歌舞音曲禁止

beethoven_9_bernstein_1989.jpg20年前、昭和天皇崩御に際し、街中からあらゆるBGMが消え、テレビはどこのチャンネルを回しても何日間かは皇室関連のニュースばかりで、レンタルビデオ店ばかりが大いに賑わっていた。つい昨日のことのように思うのだが、今上天皇が即位されて20周年なのだから、やはり時間の経過は恐ろしく早い。

当時、僕はNHK関連のイベント会社に勤務していた。前年の秋以降陛下の体調が思わしくないことが取り沙汰され、クライアントとのミーティングでXデーの対処法について様々議論したことを思い出す。ともかく誰も経験がないのである。果たしてどうなることやらとクライアントともども気を揉み、その「時」をただ待った。

崩御の当日だったと思う。深夜にテレビを何気につけると、今は亡き山本直純先生が確かモーツァルトの第40番シンフォニーを指揮している姿が映った。オーケストラはどこだったか記憶にないが、その音楽はいつもの直純先生らしくない、厳粛で哀しみに満ちた勢いのある名演奏だった。直純先生とはその頃仕事の関係で何度かお会いさせていただいたことがあったし、コンサート後の打ち上げの場にご一緒させていただいたこともあるが、その演奏、あるいは日常の行いについて残念ながら感心したことがなかった。もちろん人となりは気さくで親しみやすい方だったのだろうが、(20代前半の若造が言うのも気が引けるが)何せお酒が入った場ではいただけない。そんなシーンばかりを見ていたものだから、おそらく昭和天皇への哀悼の意を込めて先生が真面目に演奏されている光景を観て意外だったのだろう、「直純先生、やる時はやるじゃない!」と正直吃驚したのである。

本日、妻から歌舞音曲禁止の命令が発令された(笑)。明日からのコンサートに向けて耳を休めたいのだと。僕などには到底わからないが、「絶対音感」の持ち主にとっては人工的な音の全てが気になって疲れてしまうのだとか。電気的に処理された音(CDでもテレビでも)は長時間聴いていると疲れるのは確か。音楽を聴かないという日は滅多にないが、そういう理由なら仕方なかろう、本日は音のない生活をすることにした。いや、厳密には妻の弾くピアノの音があるから、贅沢にも(笑)その生音をBGMに一日を過ごすということだ。

ところで、先日ある知人と話をしていて「赤ちゃんとお母さんのための『音浴じかん』」の話から、「音感」についての話に及び、極めて個人的な話なので恐縮ですがという言葉と共に、実は自分は恥ずかしいほどの音痴なんだということを聞かされた。実は彼の両親は聾唖者なのだという。子どもの頃からテレビはついているものの常に消音されている環境(両親は音の大小がわからないものだから、他人の迷惑にならないよう画面だけを見て楽しんでいたとのこと)にいたものだから、「音」をきちんと聴いていないのだとか。幼少期から音楽に触れていると音感が発達するが、その逆もあるということだ。

閑話休題。ということで、今日は頭の中で音楽を鳴らすことにする。まるで聴力を失ったベートーヴェンのように、である(笑)。

バーンスタイン・イン・ベルリン
ベートーヴェン:交響曲第9番ニ短調作品125「合唱付」
ジューン・アンダーソン(ソプラノ)
サラ・ウォーカー(メゾソプラノ)
クラウス・ケーニヒ(テノール)
ヤン=ヘンドリク・ロータリング(バス)
バイエルン放送合唱団、ベルリン放送合唱団員、ドレスデン・フィルハーモニー児童合唱団
レナード・バーンスタイン指揮
バイエルン放送交響楽団、ドレスデン・シュターツカペレ、レニングラード・キーロフ劇場管弦楽団、ロンドン交響楽団、ニューヨーク・フィルハーモニー管弦楽団、パリ管弦楽団-各オーケストラメンバー(1989.12.25Live、ベルリン・シャウシュピールハウス)

ベルリンの壁崩壊からこちらもまた20年。まさに第9の終楽章の歌詞のとおり、全世界がひとつになってのお祭であった。歌詞中のFreude(喜び)がシラーの当初の思惑であったFreiheit(自由)に差し替えられているところがこの演奏のミソ。初めて聴いた時、観たときの感動たるや・・・。ただし、2年前「早わかりクラシック音楽講座」で第9を採り上げた時、その時は例のフルトヴェングラーのバイロイト盤をメインに進めていったのだが、比較のためこの音盤を聴いたとき実はもうひとつ感心しなかった。やっぱり、あの時代に、あの雰囲気の中で聴いたからこそ価値があったのだろうか・・・。
「その時」を思い起こし、今日は繰り返し頭の中でこの音楽を鳴らそう。


2 COMMENTS

雅之

しーっ! 静かに! こんばんは。今夜は明日からの愛知とし子さんのコンサート準備のお邪魔をしてはいけないので、そっと伺いました。
音楽についての、私のいつもの余計なコメントも自粛します。
本日の私のお薦め盤も、音のない空CD-Rを・・・。
http://www.amazon.co.jp/TDK-CD-R%E3%83%87%E3%83%BC%E3%82%BF%E7%94%A8700MB-48%E5%80%8D%E9%80%9F%E3%82%AB%E3%83%A9%E3%83%BC%E3%83%9F%E3%83%83%E3%82%AF%E3%82%B9-5mm%E5%8E%9A%E3%82%B1%E3%83%BC%E3%82%B9%E5%85%A5%E3%82%8A20%E6%9E%9A%E3%83%91%E3%83%83%E3%82%AF-CD-R80TX20CCS/dp/B000AM5ZQC/ref=sr_1_24?ie=UTF8&s=electronics&qid=1258029704&sr=8-24
これから無限の可能性があり、自分で空想しても楽しめる、超未来志向の究極音盤です。
コンサートの大成功、遠方から心よりお祈り申し上げます。

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岡本 浩和

>雅之様
こんばんは。
ありがとうございます。しかし、無限の可能性をもつ空のCD-Rをおススメいただけるとは!
さすが雅之さん、粋ですねぇ。
明日から3日間楽しみです。

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