ヴェルヴェット・アンダーグラウンド再び!

ここのところ感じること。
音楽評論家という職業はれっきとして存在するが、音楽に良いも悪いもなく、ましてや演奏家が精魂込めて演奏した一世一代のパフォーマンスを、演奏者その人の体調や会場の状態などなど不確定要素をよく知りもせずに批評することがいかにナンセンスか。人間ゆえ出来不出来があって当然、そして天才肌の人もいれば努力の人もいる。それを同じ線上で並べて「ああだ、こうだ」とのたまうのは偉そう以外の何ものでもないと。もちろん自身がそれ以上の演奏ができるならその人は何を言っても構わないと思うが、そうでないならそれぞれのパフォーマンスを謙虚に有難く聴くべしと。
ゆえに、最近は必ず先入観を捨て、虚心坦懐に耳をそばだて一生懸命にその人を感じようと心掛けている。音楽が楽譜という記号を基にした再現芸術とするなら、どんな表現があっても良し。ジャズやロックなどのポピュラー音楽など見てもわかるように即興だってあり。演奏する側が感じたように好きなように聴衆に向けて音楽を奏でているならそのすべては「正しい音楽」。あとは本当に聴く側の好き嫌い、それだけだと思う。

音盤でもコンサートでも毎日様々な音楽を聴かせていただく。ほとんど聴くことがなくなった音盤にせよ、その演奏解釈を愛する人がひとりでもいるならそのすべてに価値がある。だから、今僕はすべての音楽に対してニュートラルな状態で聴き、捉えようと努力する。

渋谷に所用で行った帰りにタワーレコードに寄った。早速ショスタコーヴィチの第4交響曲の2台ピアノ編曲版を仕入れようとしたが、同じく珍しい音盤を発見して、とりあえずそちらを優先。ショスタコーヴィチの第5交響曲の作曲者自身による2台ピアノ編曲版が収録された1枚。いや、驚きである。素晴らしい(ショスタコーヴィチは自身の交響的作品をピアノ・アレンジして友人たちに頻繁に気軽に披露していたのだと。素敵だ)。この音盤についてはもう少し繰り返し聴いた上で近いうちに採り上げようと思う。

ということで、今夜はヴェルヴェット・アンダーグラウンド再び。
ヴェルヴェッツが1993年に一時的に再結成したときのパリでのライブ盤。このテンション、このエネルギー、どこをどう切り取ってもゾクゾク。それこそショスタコーヴィチの音楽を実演で聴いたときの背筋が凍りつくほどの感動と同質のもの。そうか、ショスタコーヴィチの音楽は土臭いロック音楽と相似形だ(20世紀後半のロック音楽が産業化してゆく過程の中ショスタコーヴィチは自身の音楽を創造していたわけだし。互いに影響を与えていないというと嘘になるように僕は思う)。

The Velvet Underground:Live MCMXCIII(1993.6.15-17Live)

Personnel
Lou Reed(guitar, vocals)
John Cale(bass, keyboards, viola, vocals)
Moureen Tucker(drums, vocals)
Sterling Morrison(guitar, bass)

ルー・リードがショスタコーヴィチを意識していたとは到底思えないが、そしてショスタコーヴィチがヴェルヴェッツを知っていたかどうかは知る由もないが、少なくともリードの類稀な高踏的芸術的センスはクラシック音楽の作曲家と同等の、いやそれ以上のものではないかとアルバムを聴いていて思う。音盤からでも如実に伝わる気が狂いそうなエネルギー放射性!!嗚呼、”Black Angel’s Death Song”(ケイルのヴィオラ・プレイよ!)、嗚呼、”Heroin”、おお、”Femme Fatale”(ファーストではNicoが歌っていたのをCaleがヴォーカルをとっている!)・・・、彼らはやっぱり只者でない。


2 COMMENTS

岡本 浩和

>雅之様
こんばんは。
何と!ローリー・アンダーソンですか!!よもや雅之さんからこういう音盤が出てくるとは想像だにしておりませんでした。
残念ながら僕は聴いたことがありません。
ぜひご感想を。

長い間僕はルーはゲイだと思ってましたが、バーンスタイン同様バイ・セクシャルだってことですよね?

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