企画・脚本:庵野秀明 監督:樋口真嗣 空想特撮映画「シン・ウルトラマン」(2022)

京都は広隆寺にある国宝第1号弥勒菩薩半跏思惟像は、ウルトラマンのモデルだといわれている。「来るべき混迷の時代にどうやって衆生を救おうかと思案する姿」にあって左手の親指と薬指を合わせ輪っかにしているところがミソ。

「シン・ウルトラマン」を観た。驚天動地。
ウルトラマンはやっぱり弥勒の化身だったようだ。感動した。
弥勒の世とも言われる現代に降り立ったウルトラマンは、何を目的に光の国からやって来たのか? 彼が地球を救うのではなく、最終的には人類自身が自らの手で世界を平和にし、人々を救わねばならないのだというメッセージに僕は感動した。

文字通り「天人合一」の奇蹟とも呼ぶべきドラマだろう。ただし、どれほど天が手を差し伸べようとしたところで、実際に、具体的に動くのは肉体を持つ人間なのである。衝撃的な結末。「ウルトラマン」最終話では宇宙恐竜ゼットンによってウルトラマンは斃される。そして、ゾフィーの迎えを得て、光の国へと戻って行くのだが、「シン・ウルトラマン」ではこのあたりの詳細が、背景が事細かく語られる。そして、その内容がまた実に驚くべきもので(!)、それがまた現代の様相に合致しているのだ。

約6万年といわれる人類の、否、我々の本性の、すなわち命の、あるいは霊性の、この世界に降下して来たそのときのストーリーが詳細に語られるようで興味深い(霊性はなぜ地球に飛来しなければならなかったのか?見事にストーリーに一致する点が驚愕)。ウルトラマンは、自身の降来によって命を落とした神永新二の命を助けんと、彼の身体に自身の命を宿した。それは慈しみ深い神永と、同時に地球を救おうと派遣された自身の慈しみの精神が合致して誕生したことを暗示するだろう。そして、最終的には来るべき人類の真の覚醒を待たんと自身と神永の合一を解くべくゾフィーに進言する。さすがは「エヴァンゲリオン」を作り上げた庵野秀明による総監修だと膝を打つ。

空想特撮映画「シン・ウルトラマン」(2022)
斎藤工 長澤まさみ 有岡大貴 早見あかり 田中哲司 /西島秀俊
山本耕史 岩松了 嶋田久作 益岡徹 長塚圭史 山崎一 和田聰宏
企画・脚本:庵野秀明
監督:樋口真嗣
准監督:尾上克郎 副監督:轟木一騎 監督補:摩砂雪 音楽:宮内國郎 鷺巣詩郎
主題歌:「M八七」米津玄師(Sony Music Labels Inc.)

様々な伏線に、後からハッとさせられる構成、脚本に拍手喝采(ザラブの事件も、メフィラスの事件も何と巧妙に作られているのだろう。庵野秀明はやっぱり天才だ)。
ちなみに、特設サイトにはウルトラマンのコスチュームにあえてカラータイマーをつけなかった意図が書かれているが、デザインはもとよりそこには制作者側の、それは出演者も含め、ドラマと現実との境界をなくすために時間を超越せんとする強い意思が感じられる(その代り、身体の模様の色が変化するのだ)。

いよいよ人類は本気で覚醒せねばならない。
傑作である。もう一度、今度は思索しながら、そして詳細を確認しながら観たいと思った。
ネタバレにならないようできるだけストーリーの詳細には触れていないので多くの方に是非観ていただきたいと思う。

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