ロストロポーヴィチ ボールト指揮ロイヤル・フィル ドヴォルザーク チェロ協奏曲(1957.4録音)

こんなチェロ協奏曲が人間の手で書けるということを、私はどうして気がつかなかったのだろう? もし気がついていたら、とっくに私自身が書いていただろうに!
(ヨハネス・ブラームス)
「作曲家別名曲解説ライブラリー⑥ドヴォルザーク」(音楽之友社)P107

外国から見た自国を知ることこそインターナショナルの鍵。
わが故郷の歴史や文化を知ることは、自分を知ることと同義であり、それこそが世界を平和につなぐ最初の一歩だと思う。
遠くアメリカ合衆国から故郷ボヘミアに捧げる讃歌。
ここには異国での成功を夢見る希望と、故国への憧憬、あるいはホームシック的哀感から薫る潤いも刻印される。

アントニン・ドヴォルザークの傑作チェロ協奏曲ロ短調作品104。
名手ムスティスラフ・ロストロポーヴィチは、幾度もこの曲を録音しているが、エードリアン・ボールトとの最初のレコードの、自由闊達、迫力に富みながらも、哀愁漂う第2楽章アダージョ・マ・ノン・トロッポの美しさに言葉を失うほど。

・ドヴォルザーク:チェロ協奏曲ロ短調作品104
ムスティスラフ・ロストロポーヴィチ(チェロ)
サー・エードリアン・ボールト指揮ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団(1957.4.23-24録音)

第1楽章アレグロからダイナミックで、ひとつひとつのモチーフが常に結び合わされていて、指揮者も独奏者も心からこの音楽に感応している様子がうかがえる。ドヴォルザークが心血注いだ創造物の何という軽やかさ!ロストロポーヴィチならではの超絶技巧が、音楽を一層高く飛翔させる。

晩年、「自分の良心の気高さを守ること」とロストロポーヴィチは語ったが、若き日の彼の演奏も、自分自身を信じて音楽を謳歌する姿勢に貫かれている。彼はまた「音楽とは心の美しさを表すものだ」とも言ったが、第2楽章にこそ彼の心の美しさが投影されるよう。
終楽章アレグロ・モデラートは何と生命力に満ちるのだろう。古い録音を超え、実に喜びと活気に富む堂々たる演奏。

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