浪漫

今日もEs-Dur(変ホ長調)の曲。
ブルックナーの「ロマンティック」交響曲。この曲を初めて聴いたのは1980年頃。なぜかフルトヴェングラークナッパーツブッシュがウィーン・フィルと演ったロンドン盤。ブルックナーに関してはもともと第7交響曲に魅せられていたゆえ、第4は2番目のブルックナー体験。とてもとても素晴らしい曲で毎日のように聴いていたことを昨日のように思い出す。ブルックナーにはまりつつあったわけだから当然ブルックナーについての文献も読み漁るようになる。それでわかったこと。何と彼の楽曲には版の問題があった。大きく言うと、もともと彼が意図して書いた版は「原典版」、そして弟子が師匠のためにとオーケストレーションを変更したりカットを施したりしたモノが所謂「改訂版」。両者の差は歴然、全くの別物といっても言い過ぎではない。そして、何と上記のフルトヴェングラー盤もクナッパーツブッシュ盤も悪名高い「改訂版」で演奏されていたという事実。

こうなったらば、ブルックナーが本来意図した曲想の「原典版」を聴きたいと思うのは当たり前。早速LPを仕入れた。

ブルックナー:交響曲第4番変ホ長調「ロマンティック」
ラファエル・クーベリック指揮バイエルン放送交響楽団

聴いて驚いた。まず、圧倒的に音が良い(そもそも録音年代が違っているわけだから当然のことなのだが・・・)。完全に違う。全く違う。確かにメロディーや曲想は同じだ。しかし、ディナーミク、アゴーギク、使用楽器、楽器のバランス、その全てにおいて明確に違う。如いて言うなら「改訂版」はコレステロール満点の俗っぽさ丸出しの大衆に媚びた言い回しであり、一方、「原典版」は宇宙・自然と「一」になった高僧のような「聖なる」表現である。どちらが良いとか悪いとかという問題ではないかもしれない。そして、どちらが好きか嫌いかという問題でもなさそうだ。ただし、田舎の野人だったブルックナーの精神性を表現しているのは明らかに「原典版」。今となってはこの「原典版」を聴くのがやはり正当だろう。透明感のある美しさが格別だ。CDでは他にもギュンター・ヴァント&ベルリン・フィル盤が良い。実演では朝比奈隆&新日本フィルのコンサート(1992)が忘れられない。

※弟子が良かれとやった「改訂版」もたまには聴くと面白い。そうはいっても、普段と違った化粧を施された「野人」がところどころに垣間見える。

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