僕がまだ高校生だった頃。毎週日曜日にNHK-FMで放送される吉田秀和氏の「名曲のたのしみ」、そして平日の夜に放送されるFMクラシックアワーが楽しみだった。せっせとエアチェックしては気に入った音楽を見つけて、繰り返し聴くという生活。あの頃はレコードをそうそう頻繁に購入できなかったが、初めて聴く音楽に日々感動し、また音盤化されていない海外オーケストラの実況放送などを様々聴けたことが貴重な体験だった(もちろん今でもFMではその種の音源を放送しているだろうが、習慣的にラジオを聴いたりエアチェックしなくなったのでここでは過去形とする)。
当時、たまに早朝に起きては聴く番組があった。皆川達夫氏の「バロック音楽のたのしみ」。ルネサンス、バロック期の音楽を専門とされている皆川先生のわかりやすい解説と聞いたこともない古楽の作曲家の清らかで美しい音楽を存分に勉強させていただいた。しかしながら、いわゆる中世の音楽は判別が極めて難しい。極端な話、一聴いつの時代のどのあたりの音楽なのかはもちろんのこと、誰の作曲なのかを言い当てるのは至難の技。もちろん聴き込み不足ということはある。皆川先生が著されている指南書などを読み漁りながら、いろいろと勉強するもなかなかポイントがつかめない。中世の音楽を系統立てて聴く術を教えていただける方があったらぜひお願いしたいものである。
1982年、すなわち僕が高校3年生だった年、その年の「レコード・アカデミー賞」に選ばれたアナログ・レコード6枚組セット。評論家諸氏がこぞって推すこの音盤、「聴いてみたい!」と興味を持ったものの、当時15,000円という値の張るレコードを買える余裕がなかった。そのまますっかり忘れて20数年が経過した。
そのレコード、そう、ロンドン中世アンサンブルによるデュファイの「世俗音楽全集」が2006年、いよいよタワーレコードが企画するヴィンテージ・コレクションの第3弾で登場した。CD5枚組で何と4,500円!即購入しては長年の渇きを癒すようにすべてをじっくり聴いた。15世紀のシャンソン、流行歌も現在と同じくテーマはほとんどが「恋愛」について。そう考えると、時代も場所も違えども人間の本質とは変わらないものなのだろう。誰でも皆「恋をしたい」のである。
デュファイ:世俗音楽全集(全96曲)
ピーター・デイヴィス&ティモシー・デイヴィス(ディレクター)
ポール・ヒリヤーほか
ロンドン中世アンサンブル
「さようなら わが恋よ さようなら わが歓びよ」
さようなら わが恋よ さようなら わが歓びよ
さようなら 私に恵まれた慰めよ、
さようなら 私のかけがえのない恋人よ!
別れを告げることは こんなにもつらいので、
もう死んでしまうのかと 思えるほどだ。
姫君よ そなたから遠ざかるとき
悲しくて さめざめと涙を流し、
私の目にうつる心のやすらぎもない。
さようなら わが恋よ さようなら わが歓びよ
さようなら 私に恵まれた慰めよ、
さようなら 私のかけがえのない恋人よ!
(川村克己/細川哲士共訳)
嗚呼、切ない・・・。恋をして、そして別れを経験し、歓びと哀しみを同様に体験することで人は成長する。「人間力」向上の鍵のひとつは大いに「恋をすること」かもしれない。
おはようございます。
中世の音楽は、作曲家の人生がよくわからないことも多いため、昔はほとんど関心がなかったのですが、岡本さんのブログにコメントさせていただいて、ピリオド奏法への疑問が膨らんだり、民族音楽を好きになったり、楽器のルーツに興味を抱いたりしているうちに、俄然研究したくなっております。感謝の極みです。
しかし、タワーレコードが企画するヴィンテージ・コレクションにも困りますねぇ、往年の魅力盤の廉価再発売が目白押しで(笑)。デュファイの「世俗音楽全集」は、私も買ってじっくり聴き勉強したいリストには入っています、中々時間がないので決断できないのですが・・・。ちなみにこのタワーレコードの企画シリーズ、昨年散々趣味の勉強でお世話になったCDに、「中世ルネサンスの楽器」(デイヴィッド・マンロウ、ロンドン古楽コンソート)がありました。
でも私の場合、やっぱりまだ「楽しみ」より「勉強」になってしまう側面があります、このジャンルは。
>流行歌も現在と同じくテーマはほとんどが「恋愛」について。そう考えると、時代も場所も違えども人間の本質とは変わらないものなのだろう。誰でも皆「恋をしたい」のである。
ほんとうに同感です。内緒の話ですが、私がお正月からずっと密かに聴い楽しんでいたSACDはこれでした。
「Best -Cynthia-ly」 南沙織
http://www.hmv.co.jp/product/detail/1928483
南沙織は、私が小学生から中学生時代、ずっと好きだった「初恋の人」でした。今どの曲を聴いても、実体験の初恋の思い出もオーバーラップして懐かしさで胸がキュンときます。涙が出そうです。古いアイドル歌謡を最高音質のSACDで聴くのもなかなかオツなものです。
『ひとかけらの純情』
作詞:有馬三恵子
作曲:筒美京平
初リリース 1973年12月5日(EP)
http://www.uta-net.com/user/phplib/Link.php?ID=3801
いつも雨降りなの
二人して 待ち合わす時
顔を見合わせたわ
しみじみと 楽しくて
あの恋のはじめの日を
誰かここへ 連れてきてほしいの
あの燃える目をしていた
熱い人に もう一度逢いたい
いつもレクイエムを
あの部屋で 聞かされたのね
ぎこちない手つきの
お茶にさえ ときめいて
なぜ思いがけない時
さめてゆくの あんなにも愛して
まだ信じられないのよ
貴方からの つらそうなさよなら
何も実らずに いつも終わるのね
若い涙ひとつふたつ 今はいいけど
あの恋のはじめの日を
誰かここへ 連れてきてほしいの
あの胸のうずくような
恋をしてる 人にならわかるわ
恋のはじめの日を
誰かここへ 連れてきてほしいの・・・・・・
ああ、また切なくて泣けてきました(涙)。
>時代も場所も違えども人間の本質とは変わらないものなのだろう
>雅之様
おはようございます。
>中世の音楽は、作曲家の人生がよくわからないことも多いため、昔はほとんど関心がなかった
確かにそうですよね。人や場所をイメージしにくいのでとても「わかりにくい」です。
>タワーレコードが企画するヴィンテージ・コレクションにも困りますねぇ
ひとつひとつが超廉価になってるとはいえ本当に困ります(笑)。ちなみにマンロウの「中世ルネサンスの楽器」は未所有です。面白そうですね。
ところで、南沙織が「初恋の人」だったんですね!!
わかります、その気持ち。すっかり忘れてましたが、僕もシンシアに胸キュンでした。あの時代、僕らの世代は誰もが南沙織に惚れていたように思います。
ああ、懐かしいなぁ。ドキドキしますね。