流れの中で芸術を鑑賞することにあると思います。曲の「つかみ」外の「おいしくない」部分は、3Dアートのように、じっくり時間をかけ凝視してはじめてその素晴らしさが見えてくるものです。これからもそうした真の醍醐味を、作曲家の人生に絡めて広めていただきますよう、強く願っております。
そうそう、ハチャトゥリアンの「ガイーヌ」の自作自演の録音は、名演でしたね!私も、何十年かぶりに聴いてみたくなりました。

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岡本 浩和

>雅之様
おはようございます。
>交響詩『ツァラトゥストラはかく語りき』くらい、冒頭の導入部の「つかみ」の分かりやすさ、通俗性と、その後の部分の難解さに落差のある曲もありませんよねえ
確かに!
>冒頭の「つかみ」だけに惹かれていた曲
いろいろありますねぇ、そういう曲は。雅之さんが上げられた曲はその際たるものだと思います。
>作曲家の本当に伝えたい部分が兎角聴かれないという共通性
同感です。
>これからもそうした真の醍醐味を、作曲家の人生に絡めて広めていただきますよう、強く願っております。
とにかく楽しくをモットーに続けていければと思っています。

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