ボッケリーニの音楽は人を前向きにする

自由が丘でお茶をした。
太陽がことさら眩しかった。
過去を振り返る時、その時の感情までを引き出して浸る必要はないのだと。むしろ現在の立ち位置から客観的に過去を見つめ整理すること。そして、1日、1週間、1ヶ月という単位で目標を掲げ、小さな一歩を具体的に踏み出すこと。過去と現在をそうやってクロスさせる。そのサポートをZEROでする。その延長にワークブックあり。

長いこと廃盤のままで、聴きたくてもどうにもならなかった音盤がようやく手に入った。
そう、NHK-FMで黒田恭一さんが解説をした「20世紀の名演奏」のテーマ音楽に使用されていたフィルハーモニア・アンサンブル・ベルリンによるボッケリーニの作品37-1(G.377)を含む弦楽五重奏曲集。日曜日の朝9時にラジオから流れたあのアンダンティーノが今まさに目の前で鳴る。あの日あの時がまざまざと蘇る。可憐で美しい。

ルイジ・ボッケリーニが1795年に作曲したといわれる作品37-1(G.377)の調性はベートーヴェンの調性、ハ短調だ。実際、第1楽章冒頭のグラーヴェ・アッサイは重厚で暗鬱たる雰囲気を持つ。とはいえ、主部に入った時の快活さは専らイタリア的で明朗快活、ここにはベートーヴェンの影はない(ボッケリーニの方が随分年上のわけだからこの表現は正確でないのだけれど)。

ボッケリーニ:
・弦楽五重奏曲ホ長調作品13(11)-5, G.275
・弦楽五重奏曲ニ短調作品20(13)-4, G.280
・弦楽五重奏曲ハ短調作品37-1(51-2), G.377
・弦楽五重奏曲ニ長調作品37-2(39-3), G.339
フィルハーモニア・アンサンブル・ベルリン(1987.6.16-19録音)
エドワルド・ジェンコフスキー(第1ヴァイオリン)
ハインツ=ヘニング・ペルシェル(第2ヴァイオリン)
土屋邦雄(ヴィオラ)
エーバーハルト・フィンケ(第1チェロ)
ネラ・ハンキンス(第2チェロ)

チェロ奏者でもあったボッケリーニのクインテットの特長は、通常カルテットにヴィオラを追加するところにチェロを加えるケースが多いところ。この音盤に収められている楽曲はいずれもヴァイオリン2挺、ヴィオラ1挺、そしてチェロ2挺という編成。それによって重厚で渋みのある音色が支配することになる。

特に、作品37-1(51-2), G.377の構成は珍しい。フィナーレに第1楽章が短縮されて反復される。つまり2つの「グラーヴェ―アレグロ」に「アンダンティーノ」と「メヌエット」が挟まれるというもの。良い曲だ。嬉しくて繰り返し聴いた。
ちなみに、有名なメヌエットを含むホ長調G.275(1771年作)も全曲は初めて聴いたけれど、第2楽章にソナタ形式が用いられており、この楽章がまた明るくて素敵。
ボッケリーニの音楽は人を前向きにする。


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