ケルテス指揮ロンドン響 モーツァルト フリーメーソンのための音楽(1968.5&11録音)を聴いて思ふ


友情、友愛、我々が汝らに教えるべき言葉はこれだけだ。俗人は我々がロッジで話す言葉は謎であると考えている。多くの者にとってそれはたしかに謎である。いついかなる時にも魂の平静を保ち、互いに愛し合い支え合うこと、それは人の心を知る者にとって説明しがたき謎である・・・しかし、極端な話、私はそこにこそ本当の意味でのメーソンの「秘密」があるのではないかと思うのだ。この「秘密」、それは古人がいとも険しき道と呼んだ、あの人生の道を耐え易くする唯一の方法なのである。

(コルシカ島バスチアのロッジのメーソン、ドルリーの言葉、1780年頃)
リュック・ヌフォンテーヌ著/村正和監修「フリーメーソン」(創元社)P5

確かにフリーメーソンには、法力というものがあったのかもしれない。
「秘密」の本来の意味は、神秘なるもの、妙なるものだそうだ。それは、知るだけでは自分のものに決してならないものであり、また、行いをもってしか味わえないものを指す。それこそが知行合一たる「見性体験」なのである。

モーツァルトは、フリーメーソンに入会し、法力を授かったのだろうか。しかし、残念ながら、そこには真の意味での「見性体験」はなかったはずだ。彼が、フリーメーソンのために書いた音楽たちの歓喜に溢れる美しさ。イシュトヴァン・ケルテスの棒が弾ける。

モーツァルト:フリーメーソンのための音楽(1968.5&11録音)
・「おお聖なる絆よ」K.148
・カンタータ「宇宙の霊なる君」K.429
・歌曲「結社員の道」K.468
・カンタータ「フリーメーソンの喜び」K.471
・フリーメーソンのための葬送音楽K.477
・合唱付歌曲「今日こそ浸ろう、親愛なる兄弟よ」K.483
・合唱付歌曲「新しい指導者である君たちよ」K.484
・ドイツ語による小カンタータ「無限なる宇宙の創造者を崇敬する君よ」K.619
・フリーメーソンのための小カンタータ「高らかにぼくらの喜びを」K.623
・合唱曲「固く手を握りしめて」K.623(追加)
ウェルナー・クレン(テノール)
トム・クラウセ(バリトン)
エディンバラ音楽祭合唱団(合唱指揮:アーサー・オールダム)
イシュトヴァン・ケルテス指揮ロンドン交響楽団
ゲオルク・フィッシャー(ピアノとオルガン)

1791年完成の小カンタータ「無限なる宇宙の創造者を崇敬する君よ」K.619。まるでシラーの「歓喜の歌」を髣髴とさせるテノールの歌に感応する。

愛せよ、君を、君の兄弟を!
体の力と美とを以て君を飾れ、
英知の輝きを以て君の気高さとせよ!
永遠の友愛をこめた
兄弟の手をさしのべよ
友愛こそは久しくきみらから
迷いを除き、真実を与えたものなのだ。
(石井宏訳)
~250E-1217ライナーノーツ

そして、1791年11月15日、生前に完成させた最後の作品である(死の20日前!)小カンタータ「高らかにぼくらの喜びを」K.623の、やはり生命力溢れる希望の音楽に、当時健康を害していたモーツァルトの精神の強さを思う。

ケルテスはモーツァルトを高らかに歌う。どこをどう切り取っても音楽が生き生きと弾けるのである。それは、メーソンに感化されたモーツァルトの魂の声の具現化だ。

ところで、1785年11月6日に世を去ったメックレンブルク公爵と同年11月7日に亡くなったエステルハージー伯爵の葬送のために作られ、演奏された(11月17日)「葬送音楽」K.477の感動。ケルテスは渾身の想いを込める。

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