恋物語

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作曲家の恋にまつわる出来事は、我々のような後世の愛好者の興味を俄然くすぐる。ブラームスとクララ・シューマンのように証拠隠滅している場合などは余計に「イマジネーション」が湧く。果たして関係はあったのかなかったのか。真相は当人たちにしかわからないものの・・・。
11月に開催する「早わかりクラシック音楽講座」の特別コンサートのタイトルを「作曲家の恋物語」にしたのはいいが、さてどんな話をしようか(あるいは作り上げようか)、今から悩みどころ。
ちなみに、ヤナーチェクも晩年にカミーラ・シュテスロヴァーという38歳も年下の既婚女性にぞっこんになり、亡くなるまでの11年間に何と600通もの手紙を送り続けたそうで、その愛情というか執着心のようなものに頭が下がる思い。肉体関係はなかったということだが、これも真相やいかに・・・。「恋物語」、これほど興味をそそるものは他になかろう。

ヤナーチェクの「シンフォニエッタ」、僕にとっての「シンフォニエッタ」はエマーソン・レイク&パーマーのデビュー・アルバムに収録されている”Knife-Edge”である。それくらいこのアルバムは20歳前後の僕にとって衝撃的な音楽の連続だった。もちろん1曲目の”The Barbarian”もバルトークの原曲「アレグロ・バルバロ」に触れる以前にE,L&Pによって教えられた。

E,L&Pについては、今でもその斬新さは伝わるが、少々時代遅れの感が否めない。それでも、40年前にバルトークやヤナーチェクの音楽をベースに、彼ら独自の作品を創出してしまうあたりはすごい。キース・エマーソンやグレッグ・レイクの力量はたいしたもので、極めて偉大だと思う。そういえば吉松隆先生が編曲されたオーケストラ版「タルカス」も見事な出来であることを考えると、クラシック音楽とポピュラー音楽の懸け橋となるような大仕事を40年も前にやってのけたこのバンドにこそいま一度スポットを当ててみるべきなのではないか、そんなことをあらためて考えた。

ところで、サイモン・ラトルがデビュー間もない駆け出しの時期にEMIに録音した音盤たちは、いわゆるスターダムにのし上がる前のこの若き指揮者の颯爽たる息遣いと棒さばき、新鮮な音楽作りに溢れた傑作ばかり。あの頃(まだ僕は高校生だった)、ラトルが今のような大指揮者になるとは考えてもみなかったが(まだまだ僕も見る目がなかった)、中でも「シンフォニエッタ」と「タラス・ブーリバ」が収録された1枚は、ひと際輝きを放つ名演奏であると断じる。このラトル盤にしてようやくその「音楽」がわかった、それくらい輪郭鮮やかな演奏なのだ。

「シンフォニエッタ」が書かれた1925年頃も、作曲者はまさしくカミーラとの「恋の真っ最中」の時で、地に足のついた(という表現が相応しい)音楽の作曲に彼女の存在が一役買っているのだろうことがよく理解できる。名曲だ。


2 COMMENTS

雅之

おはようございます。
>「作曲家の恋物語」
個人的にはヤナーチェクとプッチーニをリクエストしたいです。
ラトルは昔のほうがもっと良かったかもしれませんね(ラトル&フィルハーモニアの来日公演、私は学生時代、シベリウスの2番他を聴いて大いに感動したことがあります)。現在は真の巨匠への過渡期かもしれません。それでも充分素晴らしいですが・・・。
先日、タワーレコードでドヴォルザーク 交響詩集(ラトル&ベルリン・フィル)
http://www.hmv.co.jp/product/detail/1497215
をみつけ入手し聴きました(国内盤)。
「チェコの国民詩人、K.J.エルベン(1811-1870)のバラードにインスパイアされたドヴォルザークの4つの交響詩(op.107-110)は、題材の異常なまでの残酷さ・凄惨さゆえ、『殺人交響詩』としても知られているもので、そこに求められるオーケストラの表現力にはかなりのものがあります。
 なにしろ、4曲中、最も穏やかな『真昼の魔女』ですら、魔女によって子供が殺されてしまうという残忍な内容で、最も残虐な『金の紡ぎ車』に至っては、バラバラ殺人が題材というとんでもない代物。タイトルが美しい『水の精』にも、子どもが真っ二つに引き裂かれて家のドアに叩きつけられるという場面があり、これもタイトルは穏やかそうな『野鳩』も、夫を毒殺した未亡人がやがて気が狂って自殺するという筋書きなのです。
 随所に込められた残虐シーンへの寓意や、死の悲しみと悪の狂気を深く描きこんでいて驚くほど表現力が豊かなこれらの作品群・・・・・・」(HMVレビューより)
私の購入した国内盤には、日本語資料の非常に少ないエルベンの時「花束」の訳やテーマの譜例付きの充実した曲目解説が載ったライナーノーツが資料としても貴重です。
クラシックの作曲家としては珍しい、危ないところのない「常識人」と思われているドヴォルザークも、こういう題材で曲を書いているんですよね。ドヴォルザーク再発見です。こういうところに目が行くラトルの着眼点はさすがだと思ったし、演奏もじつに秀逸でした。
ご紹介の彼のヤナーチェク演奏もいいですね。
「シンフォニエッタ」で私のおススメ対抗盤を。究極の名演とさえ思っています。
テンシュテット&ロンドン・フィル
http://www.hmv.co.jp/product/detail/1904486
ドボ8も最高です。ライヴのテンシュテットはどれを聴いても凄いです。熱いです、そしてしなやかです、完璧です。
これは奇跡です!!

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岡本 浩和

>雅之様
こんばんは。
>個人的にはヤナーチェクとプッチーニをリクエストしたいです。
これは僕自身が勉強しなければ、ですね。
>ラトルは昔のほうがもっと良かったかもしれませんね(ラトル&フィルハーモニアの来日公演、私は学生時代、シベリウスの2番他を聴いて大いに感動したことがあります)。
ああ、羨ましい。今更ながら若き日のラトルは断然素晴らしいと思うのです。何せプレッシャーなく悠々と自分がやりたいようにやっている、そんな印象です。
ドヴォルザークの交響詩集については僕自身あまりよく知りません。よって、雅之さんからのこういう情報は非常に価値あります。ありがとうございます。
>ライヴのテンシュテットはどれを聴いても凄いです。熱いです、そしてしなやかです、完璧です。
テンシュテットの「シンフォニエッタ」聴いてみます。楽しみです!!

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