セザンヌ展に行った・・・目から鱗が落ちたような・・・

国立新美術館で開催されている「セザンヌ―パリとプロヴァンス」の無料観覧券が手元にあり、しかも本日が最終日だったので曇天の中、雨に遭遇するのを気にしながら少し気分転換に自転車で外出した。
西洋クラシック音楽には相当入れ込んできた僕も、どういうわけか絵画にはほとんど興味を持たず、どちらかというと苦手意識を持ちつつ今日に至る。文学も美術も、もちろん音楽も文化という分野では当然地続きであるゆえいずれはきちんと勉強せねば、いや、したいとずっと思っていたが、なかなか手が回らず。よくよく考えると、芸術、もっと広げて文化の根底には宗教、限定すればキリスト教精神が切っても切れず、単なる知識だけでなく、それへの大いなる信仰心がないと真の意味では理解できないものなんじゃないのか、その意味では日本人には本質的に理解不能なのじゃないかという考えにも長い間支配され、絵画に関しては特にその傾向が強いのではという偏見(?)と相まって、どうにも重い腰が上がらなかった(実際、中世やルネサンス期の宗教画の類を観たところで、その絵を前に涙を流す西洋人の皆様のようには「感じることができない」自分を腹立たしく思ったこともある)。まぁ、音楽だって教会から派生している以上絵画と同じことが言えるのに、こちらはすっかりはまりこんでほとんどヲタク状態なわけだから、キリスト教云々は実はあまり関係ないのかも・・・(笑)。
とにかくどんなことでも「わかるまでしつこく」だ。必ず腑に落ちる時が来るだろう。

そんなことを考えているうち気がついた。そういえば吉田秀和さんの全集(全24巻)の内、主にセザンヌほかの美術論を収録した17巻と18巻は僕の手元にない。これらの書籍を順番に読み揃えた時にもどうやら件の巻は飛ばしていたようで、その意味では「美術」について相当に劣等感を持っていたということ。

そんな僕がぶらりと国立新美術館の「セザンヌ展」である。ちょうど1時間ほどかけて中を回った。正直驚いた。
ポール・セザンヌについての知識ゼロでの回遊にも関わらず、西洋絵画門外漢の僕が意外に・・・感じた。初期から印象派の影響を受け、そして独自の筆致で自然や静物を描く晩年に至るまでの諸々の絵を観ながら、年齢を重ねるにつれ画家の生命力がいよいよ高まっているように僕には思えた。理由はわからないが、今にも動き出し、飛び出してきそうなリンゴやオレンジや・・・。

あ、これはもう少し勉強してみよう、と・・・。どうやら彼はリヒャルト・ワーグナーに心酔していたようだし(あの頃のヨーロッパはほとんどワーグナーの芸術に席巻されていたわけだから当然といえば当然だけれど)、「タンホイザー」にインスピレーションを受けて描いた絵もあるくらいだから、音楽とのつながりも含めて深掘りしてゆく(絵画技術という点ではドラクロワの影響を受けているということだから、ショパンやベルリオーズともつながる)といろいろと発見がありそう。

ワーグナー:歌劇「ローエングリン」
カール・リッダーブッシュ(ハインリヒ・デア・フォーグラー)
ジェイムス・キング(ローエングリン)
グンドゥラ・ヤノヴィッツ(エルザ・フォン・ブラバント)
トーマス・スチュワート(フリードリヒ・フォン・テルラムント伯爵)
グィネス・ジョーンズ(オルトルート)
ゲルト・ニーンシュテット(王の伝令)ほか
ラファエル・クーベリック指揮バイエルン放送交響楽団&合唱団(1971.4録音)

バイエルン国王ルートヴィヒ二世もアドルフ・ヒトラーも打ちのめされた「ローエングリン」は長尺のオペラだが、どの瞬間も本当に美しい。当然セザンヌも打ちのめされたとみる。今日のところは第3幕を聴いた後第1幕を。カラヤンの洗練された静的な演奏に対して僕はクーベリックの演奏に泥臭くて動的な印象を持つ。真のワーグナー・マニアが好みそうな・・・、多分、セザンヌが聴いたら・・・、喜んだだろう、そんな演奏。

ついでに吉田秀和さんの全集18巻を買い求めた。まずはセザンヌについてここから勉強するか・・・(適切かな?)。


4 COMMENTS

雅之

こんばんは。

>まずはセザンヌについてここから勉強するか・・・(適切かな?)。

もう一冊、最近図書館で借りて読んだばかりの本を、超オススメしましょう。

「人生が楽しくなる絵画の見かた」大橋巨泉(著) ダイヤモンド社
http://kyosen-art.com/430

人間不在のセザンヌの作品にボクは感動したことがない!

セザンヌは絵が下手!
http://kyosen-art.com/497

言ってくれるじゃないか!! 巨泉さん。
でも、批評に筋が通っていて大変に説得力があり、私は大いに勉強と刺激になりました。

因みに、私はセザンヌ、好きなほうです。
人間不在の絵画に、あまり不都合を感じない質なので・・・。

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岡本 浩和

>雅之様
こんばんは。

大橋巨泉という人はやっぱり凄いですね。畏れ入ります。
これは読んでみようと思います。
ありがとうございます。
しかし、セザンヌは絵が下手なんですか!(苦笑)

人間不在と言いますが、僕には明らかに人間らしさが垣間見えたのですが。
それが本日クーベリックの「ローエングリン」を推した理由でもあります。

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ふみ

ローエングリンと言えば、やはり何と言ってもカイルベルトが一番に思い浮かびます。

ところで、セザンヌ、僕はあまり…です(笑)あくまで感覚的ですが。やはりカンディンスキーがたまらないです、セザンヌと方向性は違えど。

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