モーツァルトに浸る

梅雨時はいつの時も鬱陶しさが倍増するが、今年の雨は「これはこれで良い」と感じさせる不思議な雨。今日などはとても6月中旬とは思えない気温なのだが、少し寒さを感じるくらいの気候がまた素敵。特に夜更けに独り静かに音楽を聴くことを趣味にしている人種にとってこんな日は願ってもない、とっておきの「音楽鑑賞日」。
先日弁護士のW先生からトーマス・トロッターの演奏する珍しいモーツァルトのオルガン作品全集をお借りした。まだ1度しか耳にしていないが初期のものから晩年のものまでモーツァルトにオルガンのための美しい作品がこんなにもあったんだと少し驚いた。そういえば、棚の奥にほとんど聴かないまま眠っているパイヤールとアランによる「教会ソナタ」の音盤もあったはずだからこの際あわせて聴いてみようとこちらも本当に久しぶりに耳にした。ザルツブルク時代の可憐な佳作たち。音楽を決して前向きに嗜まなかった大司教コロレドの依頼によりモーツァルトが書き溜めた17ものソナタはいずれも宗教音楽とは思えない愉悦感と軽快さに満ちる(まるで大司教にこれでもかと反発せんばかりの世俗性とでも言おうか!)。
この辺りの音楽はもう少しゆっくりと攻めてからいずれ感想なりを記事にしてみよう・・・。

乾いた冷たい空気を感じながらもうひとつ久しぶりのモーツァルトを聴く。アルゲリッチとラビノヴィチが20年ほど前に録音した2台乃至は4手のピアノのための作品集。僕はK.521のフィナーレ(K.330のフィナーレにそっくり!)がどういうわけか特別に好きで昔から繰り返し聴いてきたが、この作品集の中でもこのソナタは出色(「のだめ」で一躍有名になったK.448も素晴らしいけれど)。明るさの中に得も言われぬ底知れぬ寂しさが頻出する、いかにもモーツァルトという音楽だが、それもそのはず。1787年5月29日の完成というのだから父レオポルトが亡くなったまさに翌日(!)に作曲者の手を離れたことになる。

モーツァルト:
・2台のピアノのためのソナタニ長調K.448(375a)
・アンダンテと5つの変奏曲ト長調K.501(4手のための)
・4手のためのピアノ・ソナタハ長調K.521
・4手のためのピアノ・ソナタニ長調K.381(123a)
マルタ・アルゲリッチ、アレクサンドル・ラビノヴィチ(ピアノ)(1993.12録音)

ザルツブルク時代(1772)のK.381、楽都ウィーンに出て間もない頃(1781)のK.448、そして絶頂時(1786)のK.501と一気に絶望の淵に突き落とされてゆく、その出鼻のK.521と様々な時期のアマデウスの作品が収録されているところがミソ。いつどんな時もモーツァルトの音楽に変わりはない。純粋で無垢で、可憐で美しく。

アルゲリッチもラビノヴィチも相当に力が抜け、とにかくモーツァルトを愉しんでいる感じ。ついにこの2人のデュオを実演で聴かなかったことが悔やまれる。
さて、しばらくはモーツァルトに浸ろうか・・・。

3 COMMENTS

雅之

おはようございます。

2台のピアノといえば、私は、近々行くコンサートです。

2012年6月14日(木)しらかわホール
寺田悦子&渡邉規久雄
デュオ・ピアノ・リサイタル
http://www.etsukoterada.com/2012/04/2.html

・・・・・・寺田は演奏に当たって作曲者自身が指揮した1960年の録音を参考にし、「テンポも原曲の指示に近いものをめざし、大音量のオーケストラでは埋もれてしまいがちな緻密な声部どうしの対話、ピアノならではの透明な音色・・・・・・」を心掛けたという。・・・・・・(レコ芸 2012年6月号 111頁 新譜月評より)
とても楽しみです。

なお、モーツァルトのオルガン曲については詳しくありませんが、私はこのごろ時々、メンデルスゾーンのオルガン曲のほうに親しんでいます。

メンデルスゾーン・マスターワークス(30CD)
http://www.hmv.co.jp/product/detail/2872242
Disc 27:
・オルガン・ソナタ 第1番 Op.65-1
・トリオ ヘ長調(1844)
・オスティナート ハ短調(1823)
・オルガン・ソナタ 第2番 Op.65-2
・プレリュード ハ短調(1841)
・オルガン・ソナタ 第3番 Op.65-3
・フーガ ニ長調(1843)
・ポストリュード ニ長調(1831)
 ヨハネス・ブライヒャー(サン・ピエール=オ=リアン・ド・ビュル教会、歴史的モーザー・オルガン)
 録音:1999年7月(デジタル録音)

Disc 28:
・オルガン・ソナタ 第4番 Op.65-4
・主題と変奏 ニ長調(1844)
・オルガン・ソナタ 第5番 Op.65-5
・コラール前奏曲『全能の神のみわざは大いなるかな』
・アレグロ、コラールとフーガ ニ短調(1844)
・オルガン・ソナタ 第6番 Op.65-6
 ヨハネス・ブライヒャー(サン・ピエール=オ=リアン・ド・ビュル教会、歴史的モーザー・オルガン)
 録音:1999年7月(デジタル録音)

Disc 29:
・アレグロ 変ロ長調(1844)
・フーガ/トリオ ニ短調(1820)
・フーガ/トリオ ト短調(1820)
・フーガ/トリオ ニ短調(1820)
・行進曲風アンダンテ 変ロ長調(1845)
・アンダンテ・コン・モルト ト短調(1833)
・前奏曲 二短調(1820)
・幻想曲 ト短調(1823)
・フーガ イ長調(1828)
・アンダンテ ニ長調(1823)
・フーガ ホ短調(1839)
・フーガ ヘ短調(1839)
・アレグロ・モデラート・マエストーソ ハ長調
・3つの前奏曲とフーガOp.37
 ヨハネス・ブライヒャー(サン・ピエール=オ=リアン・ド・ビュル教会、歴史的モーザー・オルガン)
 録音:1999年7月(デジタル録音)

モーツァルトもメンデルスゾーンも、暑い夏に聴くにはいいですよね。

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岡本 浩和

>雅之様
おはようございます。
いや、素敵なプログラムですね。
羨ましい限りです。
その昔愛知とし子の*AK*the piano duoで「ハルサイ」とラフマニノフの1番は聴いておりますが、ドビュッシーの「海」なんかも良さそうですね。久しぶりに2台ピアノ版「ハルサイ」聴いてみたいです。
是非ご感想を!!

ところで、メンデルスゾーンのオルガン曲。こちらは僕もほとんど聴いたことがないので興味深いです。
夏至近くになると俄然メンデルスゾーンが聴きたくなりますね。
ありがとうございます。

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