菜食料理にウィンナ・ワルツ

wiener_philharmoniker_spielen_j_strauss.JPGいつの頃からか日本でも正月といえばウィーン・フィルのニューイヤー・コンサートが定番になった。少なくともクラシック音楽愛好家だけでなく一般に知られるようになったのはCD時代になり、毎年超スピードで実況録音が音盤でリリースされるようになってからだろう。今年の指揮台には一昨年に引き続き、老巨匠ジョルジュ・プレートルが立った。ウィンナ・ワルツを好んで聴く習慣がない僕は元旦にテレビの前に陣取ってこの衛星放送に釘付けになることはない。よって2010年の演奏会についても観ていない。しかしながら、早々とCDショップで流れるプレートルのウィーン音楽を聴きながら、たまには「ニューイヤー」を真面目に聴いてみるのもいいかもしれないと思った。

僕が初めてニューイヤー・コンサートを観たのは1980年にロリン・マゼールが初めて棒を振ったときである。この時マゼールは数ヶ国語でテレビ・カメラに向かって「あけましておめでとう!」という言葉を投げかけたと記憶する。楽友協会大ホールの様子がオンタイムで観られる、そのことに感動したことが昨日のようだ。以後数年間は毎年マゼールが指揮を担った。87年のカラヤンの登場以降毎年指揮者が特別に選ばれるようになるのだが、やっぱりカルロス・クライバーのたった2回の指揮姿が僕にとっては鮮烈な印象だった(キャスリーン・バトルと協演したカラヤン盤とクライバーの2種の録音は宝物である)。

とはいえ、「ニューイヤー・コンサート」は僕にとっては他人事である。ウィーンに数年在住していた妻は何度か観ているそうだが、こういうものはその場に居合わせて、まさにその時の「雰囲気」と一緒に味わうものなんだろう、とても良かったという。そりゃそうだ。正月にムジークフェラインザールのお客としてお招きされるならそれは望外の幸せというもの。そんなチャンスはおそらく一生巡ってこないだろうが、そうでもない限り正月のウィーン・フィルのコンサートは観ることはないんだろうな・・・。

創立150年を記念して1992年にリリースされたウィーン・フィルのボックス・セット。その中に20世紀の巨匠たちによるヨハン&ヨーゼフ・シュトラウスの音楽を集成した2枚組がある。1枚目がモノラル録音、そして2枚目がステレオとデジタル録音を集めたものだ。

ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
ヨハン&ヨーゼフ・シュトラウス(1929-1990)

CD1
ヨハン・シュトラウスⅡ世
・仲良しのワルツ作品367(喜歌劇『こうもり』より) エーリヒ・クライバー(1929.2.3)
・アンネン・ポルカ作品117 クレメンス・クラウス(1929.7.2)
・ワルツ「美しき青きドナウ」作品314 ジョージ・セル(1934.6.23)
・皇帝円舞曲作品437 ブルーノ・ワルター(1937.10.18)
・ポルカ「浮気心」作品319 ハンス・クナッパーツブッシュ(1940.1.31)
・常動曲作品257 カール・ベーム(1943.10.28)
・ポルカ「観光列車」作品281 クレメンス・クラウス(1944.12.30)
ヨーゼフ・シュトラウス
・ワルツ「天体の音楽」作品235 ヘルベルト・フォン・カラヤン(1949.10.18)
ヨハン・シュトラウスⅡ世
・皇帝円舞曲作品437 ヴィルヘルム・フルトヴェングラー(1950.1.24)
・ワルツ「春の声」作品410 クレメンス・クラウス(1950.6.22)
ヨハンⅡ世&ヨーゼフ・シュトラウス
・ピチカート・ポルカ クレメンス・クラウス(1952.5.9)
ヨーゼフ・シュトラウス
・ワルツ「オーストリアの村つばめ」作品164 クレメンス・クラウス(1952.5.18)
ヨハン・シュトラウスⅠ世
・ラデツキー行進曲作品228 クレメンス・クラウス(1953.12)

CD2
ヨハン・シュトラウスⅡ世
・喜歌劇「くるまば草」序曲 ウィリー・ボスコフスキー(1956.12)
・加速度円舞曲 ヨーゼフ・クリップス(1957.9.14)
・ワルツ「ウィーンの森の物語」作品325 ハンス・クナッパーツブッシュ(1957.10)
・ポルカ「狩り」作品373(喜歌劇『ウィーンのカリオストロ』より) ヘルベルト・フォン・カラヤン(1959.9)
・ワルツ「南国のばら」作品388(喜歌劇『女王陛下のハンカチーフ』より) カール・ベーム(1972.9.4)
・ワルツ「酒・女・歌」 ウィリー・ボスコフスキー(1978.12.30)
・喜歌劇「こうもり」序曲 ロリン・マゼール(1980.1.1)
・仮面舞踏会のカドリーユ作品272(ヴェルディの歌劇の主題による) クラウディオ・アバド(1988.1.1)
・トリッチ・トラッチ・ポルカ作品214 ズービン・メータ(1990.1.1)
・皇帝円舞曲作品437 ヘルベルト・フォン・カラヤン(1987.1.1)

100116_vege.jpgここには、僕が初めてニューイヤー・コンサートに触れたときの記録(もちろんテレビでだが)、カラヤンがムジークフェラインに登場した最初で最後の機会の演奏などが含まれているが、ウィンナ・ワルツを振らせると右に出るものはいないといわせるクレメンス・クラウスがやっぱり出色かな。さすがに件のコンサートの創設者ゆえの堂に入った、それでいて華麗でウィーン特有の土着性を感じさせるウィーン人以外では決して表現できないだろうニュアンスが見事に音化されている。珍しいセルの「ドナウ」も入っているし、何といっても「皇帝円舞曲」を3人の名人の演奏で聴けるところが素敵である。

久しぶりにウィンナ・ワルツに酔い痴れる・・・。

ところで、本日は「かんたんベジキッチン」の日。昨年9月以来だから4ヶ月ぶりである。初参加の方も多く、新しく切り替わったようでとても楽しいひと時だった。メニューは初めての和食三昧。美味しかった!!

本日のメニュー
・ベジミートのごぼう入りつくね
・ふろふき大根のベジそぼろあんかけ
・ベジハムと切干大根のピリ辛マヨネーズ和え


2 COMMENTS

雅之

こんばんは。
20世紀の巨匠たちによるヨハン&ヨーゼフ・シュトラウスの2枚組、魅力的ですね! 私は持っていませんが、楽しそうです。
ウィンナ・ワルツといえば、あらえびす(野村胡堂)著、名曲決定盤(昭和14年5月刊)のエーリッヒ・クライバーの項に次のような文章があり、昔、図書館で初めて読んだ時から何故か強く印象に残っていました(現在出ている中公文庫版だと下巻200~201ページ)。
・・・・・・今から十七、八年前、ドイツのフォックスにクライバーが『ブルー・ダニューブ・ワルツ』を二枚四面にのんびりと吹込んだことがあり、それを震災直後のバラックの十字屋で聴いて、非常に驚嘆したことがある。来たのは三組だけだったが、一組は近衛子(し)が買い、残る一組は、さる高貴の方がお買上げになったと聞いている。
その後数年、近衛子が日本パロフォンに『ブルー・ダニューブ・ワルツ』を吹込むことになり、私もその吹込みを聴きに行ったが、吹込みが済んだ時近衛子は、「どうです、クライバーに似てるでしょう?」と私に言われたことがある。なるほどその『ブルー・ダニューブ』は極めてクライバー張りのものであった。その後渡欧した近衛子は、シュトラウスの指揮に関してクライバーの忠告を受けに行ったという噂を私は聴いている。
クライバーは欧州で一流の指揮者であることは論を俟たないが、非常に特色のある人で、通俗音楽の中から気高い良さを抽(ひ)き出すことと、難しいものを一般人の趣味に引き下げて聴かせてくれるという二つの違った方面に対して、不思議な才能を恵まれている。この人の指揮するベートーヴェンの交響曲は、非常に情緒的な甘美なものだが、そのヨハン・シュトラウスのワルツは、この上もなく芸術的な香気の高いものだ。・・・・・・
この文章に出てくる、ふたつの『ブルー・ダニューブ・ワルツ』、長年聴きたいと念願しておりましたが、昨年ついに次のCDで聴くことができました。
「幻の新年演奏会」 近衛秀麿、新交響楽団
http://www.towerrecords.co.jp/sitemap/CSfCardMain.jsp?GOODS_NO=1869093&GOODS_SORT_CD=102
まさにあらえびすが話題にしたエーリッヒ・クライバー1923年(大正12年・・・関東大震災の年)録音の「美しく青きドナウ」、近衛秀麿1930年録音の同曲です。他に近衛再録音(1935年)の同曲、斉藤秀雄のチェロ・独奏のあるウェーバー/ベルリオーズ編「 舞踏への勧誘」(1929年録音)など、貴重な音源ばかりです。古い録音ですが、どれも十分に鑑賞に耐えるものです。エーリッヒ・クライバーも近衛秀麿も弦のポルタメント奏法による表情が超濃厚ですが、サマになっているのは断然クライバーの方です。とにかく、いろいろな当時の演奏スタイルの発見があり、興味の尽きないCDです。
関東大震災直後のバラックの十字屋で聴く『美しく青きドナウ』・・・、ウィーン・フィルのニューイヤー・コンサートは毎年その一年の世界平和を願って開催されるのに、今年は新年早々ハイチでの大震災・・・何ということでしょう、また悲劇は繰り返されました。明日は阪神淡路大震災から15年でもありますし、震災犠牲者に哀悼の意を表し、ハイチに一日も早く平和な日々が戻ることをお祈りしたいです。

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岡本 浩和

>雅之様
こんばんは。
あらえびすの「名曲決定盤」は僕も若い頃に読みました。
時代は違えど、とても印象深い書物だと思います。
ご紹介のCDは未所有ですが、確かにクライバー&近衛の「青きドナウ」は、あらえびす氏の上記の文章を読むと聴きたくなりますね。
>ウィーン・フィルのニューイヤー・コンサートは毎年その一年の世界平和を願って開催されるのに、今年は新年早々ハイチでの大震災・・・
本当に大変な地震ですね。
>明日は阪神淡路大震災から15年でもありますし、震災犠牲者に哀悼の意を表し、ハイチに一日も早く平和な日々が戻ることをお祈りしたいです。
まったく同感です。そういえば明日は阪神大震災から15年目なんですね・・・。昨日のことのようです。

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