愛の場面

berlioz_romeo_detoit.jpg「Eros Thanatos(すなわち、生と死)」。いつどの映像で初めて観たのかは記憶が定かでない・・・。

僕がモーリス・ベジャールを、そしてジョルジュ・ドンを知ったのは比較的遅い時期、すなわち1988年の頃である。クロード・ルルーシュ監督作「愛と哀しみのボレロ」以降、急速にドンは有名になり、来日公演のたびに(追っかけの)女性たちの間で大変な騒ぎになっていたはずなのだが、88年以前の歴史は僕の中で完全な空白である。88年の「ベジャール・バレエ団(すでに二十世紀バレエ団ではなくなっていた)」としての初来日公演に出掛け、NHKホールで観た演目は「レニングラードの思い出」、「カンタータ第51番」、「パトリス・シェローが、三島とエヴァ・ペロンの出会いを演出する」というものだったか・・・。この時の公演で初めてモダン・バレエに接し、正直よくわからないという印象がどちらかというと強かった。とはいえ、特別にバック・ステージに招待していただき、ベジャールに会い、出演のダンサーを見て、何だか自分が今まで知らなかった世界が拡がるような予感がし、以降、ベジャール関係の書籍を漁り、そして映像を貪るように買って観たことが昨日のことの様に思い出される。

雑誌や本をあれこれ読む中で、1982年10月に二十世紀バレエ団は、「魔笛」と「エロス・タナトス(というそれまでのベジャール作品の総決算的な意味合いを持ったアンソロジーともいうべきもの)」の2演目を引っさげて来日公演を行ったことを知った。ともかく衝撃だった。全盛期の二十世紀バレエ団、そしてドンやショナ・ミルク、パトリス・トゥーロン、ミシェル・ガスカールなどが実際に目の前で踊るのである。時既に遅し、とにかくその舞台に触れたかった。生が難しいなら、せめて同年同月にオンエアされたNHK芸術劇場での放映は観たかった・・・(NHKさん、どうかDVD化してください。それが無理ならせめて再放送を!)。

「春の祭典」はもちろんのこと、「ボレロ」や「アダージェット(踊り手はジル・ロマンだったらしい)」も中で披露される垂涎モノのおそらく永遠に語り草になるであろう名舞台。しかし、そういったベジャール作品の超有名作品を差し置いて、僕が最も気になったのが「ロメオとジュリエット」の愛の場面。ショナ・ミルクとパトリス・トゥーロンが演じたという愛の場面!映像中の抜粋版を観て、もう身も心も溶けてしまうのではないかと思うほど震えた。感動した。

ベルリオーズ:劇的交響曲「ロメオとジュリエット」作品17
フローレンス・クイーヴァー(メゾソプラノ)
アルベルト・キューピド(テノール)
トム・クラウゼ(バス)
シャルル・デュトワ指揮モントリオール交響楽団ほか

エクトール・ベルリオーズが「幻想交響曲」の9年後に手がけた、オラトリオともオペラともいえぬ交響曲という名の大スペクタクル。70年後グスタフ・マーラーが創作した第8交響曲の先駆けともいえる一大音響絵巻ともいうべき傑作。当時の一般大衆に理解できたかどうかは勉強不足で知らないが、シェイクスピアの名作悲劇が見事に音により描かれている。
ところで、デュトワ&モントリオール響のかつての名盤(ベルリオーズやラフマニノフなどなど)の廃盤がやけに目立つ。少なくとも90年代までに彼らが録音した数々の楽曲は良いもの揃いなので、再発して欲しいところ。

⇒旧ブログへ


コメントを残す

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください

アレグロ・コン・ブリオをもっと見る

今すぐ購読し、続きを読んで、すべてのアーカイブにアクセスしましょう。

続きを読む