ロマノフ王朝最後の輝き

ショスタコーヴィチ漬けの生活は楽しい(笑)。
聴けば聴くほど、実演に触れれば触れるほど稀代の音楽家の奥深さにますます脱帽するばかり。神を否定したソビエト連邦の生んだ天才の源流。ロマノフ王朝時代の、高貴で愁える音楽家たちの作品を時に耳にしたくなる。雨降り、真冬に戻ったような気候の中で独りぽつねんと彼らのピアノ音楽を聴く。そう、こういう直截的な悲しみとも怒りともとれるような音楽にこそ「ロシアらしさ」がある。僕はわからないが、おそらく演奏者泣かせなものばかりだろう。大男大女がピアノという機械を相手に奏でるロシアン・メロディには「涙」がついて回る。
ショスタコーヴィチはピアニストでもあった。技術も表現力も超一流。
それこそ「レニングラード」シンフォニーや第8交響曲の2台ピアノ・アレンジなどあったら(あるのか?!)さぞかし面白いだろうに(確か第4交響曲には作曲者自らによる編曲版があったと記憶する。未聴だが)。

グラズノフ:交響曲第6番ハ短調作品58(1897)(ラフマニノフ編曲)
ラフマニノフ:幻想曲「岩」作品7(1893)
スクリャービン:交響曲第4番作品54「法悦の詩」(1907)(リーアン・コーナス編曲)
ダグ・アシャツ、永井幸枝(ピアノ)

2台ピアノ編曲版による玄人好みのロシアン名曲集。どの瞬間もそもそもピアノのために書き下ろされた音楽なのではないかと思うほど滑らかで自然。
スクリャービンから聴く。さすがに色彩という意味での恍惚の表情は管弦楽の方が上。しかしながら、人間らしいエクスタシーの極致は2台のピアノという単色によってより一層真実味を帯びる。内面にずしりと重く圧し掛かる調べ。スクリャービンは単にエロを追究したのではない。あくまでこれは神との交信なのである。そんなことを感じたのはこの音盤によってのみ。
そして、グラズノフの第6交響曲。決してメジャーとは言えない作品だが、ラフマニノフの超絶アレンジによって逆に華々しさを獲得する。第2楽章の変奏曲などは美しい旋律の宝庫(可憐で愛らしい主題が魅力。ピアノであるがゆえの美しさよ)。もっと世間に知られるべき名曲なり。ラフマニノフの「岩」については言うことなし。

さて、ついに今週末はオーケストラ・ダスビダーニャによる「レニングラード」交響曲ほか。今から興奮気味・・・(笑)

黄金色の雨雲が一夜を明かした
巨人のような断崖の懐で
~ミハイル・レールモントフ

2 COMMENTS

雅之

こんばんは。

>(確か第4交響曲には作曲者自らによる編曲版があったと記憶する。未聴だが)。

これですね。
交響曲第4番[作曲者による2台ピアノ編曲版] ハイルディノフ、ストーン(p)
http://www.hmv.co.jp/product/detail/1095374

必聴盤として強くオススメしたいです。

逆にご紹介の盤は未聴です。ぜひ聴いてみたいです。

>さて、ついに今週末はオーケストラ・ダスビダーニャによる「レニングラード」交響曲ほか。今から興奮気味

まったくです(笑)。

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