フランクの交響曲

franck_bernstein.jpg午前、旧知のとある企業から、組織において「共通の意識やルールをもつこと」の重要性を学べるコンテンツ案が欲しいという依頼を受けた。要はチームビルディングに関わるポイントを簡単に短時間で気づけるプログラムはないかという問い合わせである。

あるにはある。が、短時間でとなるとこれがまた難しい。頭を捻り、2案ほど引っ張り出したが、果たしてどうだろう・・・。

夜、こちらもかつての教え子から進路の相談。業務のあまりの多忙さにプチ鬱状態なのだと。いろいろと聴いてみると、ひとつは「仕事を完璧にこなせない自分自身への否定感」が要因のひとつになっているよう。責任感をもって仕事に臨むことは大事だが、ひとつのもれなく完璧にできる人などいないわけだから、無理せず、たまには「まぁいっか」と思えるようになりなさいとアドバイス。それに、ここ1年近く彼氏いない状態のようなので、恋愛のスイッチを入れることの重要性もあわせて説いておいた(笑)。

仕事とプライベートのバランスをしっかりとること、そう「恋すること」こそが活力源だと僕は思うのです・・・。

少々、聴き比べを。
80年代のバーンスタインに恋していたことは昨日も書いた。その流れで、今日はフランクを聴いた。

フランク:交響曲ニ短調
レナード・バーンスタイン指揮フランス国立管弦楽団

この暗鬱な重苦しい雰囲気の交響曲を初めて聴いたのは、高校生の頃、フルトヴェングラー盤で。いかにもドイツ風の表現で、僕に馴染みやすそうな曲調のはずが一向に好きになれなかった。その僕にこの音楽の素晴らしさを教えてくれたのがバーンスタイン。ヨーロッパの「しっとりさ」に、アメリカのからっとした空気が入り混じった不思議な感覚に襲われる演奏だった。指揮者とオーケストラの「共感度」の高い演奏の印象は、今聴いても変わらない。

franck_mengelberg.jpgいつだったか、オーパス蔵のいくつかの録音が¥1,050で売りに出されていた際、メンゲルベルクが棒を振ったフランクが収録されているものを購入した。1940年の録音とは思えない生々しさ。まさにメンゲルベルクという弦のしっとりとしたとろけるようなポルタメント奏法が脳みそをくすぐる。思わず「恋愛のスイッチ」が入りそうな演奏・・・。

フランク:交響曲ニ短調
ウィレム・メンゲルベルク指揮アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団

全く違う音楽に聴こえる、それくらいに解釈は違うが、いずれも忘れ難い。

それにしても「旋律の魅力」といい「各楽章の有機的なつながり」といい、フランクのシンフォニーというのは一度はまったら病みつきになるような要素でいっぱい。久しぶりにじっくり聴いてみてあらためてそう思った。

4 COMMENTS

ふみ

こんばんは。
以前から講座にもプチ押しだったフランクの交響曲を取り上げて頂いて思わず反応してしまいました。
岡本さんはフルヴェンの演奏ではいまいち開眼されなかったんですね。少し意外です。僕は岡本さんほどのフルヴェンファンではないですがフランクの交響曲の良さを教えてくれたのはフルヴェンでした。逆にご紹介のバーンスタイン盤はぴんっと来なかったです。人それぞれ、感覚が違うものですね。
仕事に対する責任感は日本人は本当に人一倍持ってるように思います。これで日本が一年中寒い国だったら鬱病患者は増えていることでしょうね。

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雅之

おはようございます。
フランクの交響曲、昨夜は岡本さんのブログを読んでいないのですが、たまたまデユトワ&MSO演奏による同曲のCDを聴いていたので、まさにシンクロニシティといった感じです。バーンスタインやメンゲルベルクの演奏も好きです。フルトヴェングラーは「一向に好きになれなかった」とのことですが、音楽で極めて大切な要素である「音色」があれほど伝わらない古い録音で演奏を批判することには無理があるように思います。
なお、私の一押しはモントゥー&シカゴ響による録音です。
http://www.hmv.co.jp/product/detail/1491432
ところで先日、近くの古本屋で平林直哉氏の「盤鬼、クラシック100盤勝負!」(2006年発行 青弓社)
http://www.amazon.co.jp/%E7%9B%A4%E9%AC%BC%E3%80%81%E3%82%AF%E3%83%A9%E3%82%B7%E3%83%83%E3%82%AF100%E7%9B%A4%E5%8B%9D%E8%B2%A0-%E2%80%95SACD50%E9%81%B8%E4%BB%98%E3%81%8D-%E5%B9%B3%E6%9E%97-%E7%9B%B4%E5%93%89/dp/4787272063/ref=sr_1_1?ie=UTF8&s=books&qid=1282859860&sr=1-1
という本を見つけ買って読んだのですが、「我が意を得たり」という文章に出会いました。
コラム《ノリントンの言葉》
 最近、ロジャー・ノリントン指揮、SWR(南西ドイツ放送協会)所属のシュトゥットガルト放送交響楽団によるマーラーの『交響曲第1番「巨人」』(ヘンスラー/輸入盤 93.137)が発売された。これはそれまでノリントンが実践しているピリオド・アプローチによるもので、これだけ整理された見通しのいい響きのマーラーは珍しいと思う。この解説にノリントンが寄稿していて(このCDは輸入盤だが、日本語訳が最初から印刷されていて見やすい)、そこで彼は以下のように述べている。
 1911年にマーラーが亡くなった頃は、フリッツ・クライスラーが独奏ヴァイオリンの分野でヴィヴラートを多用し、人気を集めている頃だった。しかしこうした奏法は、ドイツやオーストリアの奏者からは〈カフェのヴィヴラート〉と軽視され、その後20年間はオーケストラの奏法としては見向きもされなかった。ウィーン・フィルの録音でヴィヴラートが確認できるのは、やっと1940年代になってからのことである。1938年に、ブルーノ・ワルターが指揮したマーラーの第9交響曲のライヴ録音でさえ、まだ奏者たちが純な音を持っていることを聞きとることができる。この時のウィーン・フィルのリーダーは、既に50年間その地位にあったアーノルド・ロゼー、マーラーの義理の弟である。(以上、吉田光司訳)
 ノリントンは古いオーケストラ録音をちゃんと聴いているのだろうか。たとえば、ウィーン・フィルの録音は1920年代から残されているが、20年代から30年代にかけて録音されたフランツ・シャルク、ブルーノ・ワルターらの録音にははっきりヴィヴラートが聞き取れる。ベルリンも同じである。1913年、あのアルトゥール・ニキシュがベルリン・フィルを指揮したベートーヴェンの『運命』にも同様にヴィヴラートが確認できる。ベルリン国立歌劇場管弦楽団では20年代におこなわれたオットー・クレンペラー、オスカー・フリート、ハンス・プフィッツナーなどの録音がたくさん残されているが、これらにもすべてヴィヴラートが確認できる。それに、アーノルド・ロゼーの録音もある。これを聴くと、ロゼーも今日の奏者たちと同様にヴィヴラートをかけているのがわかる。そのほか、20年代から30年代にかけてのロンドン交響楽団、ハレ管弦楽団、ニューヨーク・フィルハーモニー交響楽団などの録音を聴いても、どれもヴィヴラートをかけて演奏している(以上にあげた演奏は、多かれ少なかれポルタメントも多用している)。
 また、ノリントンは彼がこのたび出したCDのように、マーラーもヴィヴラートを使用せずに指揮していたとも記している。だが、もしそうであるならば、マーラーの弟子だったワルターやウィレム・メンゲルベルク(メンゲルベルクとマーラーは、一晩でマーラーの『交響曲第4番』を交替で指揮するという演奏会を開いたこともある)にもその影響はあってよさそうである。しかし、この二人の指揮者がそうだったという記述や録音を、私は知らない。また、同じくマーラーに「影のように寄り添っていた」指揮者オスカー・フリートもいるが、そのフリートの録音にもそのようなものはない。若きクレンペラーもマーラーと交友をもっていたことは知られている。しかし、そのクレンペラーからも、ノン・ヴィヴラートをにおわせるような事実はないように思う。このノリントンの言葉、みなさんはどのようにお考えだろうか?(134~137ページ)
まったく平林氏の主張には同感です。
ピリオド・アプローチが演奏の個人の趣味・好みの領域であることには全然異論はないし、ノン・ヴィヴラート、ノン・ポルタメント奏法を聴くことにより新しい発見を得ることも多々あります。
ただし、彼らが往々にして歴史的正統性を主張するから、私も噴飯ものだと感じているのです。

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岡本 浩和

>ふみ君
久しぶりです。
そう、あの頃は若かったというのもあるかもしれないけど、いまひとつピンと来なくてね。当時は何でもかんでもフルトヴェングラーが一番だという時だったから自分的にも「意外」でした。
人それぞれだよねぇ。

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岡本 浩和

>雅之様
こんにちわ。
お、シンクロですね!
>音楽で極めて大切な要素である「音色」があれほど伝わらない古い録音で演奏を批判することには無理がある
おっしゃるとおりですね。とはいえ、先日取り上げた47年の第5などは古い音の塊の中から猛烈なエネルギーが感じられますから、なかなか判断が難しいです。ちなみに、イチオシのモントゥー&シカゴは未聴です。
ところで、ご紹介の平林氏のノリントンについてのコラム、面白く読ませていただきました。僕も全く同感です。どんなものでも「歴史的正統性」なんていうのはありませんよね・・・。

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