思索的ロック・ミュージック

四季の移ろいが詫び寂を生み、それが芸術として昇華されたときに永遠の美というものがそこから発せられるとするなら、日本という国は古来その最たる位置に存在していたのだということを再確認し、「風光明媚」という言葉が単なるお飾りではないのだということをあらためて理解した。もっと「大自然」の営みを意識し、人間が地球と共生しているんだということをひとりひとりに認識させるかのように起こった大地震かと思われるくらい。もしも、いわゆる精神世界でいわれているように日本が世界の雛形だとするならば、それこそ「大和魂(大いなる和の精神)」なるものを今ここで発しなければいつするのか。自分が今この時代にこの日本に存在し、そして東京で今日のような体験をしているのは一体何の意味があるのか。先日、世間話的に話題になったシベリウスのピアノ曲(僕が所有しているのはラルフ・ゴトーニというピアニストが演奏するオンディーヌ盤)を聴いていると、ついつい哲学的な(笑)思索をしてしまう。

夜の蒸し暑さをぶっ飛ばすのに、シベリウスの眉間に皺を寄せるような(笑)、厳しい冬を想像させる音楽は確かにぴったり。しかしながら、今日はもっとひねくれて、ロバート・フリップがデイヴィッド・シルヴィアンとコンビを組んで録音した音盤を聴く。ある意味暑苦しい。しかし別の意味では、極めて血の気の引くような肌寒さを覚える音の洪水。そういえば、シルヴィアンはかつてJapanというバンドを率いていたが、Japan解散後のソロ活動の中でも圧巻がこのフリップとの一連のプロジェクトだったのではと勝手ながら想像する。90年代King Crimsonを結成するに当たり、フリップは最初にヴォーカリストとしてシルヴィアンに声をかけたらしいが、実現しなかった。確かにデイヴィッド・シルヴィアンという天才の声はCrimsonという「器」には相応しくない(否、というより入りきらない)。

sylvian & fripp:damage

1993年12月にライヴ収録された音源。もう・・・、涙が出るほど完璧である。生演奏とは思えない比類のないフリップのテクニックとシルヴィアンの人間離れした「彫刻のような歌声」。ここには、松尾芭蕉に通じる「詫び寂」があるのでは・・・?そんなことをふと感じさせる瞬間が大いにある(何より、聴衆の行儀が良い。演奏中に無駄な奇声を挙げず、ただひたすら僧侶のような2人の「沈黙」のパフォーマンスに酔い痴れているような雰囲気。もちろんそれは、音だけで判断していることなので実際にはどうだかわからないが・・・)。


2 COMMENTS

雅之

おはようございます。

デヴィッド・シルヴィアンに詳しくない私の、身勝手な連想。

>1993年12月にライヴ収録された音源。もう・・・、涙が出るほど完璧である。

その10年前、1983年の音源(1982年、ジャパン解散後)
戦場のメリークリスマス/デヴィッド・シルヴィアン【禁じられた色彩】Ver.Ⅱ
http://www.youtube.com/watch?v=VCVexPCiGp0

これも、
>ある意味暑苦しい。しかし別の意味では、極めて血の気の引くような肌寒さを覚える

〈映画 戦場のメリークリスマス あらすじ〉
・・・・・・1942年、日本統治下にあるジャワ島レバクセンバタの日本軍俘虜収容所で、朝鮮人軍属カネモト(ジョニー大倉)がオランダの男性兵デ・ヨンを犯す。日本語を解する俘虜の英軍中佐ロレンス(トム・コンティ)は、ともに事件処理にあたった粗暴な軍曹ハラ(ビートたけし)と奇妙な友情で結ばれていく。

一方、ハラの上司で所長の陸軍大尉ヨノイ(坂本龍一)は、歴戦の勇士(空挺コマンド・SASの前身)で俘虜の英国陸軍少佐ジャック・セリアズ(デヴィッド・ボウイ)を預かる事になり、その反抗的な態度に悩まされながらも彼に魅せられてゆく。同時にカネモトとデ・ヨンの事件処理と俘虜達の情報を巡り、プライドに拘る英軍大佐の俘虜長ヒックスリー(ジャック・トンプソン)と衝突する。東洋と西洋の宗教観、道徳観、組織論が違う中、各人に運命から届けられたXmasの贈り物が待っていた。・・・・・・(ウィキペディア 「戦場のメリークリスマス」 の項より)

地獄の黙示録
http://www.youtube.com/watch?v=IHUSmOQnzEk

・・・・・・コッポラは映画化にあたり、『闇の奥』以外にも様々な作品をモチーフにした。映画中でT・S・エリオットの『荒地』(原題:The Waste Land)や『うつろな人間たち』(原題:The Hollow Men)の一節が引用されたり、ジェームズ・フレイザーの『金枝篇』(原題:The Golden Bough)から「王殺し」や「犠牲牛の供儀」のシーンが採用されるなど、黙示録的・神話的イメージが描かれている。この他、監督の妻エレノア・コッポラの回想録によると、コッポラは撮影の合間、しばしば三島由紀夫の『豊饒の海』を手に取り、本作品の構想を膨らませたそうである。また、立花隆はギリシャ神話を隠喩的に織り込んでいると述べている。

コッポラは映画の製作初期段階から、音楽をシンセサイザーの第一人者である冨田勲に要請していた。しかし契約の関係で実現には至らず、結局監督の父親であるカーマイン・コッポラが音楽を担当した。このあたりの事情は、『地獄の黙示録』完全版のサウンドトラック盤のライナーノーツで、コッポラ自身が詳細に語っている。・・・・・・(ウィキペディアより 「地獄の黙示録」 の項より)

・・・・・・『豊饒の海』(ほうじょうのうみ)は、三島由紀夫の長編小説。「春の雪」「奔馬」「暁の寺」「天人五衰」の4部からなり、「浜松中納言物語」に題材をとる。1965年から1970年にかけ、月刊の文芸雑誌『新潮』に連載された。

概要
「夢と転生」がテーマ。20歳で死ぬ青年が、次の巻の主人公に生まれ変わっていく。仏教の唯識思想、神道の一霊四魂説、能の「シテ」「ワキ」、春夏秋冬、など様々な東洋の伝統を踏まえて書かれている。なお第一巻は和魂を、第二巻は荒魂、第三巻は奇魂、第四巻は幸魂を表すと三島は述べている。
第四部「天人五衰」の入稿日に三島は、陸上自衛隊市ヶ谷駐屯地で割腹自殺した(三島事件)。「豊饒の海」とは、月の海の一つである「Mare Foecunditatis」の訳語。・・・・・・(ウィキペディアより 「豊饒の海」 の項より)

>ある意味暑苦しい。しかし別の意味では、極めて血の気の引くような肌寒さ

・・・デヴィッド・シルヴィアン⇒倒錯した愛⇒サロメ⇒戦場のメリークリスマス⇒地獄の黙示録⇒ワーグナー⇒リング⇒近親相姦⇒輪廻⇒豊饒の海⇒三島由紀夫⇒倒錯した愛・・・、湿度が高い梅雨末期、脳裏に突如出現した、この鳥肌立つ妖気循環の正体は一体何なんだ!! 魑魅魍魎の仕業か? それとも?・・・

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岡本 浩和

>雅之様
こんにちは。
猛暑ですね。今外出から戻りましたが、気力が失せるほどの暑さです。

しかしながら、朝っぱらからの見事な妖気循環!さすがは雅之さんです。
2順目も、倒錯した愛⇒ロリータ⇒キューブリック⇒2001年⇒ツァラトゥストラ⇒R.シュトラウス⇒エレクトラ⇒近親相姦⇒指環⇒・・・とどうしても抜け出せません(笑)

それにしてもご紹介いただいたデイヴィッド・シルヴィアンの映像、しびれますね。

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