夏は去りぬ

ジム・モリスンが亡くなった後に、残された彼の朗読テープをもとに他の3人が演奏をオーヴァーダビングし、リリースした”An American Prayer”というアルバムがある。まったく哀愁漂う、いわばジム・モリスンの遺作のような立ち位置にある作品だが、あまりに暗鬱とした雰囲気が嫌で、相当のドアーズ好きの僕でも若い頃からこのアルバムばかりはほとんどまともに針を下ろすことができなかった。

デビュー・アルバムから世間に衝撃を与えたモリスン=ドアーズは、活動期間そのものはわずか4年ほど。その間に彼らが発表したアルバムはそれぞれに違った色合いを持ち、順番に聴いていくことでドアーズというバンドの進化、深化、あるいは変化を如実に感じ取ることができるが、The Doorsが初めて全米チャートのナンバー・ワンに輝いたのはようやく第3作目にして。題して”Waiting For The Sun”(邦題:太陽を待ちながら)・・・!!!

一つ一つの楽曲のレベルは正直それまでの2枚に比べインパクトは薄い。とはいえ、”Hello I Love You”や本来”The Celebration Of The Lizard”という大作組曲として発表される予定だった作品の一部である”Not To Touch The Earth”、あるいはベトナム戦争の泥沼にはまってしまった当時のアメリカの病巣を抉るような”The Unknown Soldier”など佳作、問題作も十分幅を利かせており、やはりドアーズ、ジム・モリスンを理解する意味で避けて通ることのできないアルバムであることは間違いない(というより短い活動期間の中で彼らが残した録音はどれひとつとして不要なものはない)。

The Doors:Waiting For The Sun

Personnel
Jim Morrison(vocals)
Ray Manzarek(keyboards)
Robby Krieger(guitar)
John Densmore(drums)

ところで、2007年に40周年記念リミックス・バージョンがリリースされたが、その中にはボーナス・トラックとして先の”An American Prayer”にも(確か)一部が収録されていた「アルビノーニのアダージョ」や”Celebration Of The Lizard”の完全版(”In Concert”と同一音源だと思う)が収められている(これらを聴くだけで十分価値あり)。

ちなみに、ドアーズの場合、季節や自然をテーマにした作品が必ずと言っていいほど収録されるが、どういうわけかそれらの歌を歌うジム・モリスンの声には、涙を誘う独特の「感傷」がある。

“Summer’s Almost Gone”
Summer’s almost gone
Almost gone
Yeah, it’s almost gone
Where will we be
When the summer’s gone?

Morning found us calmly unaware
Noon burn gold into our hair
At night, we swim the laughin’ sea
When summer’s gone

2011年も残すところ5週間ほど。予想外のことも含め驚くほどいろいろなことがあった。
その記憶に身を置くと、あるいはその環境に身を戻すとついついセンチメンタルな気持ちになってしまうが、それはいつのどんな時代も人の常。振り子のように行っては戻って、戻っては行っての繰り返しか・・・。まぁ、それもよかろう・・・。


3 COMMENTS

雅之

おはようございます。

モリスン=ドアーズも典型的にそうだったんでしょうが、特にあの頃までのロックやジャズの一流のミュージシャン達は、ドラッグの助けが無ければ人並み外れたインスピレーションを得られなかったのでしょうか。それって良くも悪くも、筋肉増強剤などの薬物でドーピングしたスポーツ選手たちと一緒なのではないのでしょうか。

「健全な精神は健全な肉体に宿る」の真反対で栄光を目指したわけです、彼らは・・・・。

ふと、そんなことを思いました。

返信する
岡本 浩和

>雅之様
おはようございます。
優れた芸術というのは「常識」の中からは生まれないということかもしれません。
ジム・モリスンもジミヘンも、ジャニスも、あるいはブライアン・ジョーンズも命と引き換えにドラッグにはまったのでしょうが、それゆえに至高の作品群が創造できたのだと考えると「そういうもの」の存在を真っ向から否定できないものだなとも考えてしまいます。人類皆がお行儀良くなってしまったら、面白くもなんともない世界になってしまうでしょうね。やっぱりすべては表と裏があっての「存在」だと確信します。
本日もありがとうございます。

返信する

コメントを残す

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください

アレグロ・コン・ブリオをもっと見る

今すぐ購読し、続きを読んで、すべてのアーカイブにアクセスしましょう。

続きを読む