庄司紗矢香のレーガーとバッハ

店頭でふと見かけて、思わず衝動的に購入した音盤が、殊の外名演奏だったりするととても嬉しい気分になる。これこそ一期一会とでも叫びたい気持ちに駆られるが、確かにその時に買わなかったらおそらく後日になっても買うことはないだろうと思われる音盤は多い。今のご時世日々新しい録音がリリースされて、余程のロングセールスでない限りすぐ埋もれてしまうだろうから。

3月にインバル&東京都響の定期演奏会に行く予定だったのだが、震災の影響で中止になった。バルトークのヴァイオリン協奏曲と「青ひげ公」(演奏会形式)という珍しいプログラムだったから楽しみにしていたし、何よりソリストの庄司紗矢香の実演をこの耳で確かめられるチャンスだったものだから、そのニュースを聞いたときは意気消沈した。

そんな事情もあったのだろう、先日、「レコード芸術」を手に入れるのにタワーレコードをぐるりと一周したとき、彼女が昨年(だと思う)バッハとレーガーの無伴奏曲を交互に録音した2枚組がふと目に留まって手にとり、そのままレジに向かった。

・レーガー:前奏曲とフーガト短調作品117-2
・J.S.バッハ:ソナタ第1番ト短調BWV1001
・レーガー:前奏曲とフーガロ短調作品117-1
・J.S.バッハ:パルティータ第1番ト短調BWV1002
・レーガー:シャコンヌト短調作品117-4
・J.S.バッハ:パルティータ第2番ニ短調BWV1004
庄司紗矢香(ヴァイオリン)

J.S.バッハの大傑作を規範に創作されたというレーガーのこの作品は初めて耳にしたが、バッハのそれに負けず劣らず素敵な作品。いや、レーガーの作品を先にもってくることでそれこそ20世紀の埋もれた傑作が、18世紀の古典と実に同等の価値を持つことを庄司は明確に教えてくれているよう。

肝心の演奏は・・・、本当に上手い。バッハのほうは「厳しさ」よりどちらかというと「安寧」を感じさせてくれる、真に音楽のみが鳴る「無私」の演奏。レーガーのほうは、コレルテロールを削ぎ取った、それこそ「厳しい」音楽が鳴り響く。
これは何としても実演を聴かなければ・・・。

3 COMMENTS

雅之

おはようございます。

CDショップは、本当に街から姿を消しましたね。今やニューヨークではゼロになったというではありませんか。CDというソフトの末路が、投票券、握手券付、水着ジャケットのAKBっていうのも、志の低い寂しい話ですね。クラシックの店頭販売では、活気があるのはコンサート会場のお土産売り場だけですしね(笑)。

>店頭でふと見かけて、思わず衝動的に購入した音盤が、殊の外名演奏だったりするととても嬉しい気分になる。

ネットからではなく、こういう出逢いがいいですよね。このほうが運命的な気分になれますよね。

ご紹介のCDは未聴ですが、聴く前から素晴らしいそうです。レーガー作品では、前に今井さんのCDをご紹介したことがありましたが、ヴァイオリンやヴィオラの無伴奏作品に、一般には知られざる名品が多いので、ご紹介の盤のようにバッハ作品と組み合わせるとじつに魅力的ですよね。早速私も入手してみたいです。感謝です。

ところで、音楽との出逢いといいますと、昔FM放送を聴いていて、レーガー:「モーツァルトの主題による変奏曲とフーガ」に一目惚れ(笑)したことがあります。
http://ml.naxos.jp/album/PH07003

おススメSACD
ヴァイグレ&ドレスデン・フィル
http://www.hmv.co.jp/product/detail/2623068

岡本さんは、シューリヒト&ウィーンフィルの名演の録音あたりで、ご存じの作品ではないでしょうか?

私は、今でも、ブラームスの「ハイドンの主題による変奏曲」に匹敵する名作だと信じています。

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岡本 浩和

>雅之様
こんばんは。

>CDというソフトの末路が、投票券、握手券付、水着ジャケットのAKBっていうのも、志の低い寂しい話ですね。

同感です。ショップが無くなろうが、やっぱり僕はネットショップよりもリアルショップ派です。じっくりと店頭を回りながら思いもかけなかった音盤に出会った時の喜びは望外です。

>私は、今でも、ブラームスの「ハイドンの主題による変奏曲」に匹敵する名作だと信じています。
同感です。

ところで、ご紹介のレーガーの音盤、僕も愛聴盤でして、1年ちょっと前に採り上げています。
http://classic.opus-3.net/blog/?p=2538

残念ながらシューリヒト盤は未聴です。しかし、これは興味深いCDだと思うので、聴いてみます。ありがとうございます。

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