新海誠監督「天気の子―Weathering With You」(2019)

何よりも森嶋帆高が家出中の身である16歳の少年であることが意味深い。風変わりな恋愛ドラマとして捉えることもできるが、それにしては設定があまりに不可解だ。

僕は視座を高めよというメッセージを得た。今この世(娑婆)の視点だけで鑑賞したところで、このストーリーに含まれる真意はわからないだろう。空間を広げること、意識のレベルを上げること、時間を超えること。

すべては調和に向かっている。
因果は巡る。どんな破壊も、どんな創造も天の按配。
人間が、どれほど力を尽くそうと、大自然の理には敵わない。「この世界はもともと狂ったものだ」という須賀圭介の言葉に納得し、「これ以上僕たちに何も足さず、僕たちから何も引かないでください」という帆高の言葉に首肯する。

代々木の廃墟ビルの屋上に鎮座する鳥居は、おそらく法を得る門だ。
縁あるものだけが、そこに至ることのできる崇高な入口であり、出口だといえる。門を超え、帆高も天野陽菜も光の中で一つになった。
そして、世界の秘密を知った彼らに、人類を救う使命が与えられたが、それから3年、すなわち令和5年までしか語られていない。おそらく観る人の想像にお任せということなのだろうと思う。ちなみに、僕が疑問に思うのは、「天気の子」が自己犠牲により点に召されるという発想だ。それはあくまで此岸の視点でのこと。彼岸の観点に立てば、それは犠牲ではなく、むしろ歓喜と捉えた方が良い。帆高はそのことを、自らが光の世界を体感して知った。

確かに世界は二極化する。右も左も正解だ。しかし、どちらを選択するかはひとりひとりの意識によるのだと映画は問いかける。僕たちも各々が魂を磨き、一日でも早く解脱の境地を体得せよと映画は促すのだ。

新海誠監督「天気の子―Weathering With You」(2019)
醍醐虎汰朗(森嶋帆高役)
森七菜(天野陽菜役)
本田翼(夏美役)
小栗旬(須賀圭介役)
吉柳咲良(天野凪役)
平泉成(安井役)
梶裕貴(高井役)
倍賞千恵子(冨美役)

一編の映画を観て、「やっぱり!」と僕は思った。
陽菜の能力は決して不思議なものでも何でもない。たぶん、本来誰もが持っている力だといえまいか。しかしながら、陰陽二元の現実世界で生きて来た僕たちはすっかりそのことを忘れてしまっているだけだ。だから、その世界を知るために帆高は一旦家(娑婆)を出るしかなかった。
そして、彼の選択はどの瞬間も正しい。

ともすると迷いが生じ、時にボタンの掛け違いがあるこの世の中で、帆高の選択はいつどんなときも正しい。しがらみを捨て、志を持ったものの勇気というのかどうなのか、あるいは、光の世界を体感したものであるからかどうなのか、直観が冴えるのである。

そして、晴れよりもむしろ雨が愛おしい。
集中豪雨や自然の猛威が人々を席巻する現代において、僕たちが直視し、考えなければなければならないのは、一人一人の心の平穏であり、また魂の成長だ。

もう二度と晴れなくたっていい! 青空よりも、俺は陽菜がいい! 天気なんて、狂ったままでいいんだ!

試練があるから人は成長する。森嶋帆高の最後のこの言葉が素敵だ。
新海監督はさすがである。

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