ブラームスの第5シンフォニー

すみだ学習ガーデンでの「早わかりクラシック音楽入門講座」も本日で第6回、そして本年最後の講義となった。本日のお題は後期ロマン派からブラームスとブルックナー。とはいえ、わずか2時間ばかりでは真髄までは残念ながらお伝えできない。中途半端さに隔靴掻痒しながらもブラームス、それもロベルト・シューマンとクララとの関係などを中心に1時間20分、残りの40分をブルックナーについての簡単な見解とギュンター・ヴァント指揮する第7交響曲の映像を抜粋で視聴いただいた。
終了後、何人かの受講生が年の瀬のあいさつにいらした。その中である老淑女から「1月に小学1年の孫がピアノ発表会でブラームスのワルツを弾くことになっていて、それがクラシック音楽について学んでみようと思ったきっかけだったんです」と嬉しそうにお声をかけていただいた。なるほど、そのことを知っていたら講義中に「ワルツ集作品39」(多分有名な第15番をお孫さんは弾かれるのだろう)をかけさせていただいたのにとも思ったが、何よりこの講座自体を毎回楽しみにいらしていただいているんだということがわかっただけでも収穫。決して専門家でない僕が(いや、専門家でないがゆえに専門的でない話ができるのかも)こういう場をいただいて、音盤ながら皆さんに僕が推薦するCDやDVDを視聴いただけるというのだから真にありがたい。ともかく感謝である。

久しぶりにシュレスヴィヒ=ホルシュタイン音楽祭での晩年のギュンター・ヴァントのパフォーマンスを観た。ブラームスの第1シンフォニーのフィナーレ。とても85歳とは思えない若々しい推進力と、少々恣意的にまでギアチェンジしながらフォルティシモとピアニシモの対比を強調するやり方に何だか感動した。これまで何度も観ているにもかかわらず・・・。

臆病者ヨハネスの真骨頂ともいうべき20年もの歳月を費やして完成した交響曲第1番は、過去にあまりにも繰り返し聴いたゆえ食傷気味のところがあったが、さすがにフォン・ビューローから「ベートーヴェンの第10番」と称されただけあり、真新しい気持ちで接すると、受講生以上に僕自身が感動していたかも(笑)。久しぶりに実演に接したくなった。

ところで、せっかくなのでブラームスの第5交響曲でも聴いてみることにする。ご無沙汰の音盤。

ブラームス:
・ピアノ四重奏曲第1番ト短調作品25(アルノルト・シェーンベルクによる管弦楽編曲版)
・ヘンデルの主題による変奏曲とフーガ作品24(エドマンド・ラッブラによる管弦楽編曲版)
ネーメ・ヤルヴィ指揮ロンドン交響楽団

シェーンベルク編曲版はシェーンベルクの編曲動機に反してそのオーケストレーションは決してブラームス的でないが、この長大な室内楽作品が見事に「交響曲」として生まれ変わっているのは確かで、繰り返し耳にするにつけその魅力にずんずんとはまってゆくよう。十二音技法でならした編曲者が米国移住後に調性を復活させた作品を書き始めるのに伴い、無調作品と調性作品のエッセンスを無意識に溶け込ませた色彩感豊かな音楽と化している。これはいずれ実演で聴かねば、そんな思いが湧き起こる・・・。
ちなみに、ラッブラ編の「ヘンデル・ヴァリエーション」。そもそも原曲は僕の大好物ゆえ、誰がどんな風に編曲しようと基本的に「良し」と思えるのだろうが、こちらも怒涛の大管弦楽作品に生まれ変わっており、ブラームス好きならばぜひとも聴いていただきたい作品。

さて、あと少しで月蝕が始まる。そろそろ出かける準備をして皆既月蝕まで見届けよう・・・。


5 COMMENTS

雅之

おはようございます。

皆既月食で月が暗くなりきらず赤くなればなるほど、火山噴火による塵などで地球の大気が透明度が低く、太陽光が乱反射している影響なんだそうです。こういうのは過去何回か観ましたが、今回もそうだったですね。

昨日は、ウルトラセブンの脚本家のひとり、市川森一さんが亡くなられましたね。

録画してあった、市川さんのシナリオによる直近のテレビドラマ「蝶々さん~最後の武士の娘~」
http://www.nhk.or.jp/nagasaki/butterfly/
を、夕方堪能し観終わった後、このニュースを知り驚きました。このドラマで描かれた内容、クラシック・ファンは知っておいた方が絶対良いし、余韻がいつまでも残る素晴らしい作品になっていたと思いました。

月食が終わった深夜、ウルトラセブン第35話「月世界の戦慄」
http://www2.u-netsurf.ne.jp/~okhr/sight7/page35.htm
を鑑賞してから寝ました。

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雅之

そう、重要な感想を書き忘れたのでもう一言。
この回で月を眺めてダンの無事帰還を願うアンヌと、米巡洋戦艦の長崎港への帰港を待つ蝶々さんが、不思議にオーバーラップした気がしたんです。

返信する
岡本 浩和

>雅之様
おはようございます。

>、火山噴火による塵などで地球の大気が透明度が低く、太陽光が乱反射している影響なんだそうです

そのようですね。一方で地球の大気の波動の跳ね返りのカラーだという説もあります。

そうそう、市川さん亡くなりましたね。NHKの「蝶々さん」が市川さんのシナリオとは知りませんでした!ありがとうございます。ちなみに、「蝶々さん」後半を録画ミスしてしまい、見れていないのです(涙)。
前半を見て、楽しみにしていたのですが・・・。
アンヌと蝶々さんのオーバーラップの話を聞くとますます悔しいです。

ところで、ウルトラセブン鑑賞しjましたか!僕もよっぽど見ようかと思ったのですが、「坂本龍一スコラ」の昨日録画分を見てたら眠くなって寝てしまいました・・・。

返信する
雅之

>地球の大気の波動の跳ね返り

このへんの表現が、私はいつも強い抵抗があるところなんです。

スピリチュアを否定はまったくしていませんが、熱心な人々は、トンデモ科学的な表現を駆使して一般人を惑わせないで欲しいと常々願っています。
精神世界は精神世界、宗教は宗教の言葉で信念を持って語るべきで、オウムのように、科学の権威を曲げて利用するのは卑怯だというのが私の持論です。

また、SFはSFで子供のころから大好きな世界ですが、こちらもあくまでファンタジーによる芸術の実り多い一分野だと割り切って楽しんでいます。

「蝶々さん~最後の武士の娘~」は31日にBSプレミアムで前後続けて再放送をやるみたいです。市川さんの遺作のようですし、ぜひ録画を!!

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岡本 浩和

>雅之様
こんばんは。

>一般人を惑わせないで欲しいと常々願っています。

同感です。本当に今の時代は有象無象溢れています。その意味では受け取る側も勉強が必要だと思います。

>あくまでファンタジーによる芸術の実り多い一分野

そうですね、遊び心が必要ですよね。要はすべてにおいて大事なのはバランスだと思います。

「蝶々さん」の情報をありがとうございます!!

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