喧騒の音楽

久しぶりにヒンデミットの室内交響曲集を聴いていて、実はショスタコーヴィチなども彼からの影響を十分に受けているのではと感じた。例えば1921年に作曲された第1番。その名の通りこじんまりとした編成だが、当時のポピュラー音楽のエッセンスを取り入れながら、かつ古典音楽の枠を相応に遵守し、じっくり聴くと実に興味深いということが今更ながらよくわかった。第一次大戦の敗戦からナチスの台頭までの15年ほどのドイツは、狂喜乱舞のある意味「バブル期」のような時代だったのだろうが、その頃の雰囲気、気分が追想でき、何ともふわふわとお酒に酔ったような気分にさせられ気持ち良い。

不謹慎かもしれないが、世の中が暗いときにこそ自粛ばかりでなく、こういう聖俗が入り乱れるような、あるいは冗談音楽のような作品がもっともっと演奏されても良いように思う(ただし、世間の反発を考えるとそれはなかなか難しいだろう)。29日に愛知とし子が子どものための「音浴じかん」を企画しているが、ホール側から暗に自粛せよとの要請が頻繁にある。参加を希望されているお客様の要望は「こういう時期だからこそ外に出て子どもに良い音楽を聴かせたい」というものが多い。主催側としてはお客様のニーズにお応えするのが一番だからともかく決行という意思を固めてはいるのだけど・・・。

音楽家は人々を元気にするのが仕事。そうそう中止にしていては仕事にならない。良い音楽を聴いて目を輝かせる子どもを見てやりがいを感じるものだし、何より3年も継続し、リピーターが何人もいらっしゃるという事実から考えてみても求められていることは間違いない。最高の音楽を奏でることを全うすべし。

それにしてもヒンデミットの音楽。泣きたくなるほど明るく、美しく、そして退廃的・・・。

ヒンデミット:
室内交響曲第1番~第7番
ヴォルフラム・クリスト(ヴィオラ、ヴィオラ・ダ・モーレ)
ウェイン・マーシャル(オルガン)
ラルス・フォークト(ピアノ)
ゲオルク・ファウスト(チェロ)
コーリャ・ブラッハー(ヴァイオリン)
クラウディオ・アバド指揮ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

ベルリン・フィル時代のアバドは、企画力では人後に落ちない。コンサートにおけるプログラミングの妙、あるいはほとんど顧みられることのなかった楽曲の掘り起こしなど。そして、そういうものを採り上げた際、まるでアバドに捧げられたかのような錯覚を起こすほどの名演奏が繰り広げられること。このヒンデミットの室内音楽はいずれも名演。奏者各々が一生懸命に、そして楽しんで演奏していることが手に取るようにわかる。


7 COMMENTS

雅之

おはようございます。
私の住む東海地方でも、例えば長良川はじめ多くの夏の花火大会が今年は中止になるようですが、中部電力管内エリアでの夏の行事まで、こうした、いつまでも続く自粛ムードというのはいただけないですね。日本の地方には、飲んで騒いで死者を弔うという風習もあるわけですし、ただでさえ外国人観光客が激減する中、過度な自粛ムードは経済に与えるダメージが深刻ですよね。

4月29日の「音浴じかん」は、電力不足の心配もない気候がいい時期だし、何も問題ないですよね。皆が大変な時だからこそ堂々と開催して、震災疲れした首都圏の人々の心を癒すために貢献、活躍されるべきだと私も思います。

それにしても、首都圏の夏と冬に予想される電力不足には困ったものですね。このことが当面の日本の経済成長における一番のネックでしょうね。野球やサッカーなどのプロ・スポーツも、震災後、電力不足問題に振り回されっぱなしですしね。

ビートたけしさんの「東京湾に原発作れ」という発言も話題になっていますね。昔からある議論で、2000年4月には、都知事の石原慎太郎氏が原発の必要性を強調するために「東京湾に原発を作っても構わない」と発言したそうですが・・・。

4月12日(火)19時22分配信 J-CASTニュース より ビートたけしさんの発言
「福島原発の電力を首都圏が利用しているのに、原発のリスクを地方の県や人に押しつけるのはおかしい。東京湾に作って、東京の人がそれで生活したら、何も文句は出ないはず。都心は地盤が悪いとか言うけど、地震が来ればどこも同じだよ」
「1300万人もいる東京に原発を作るとなると、どんな地震が来ても、津波が来ても、完璧に絶対に大丈夫な原発を作るはずだもの。そうすっと、東京都は地方にカネをやんなくてもいいわけだし」
「やっぱり、地方にリスクを押し付けて、東京だけいい生活をしようってのは虫がいい話なわけでさ。だったら、東京は地方にガタガタ言わせないためにも『お台場に原発を』だね」
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20110412-00000005-jct-ent

私の意見はたけしさんとも違って、お台場には、景気と雇用対策も兼ねて、危険極まりなく放射性廃棄物の処理もやっかいな原子力ではなく、火力発電所を何十基も、都民からの税金及び東京都や国の予算で堂々と早急に建設し、日本経済のためにも、首都圏のエネルギー危機問題を解決させるべきだと思っています。

ヴィオラ奏者にとってヒンデミットは「神」のひとりです。ご紹介のCD、私にとっても「宝」です。

一番最近聴いたヒンデミットは、第二次世界大戦の犠牲者への哀悼を込めて作曲されたという、
「 前庭に最後のライラックが咲く時―愛する人へのレクイエム 」 (1946年)
http://www.amazon.co.jp/%E3%83%92%E3%83%B3%E3%83%87%E3%83%9F%E3%83%83%E3%83%88-%E5%89%8D%E5%BA%AD%E3%81%AB%E6%9C%80%E5%BE%8C%E3%81%AE%E3%83%A9%E3%82%A4%E3%83%A9%E3%83%83%E3%82%AF%E3%81%8C%E5%92%B2%E3%81%8F%E6%99%82-Hindemith-Requiem-lieben/dp/B000028AYA/ref=sr_1_1?s=music&ie=UTF8&qid=1302733423&sr=1-1
これも、震災の犠牲者に捧げたい曲です。

返信する
岡本 浩和

>雅之様
おはようございます。

>ビートたけしさんの「東京湾に原発作れ」という発言
半分皮肉もあるでしょうが、言いたいことはわかります。

それに世間ではいろんな人がいろんな見解を持ってるようですし、事故の裏側などについても知れば知るほど問題が多そうです。
http://ameblo.jp/counselors/entry-10858876532.html
http://gabasaku.asablo.jp/blog/cat/atom/

色々とあるでしょうが、雅之さんのご意見がもっともですかね。

ところで、ご紹介のヒンデミット、これは興味深いですね。
未聴なので手に入れたいと思います。
ありがとうございます。

返信する
雅之

「CO2地球温暖化説」についても、近年は多くの学者、研究者が疑問視しています。

http://env01.cool.ne.jp/global_warming/report/kondoh02.htm
(他多数サイト、書籍あり)

また、多くの人の、「最近、昔より暑くなった」という生活実感は、
都市のヒートアイランド現象と、地球温暖化を、
混同している可能性が高いと思うようになりました。

返信する
岡本 浩和

>雅之様
こんばんは。
興味深いサイトのご紹介ありがとうございます。
これは今まで考えても見なかった視点の考察なので、少し勉強させていただきます。

確かに
>「最近、昔より暑くなった」という生活実感は、
都市のヒートアイランド現象と、地球温暖化を、
混同している可能性が高い

ということが言えるかもしれませんね。

返信する
雅之

こういう説もあります。
一読をお薦めします。

「未知なる地底高熱生物圏―生命起源説をぬりかえる」
トーマス ゴールド (著), Thomas Gold (原著), 丸 武志 (翻訳)  大月書店
http://www.amazon.co.jp/%E6%9C%AA%E7%9F%A5%E3%81%AA%E3%82%8B%E5%9C%B0%E5%BA%95%E9%AB%98%E7%86%B1%E7%94%9F%E7%89%A9%E5%9C%8F%E2%80%95%E7%94%9F%E5%91%BD%E8%B5%B7%E6%BA%90%E8%AA%AC%E3%82%92%E3%81%AC%E3%82%8A%E3%81%8B%E3%81%88%E3%82%8B-%E3%83%88%E3%83%BC%E3%83%9E%E3%82%B9-%E3%82%B4%E3%83%BC%E3%83%AB%E3%83%89/dp/4272440284/ref=sr_1_10?s=books&ie=UTF8&qid=1302788107&sr=1-10

だいぶ気が楽になると思います(笑)。

返信する
岡本 浩和

>雅之様
こんばんは。
これはまた面白そうな書物を・・・(笑)
ありがとうございます。
読んでみます。

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