ヴィア・ノヴァ四重奏団 ルーセル 弦楽四重奏曲(1970録音)ほか

ドビュッシーほどの浮遊感はなく、サティのようなアンニュイさもない。
あるいは、ラヴェルのようなジャジーな雰囲気もあるようでない、不思議な音響を醸す中、何だかとても明朗で健やかな印象を受けるのがアルベール・ルーセル。

それはまるで夢の中にあるように思われる。
そして、妖精が踊る、何だかとても楽しそうに。
しかし、それは現実だ。
夢と現実の間を往来する魔法の如し。

わかった、全部あげよう。
だが、音楽は? 音楽を与えられるかどうか私にはわからない。
空で月が歌っている。
「カスタ・ディーヴァ」
私は唄を聴く。私は何ひとつ持っていない。私にはもう何もない。
私は生命さえも与えようと思う。しかし音楽は?
音楽なしで何をしたらいいだろう? イシスが私の腕の上に足を伸ばす。
そして、急に爪をむき出して私の皮膚をひっかき、筋肉の上に血の象形文字を書く。

モーリス・ベジャール/前田允訳「舞踊のもう一つの唄」(新書館)P197

モーリス・ベジャールがイスラムの神秘思想に没頭していた時期に創造した「舞踊のもう一つの唄」という幻想小説がある。とりとめもない、空想的な描写に、僕はルーセルの音楽を思う。否、ルーセルの音楽にベジャールを思ったのか?

ルーセル:
・ヴァイオリン・ソナタ第2番イ長調作品28 L.33(1924)(1959.2.18-20録音)
ピエール・ドゥーカン(ヴァイオリン)
テレーズ・コシェ(ピアノ)
・フルート、ハープと弦楽三重奏のためのセレナード作品30 L.36(1925)(1984.5&7録音)
・フルート、ヴィオラとチェロのための三重奏曲作品40 L.51(1929)(1984.5&7録音)
・弦楽三重奏曲作品58 L.73(1937)(1984.5&7録音)
パトリック・ガロワ(フルート)
フレデリック・カンブルラン(ハープ)
パリ弦楽三重奏団
シャルル・フレイ(ヴァイオリン)
ミシェル・ミシャラカコス(ヴィオラ)
ジャン・グルー(チェロ)
・弦楽四重奏曲ニ長調作品45 L.57(1931-32)(1970録音)
ヴィア・ノヴァ四重奏団
ジャン・ムイエール(ヴァイオリン)
エルヴェ・ル・フロック(ヴァイオリン)
ジェラール・コセ(ヴィオラ)
ルネ・ベネデッティ(チェロ)

その昔、パトリック・ガロワのフルートに惚れ込んで、彼が来日するたびにリサイタルに出かけていた。1980年代のことだ。今では音盤でもほとんど聴かなくなったこの人の、当時の演奏が収められた録音を聴いて、優雅で高貴な音色に久しぶりに痺れた(あの頃もルーセルの音楽に感動した気がするけれど)。
しかし、最高というべきは、ヴィア・ノヴァ四重奏団による弦楽四重奏曲!!
ベラ・バルトークの空ろな空想にも似た第2楽章アダージョと、ドミトリー・ショスタコーヴィチの執拗さにも似た(踊る)終楽章アレグロ・モデラートが僕のツボ。

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