
Youtubeをサーフィンしていて出逢った映像に釘付けになった。1時間ほどのドキュメント。ミラノはテアトロ・デラルテでのマイルス・デイヴィス・クインテットのコンサートの記録。黄金期クインテットの、テッパンのアコースティック・ライヴ。
基本的に自己顕示欲の塊であるマイルスが、譲るべきところは譲り、個々が圧倒的なパフォーマンスを繰り広げる。何よりマイルスのリーダーシップというのか、求心力の半端なさ。息を飲むように、静かに見守る聴衆の、1曲を終える毎のスタンディング・オベイションに特別な儀式に参列するかのような敬意がこもる。
Personnel
Miles Davis (trumpet)
Wayne Shorter (tenor sax)
Herbie Hancock (piano)
Ron Carter (bass)
Tony Williams (drums)
全編にわたって途轍もないオーラが光る。ミュート付トランペットで縦横に語るマイルス・デイヴィスの奏でる音楽は神がかり的。そして、どの楽曲においてもマイルスの後に続くショーターの柔らかながら先鋭的なテナーが聴きもの。同時に、若きハンコックのピアノ・ソロのインスピレーション豊かな色彩に感嘆。それにしても何と豪華なリズム隊だろうか。今や涙なくして観ることのできない映像。“Joshua”の加速度的パフォーマンス!!
マイルスは演奏に関してなにもいわない。でも、驚くほど演奏上でマイルスとはフィーリングが合っていた。自然に演奏することで、彼の音楽に溶け込むことができたと自負している。その点では苦労をしなかった。ただマイルスとわたしの音楽に対する考え方、とくにモード・イディオムについてだけれど、それには大きな開きがあった。マイルスはモード・イディオムによってこれまでに浮かばなかったインスピレーションを得ようとしていた。わたしはそうじゃなくて、イマジネーションをもっと発展させるためにモード・イディオムを用いていた。これは同じように思われるかもしれないが、似て非なるものだ。アプローチがまったく違う。
(1986年6月21日、ウェイン・ショーターへのインタビュー)
~小川隆夫「ジャズジャイアンツ・インタヴューズ」(小学館)P127-128
これぞAufheben(止揚)というやつだろう。似て非なるものがぶつかって生じた新たな世界こそ黄金期マイルス・クインテットの真髄だと思う。