フルトヴェングラーのいわゆるウラニアの「英雄」。つい先頃発売されたSACD盤(Tahra)の音質が俄然よくなったという記事を「レコード芸術」誌で読み、煽られ(笑)ついつい購入してしまった。確かに音は良い。しかし、音が良くなろうとどうだろうと、あの鬼神が乗り移るような表現は、昔散々聴いたものだから脳みその真底まで刷り込まれており、既存の音盤と聴き比べることなく聴く限りにおいて、正直感動を覚えなかった。技術的にはこれまでのフォーマット以上の周波数帯域の音までもが記録されているようだから、明らかにSACDを揃える、つまり買い替えるべきなのだろうが、何だか過去の音源を、それも既に所有しているものを、リマスターされた、あるいはフォーマットが変わったという理由だけで買うのはもう止そうかとも考えさせられた。
そう、何だか過去にすがるようで・・・(笑)。
確かにこのフルトヴェングラーの稀代の演奏を含め、かつての巨匠たちの音楽というのは現代の我々の精神的渇きを十分に癒してくれる。当然、発掘されリリースされる録音も多々あるが、若い頃のようにそういうものを何でもありがたがって追っかけ、買い求め、遮二無二聴くという行為が何だか馬鹿らしくなってきたのか・・・、まぁそういうことをする年頃でもなくなったのだろう・・・(笑)。
それより、新しく今生れ出る音楽を享受したい。それには実演に触れるのが一番。しかしながら、毎日ライブを聴くというのは物理的に不可能だから、せめて自分がまだ聴いたことのない演奏や作品を中心に聴いていきたいもの(逆にお金がかかるなぁ・・・笑)。
ところで、大学生にものを教えるという仕事。本当にこれは面白い。もう20年という単位でそのことに携わっているが、年々彼らとは年齢が離れてゆくのに、僕の中では全く違和感がない。そう、永遠の30歳なのである、僕は(笑)。今の子たちは当然平成生まれで、下手をすると僕に彼らくらいの子どもがいてもおかしくないというシチュエーション。だからこそなのかともかく真剣になれるし、本気で向かおうとする気持ちでいっぱいになる。
本日は淵野辺の某大学の2年生向け「キャリアデザイン講座」の第2回目。いや、だんだん心を開いてきましたよ、彼らは・・・。ぐいっと岡本ワールドに引き込んで、とにかくいっぱい「気づき」を得ていただこうと、そんなことを企んでいる(笑)。
大事なのは「環境」。どんな人と付き合うのか。どんな場所に関わるのか。少なくとも前向きに希望をもって何にでもどんどんチャレンジするという気概を持った輩が大勢いる中に身を置くことが重要。そんな話を最後に学生たちにしたら、はっとしていた。何せ大学2年という時期が一番マンネリになる頃だから。やりたいと思っていたこと、やろうと計画を立てていたことの半分もできていないことに気づく・・・。そう、気づけば、決して遅くないから。
ベートーヴェン:交響曲第3番変ホ長調作品55「英雄」
ヴィルヘルム・フルトヴェングラー指揮ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団(1944.12.19,20)(HYBRID SACD)
とはいえ、やっぱりこの演奏は最高!久しぶりに聴いたが、身震いした。58歳のフルトヴェングラーが成し遂げた永遠の30歳のような瑞々しい「エロイカ」!!
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