コリン・デイヴィス指揮ロンドン響のシベリウス交響曲第2番(2006.9Live)ほかを聴いて思ふ

1980年の今日、ジョン・レノンが死んだ。
ジョンが凶弾に斃れた日が、太平洋戦争の口火を切った旧日本軍のいわゆる「真珠湾攻撃」の日と重なることが何とも奇縁。

彼が残したアルバムや楽曲は、いずれもが名作に値する(傑作でなくて名作)ものだが、中でも、ジョンが存命中に唯一発表されたコンピレーション・アルバム”Shaved Fish”は、硬軟両様の構えを持つ永遠のマスターピースである。

“Give Peace A Chance”に始まり、”Happy Xmas (War Is Over)”×”Give Peace A Chance (Reprise)”に終わる体裁が、「平和主義者」としてのジョン・レノンにばかり焦点を当ててしまうきっかけにもなったのだろうが、ジョン・レノンその人は、決して「それだけ」の人でなかったことは、このアルバムに収められた諸曲を聴いてもよく理解できるところ。
(自身の)麻薬中毒にまつわるエピソードを歌った”Cold Turkey”や、幼少時の、いわば家族の機能不全を昇華するべく咆哮した”Mother”など、そのあまりに赤裸々な心情吐露の側面にこそジョン・レノンの実体が垣間見られるのである。

・John Lennon Plastic Ono Band:Shaved Fish (1975)

傑作だ。

War is over, if you want it.

ちなみに、「真珠湾攻撃」のときも、旧日本軍は29機の航空機が出撃したまま帰還することがなかったという。ある青年の遺された母宛の手紙には次のようにある。

母上様に先立つは遺憾なれども、軍人となりしわたしの最大の孝行と信ず。
~2017年12月8日朝日新聞

下手な思想こそ最大の敵だろう。「戦うことなかれ」とジョンは”Imagine”や”Happy Xmas (War Is Over)”で訴えた。そして、”Mother”では、父や母への激しいまでの愛を表明した。

Imagine there’s no countries
It isn’t hard to do
Nothing to kill or die for
And no religion, too
Imagine all the people
Living life in peace… You…

古から人間は熾烈な領土争いを繰り返してきた。それが僕たちの歴史なのである。
本当は国境など存在しないのに・・・。

1865年の今日、ジャン・シベリウスが生まれた。
フィンランドの歴史も、常に隣国の支配に脅かされ、抑圧に堪えながら民族自決を願い続けた歴史であったといっても言い過ぎではないだろう。シベリウスが若い日を生きた時代は、その意味ではナショナリズムの高揚最も激しい時代であった。

民族的な素養の上に成り立つも、常に革新を目指した作曲家の新たな方法の萌芽あるニ長調交響曲(1901)は、何より旋律の美しさと、ベートーヴェン的苦悩から解放へという図式がモノを言う傑作。

シベリウス:
・交響詩「ポホヨラの娘」作品49(2005.9.18&10.9Live)
・交響曲第2番ニ長調作品43(2006.9.27&28Live)
サー・コリン・デイヴィス指揮ロンドン交響楽団

しかし、ここでのコリン・デイヴィスの棒はあくまで謙虚だ。終楽章アレグロ・モデラートに至っても最後の最後まで開放を許さない。
徐に紡がれる第1楽章アレグレットは冒頭のモティーフから想いがこもる。また、内なる闘争を秘めた第2楽章テンポ・アンダンテ、マ・ルバートは、弦がうねり、管が咆えるも、やはり抑制が利いている。そして、第3楽章ヴィヴァーチッシモでは、大いなる希望を含んだ夢見るトリオが素晴らしい。

All we are saying is give peace a chance.

 

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