スポーツ感覚?!

backhaus_salzburg_1966.jpgもともと小心者のせいか「過去のことは気にするな!」とか「自分の思うように好きにやっていい」と言われてもどうしても拘ってしまう自分がいる。どうも「人と争う」ということ自体が嫌いなようで、どんなことでも「無血革命」のように平和的に解決できることを望む性質なのである。しかしながら、よくよく考えてみると「他者」というものを意識するから「争う」とか「競う」という意識が生まれてくるのだし、「争い」が起こるのではないかと勝手に無意識に想定しているからまた「争う」羽目になるのである。「自分の信念や志を貫くのだ」という考えに完全に身を置いてしまえば「争い」もくそもなくなり、全てを忘れてしまえば何ということはない。ともかく「スポーツ感覚」、つまり趣味のような感覚で好きなことを徹底的に追求することかな・・・。

知人の伝で「To-on Salon Concert~第4回:田村響」を聴いた。バッハの「イタリア協奏曲」、ベートーヴェンの「テンペスト」、ショパンのスケルツォ第1番、リストの「ダンテを読んで」(アンコールはリストの何か・・・曲名はわからない)という超弩急のプログラム。昨年のロン=ティボー国際コンクールの覇者というだけあり、田村君のピアノの響きは重厚で打鍵も重量級。楽器の重みに比してホールの音響がもうひとつであったことが惜しまれるが、演奏そのものは流石。終了後の懇親会ともども十分堪能させていただきました。感謝。

バックハウス:ザルツブルク音楽祭ライブ(1966.7.30、Mozarteum Live)
J.S.バッハ:平均律クラヴィーア曲集第2巻~前奏曲とフーガロ短調&ト長調
モーツァルト:ピアノ・ソナタ第5番ト長調K.283、第11番イ長調K.331
ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第23番ヘ短調作品57「熱情」、第32番ハ短調作品111
ヴィルヘルム・バックハウス(ピアノ)

鍵盤の獅子王バックハウス、死の3年前のザルツブルクでのライブ録音。今宵聴いた田村響君は実は現在ザルツブルク在住で、モーツァルテウム音楽院に留学中とのこと。「獅子王」とまではいかないまでも彼の演奏もなかなか迫力があり、久しぶりにザルツブルクのライブを聴きたくなったので、今日はこの音盤を採り上げることにした。
それにしてもバックハウスのモーツァルトとベートーヴェンは何度聴いても絶品だ。もちろん有名なスタジオ録音のソナタ全集(ステレオの方)やモーツァルトのソナタ集(これもステレオの方)は、若い頃溝が擦り切れるほど聴いた思い出のレコードだが、彼の場合、死の数日前のラスト・ライブや他のライブ盤を聴くにつれ、やはり実演の人なのだなと実感する。残念ながら、僕が物心ついたころにはこの世の人ではないゆえ生演奏に接すること自体がそもそも不可能であったわけだが、こうやって残された音盤をじっくりと聴かせてもらえるだけありがたいと思うべきなのだろう。
ピアニスト、というか一流の音楽家、芸術家は皆「自分の思うように好きに」演奏し、生きているんだろう。仕事を仕事と思わずほとんど趣味のような感覚で自分も楽しみ、かつ人まで癒せるような働き方がやっぱり理想だな・・・(笑)。

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