Es-Dur(変ホ長調)という調性は人間の魂を開放する波動をもっているように感じる。音楽教育を専門的に受けたわけではないので、あくまで僕の持論だが・・・。もちろん絶対音感も持ち合わせていない。ゆえに、聴いてそういうものを感じさせる音楽についてあとから調べるとEs-Dur(変ホ長調)という調が多いからそう思っただけである。
例えば、ベートーヴェンの交響曲第3番変ホ長調作品55「英雄」。自殺を図ろうとまで思い悩み、かの「ハイリゲンシュタットの遺書」まで認めながらも、その「壁」を自ずと乗り越え書き上げられたこの交響曲は、質量ともそれ以前の彼を大幅に超えた巨大な音楽であり、宇宙の鳴動である。この曲によって西洋古典音楽は長日の進歩を見せ、ベートーヴェン自身こそが後世の作曲家にとっての偉大なるマイルストーンになる。また、「傑作の森」といわれる時期、その絶頂期に作曲した最後のピアノ協奏曲第5番作品73「皇帝」も同じく「宇宙の調」。
今日はベートーヴェンの上記傑作からほぼ1世紀を経て生み出されたマーラーの変ホ長調交響曲を聴く。
マーラー:交響曲第8番変ホ長調「千人の交響曲」
リッカルド・シャイー指揮ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団
プラハ交響合唱団、オランダ放送合唱団
ジェーン・イーグレン、サラ・フルゴーニ、ベン・ヘプナー他
レナード・バーンスタイン指揮ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
ウィーン国立歌劇場合唱団
マーガレット・プライス、アグネス・バルツァ、ヘルマン・プライ他
第8交響曲作曲に際し、マーラーは弟子のメンゲルベルクに次のように書き送っている。
「私はちょうど、第8番を完成させたところです。これはこれまでの私の作品の中で最大のものであり、内容も形式も独特なので、言葉で表現することができません。大宇宙が響き始める様子を想像してください。それは、もはや人間の声ではなく、運行する惑星であり、太陽です。」
一般的にはマーラーの音楽思想は厭世的で「死への恐怖」をモチーフにしているといわれる。しかしながら、この前代未聞の演奏規模(その名の通り1000人以上の演奏者が舞台を埋め尽くす)を持つ楽曲は極めて肯定的で偉大な歓喜と栄光を讃えているのが特長。
ところで、昨日紹介したバッハのトリオ・ソナタ第1番BWV525の調性も変ホ長調。いろいろと調べてみると、上記以外にもEs-Dur(変ホ長調)の名曲は多い。ただ、単に僕の好みに過ぎないのかもしれないが、「意識の覚醒を促すように感じる」のは僕だけなのだろうか?貴方はどう感じますか?
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