モーツァルトに耽る

何だか今日はこのまま夏をすっ飛ばして秋になるんじゃないかと感じるような気候だった。
特に午前中。そう考えると世の中いろんな意味で黄昏時なのかなとも思った。特に悲観的な意味ではないけれど、やっぱり再生の一歩を踏み出しているんだろうと。

昨日はモーツァルトに浸った。今夜はモーツァルトに耽る。またもや最初の本格的なジングシュピール(厳密には「バスティアンとバスティアンヌ」が初)である「後宮からの逃走」を(半年ほど前にも採り上げたが)。僕は昔から「魔笛」を何より愛するが、その「魔笛」の先取りがこのオペラであり、モーツァルトがウィーンに移り住んで間もない時期の作品ですでに完成していたんだということをあらためて確認し、やっぱり感動した。

初演は1782年7月16日、ウィーンのブルク劇場にて。そして、それから数週間後の8月4日、彼は相思相愛のコンスタンツェ・ウェーバーと父の反対を押し切って結婚式を挙げる。つまり、幸福の絶頂にあったその感情と、駆け落ちに近い形での挙式に対する後ろめたさが錯綜しながらもハ長調という主調が示すように「自由になった喜び」が充溢している。

モーツァルト:歌劇「後宮からの逃走」K.384
オットー・メリーズ(セリム・パシャ)
アーリーン・オジェー(コンスタンツェ)
レリ・グリスト(ブロンデ)
ペーター・シュライヤー(ベルモンテ)
ハロルド・ノイキルヒ(ペドリロ)
クルト・モル(オスミン)
ライプツィヒ放送合唱団
カール・ベーム指揮シュターツカペレ・ドレスデン(1973.9録音)

ベームが老いぼれる(?笑)前の、まだまだ颯爽とした演奏を聴かせてくれていた頃の記録。
ベームのモーツァルトは相変わらず素敵だ。
例えば、第2幕第15番ベルモンテがコンスタンツェとの再会の至福を歌い上げるアリア「喜びの涙が流れる時」は、決して有名な歌ではないけれど、ここには「アイネ・クライネ」が木魂し、いかにもモーツァルトらしい優美さの内に大いなる「自信」が感じられる。そして、フィナーレの第16番四重唱に!!

モーツァルトのピアノ曲と歌劇には一日中浸っていられる、そんな魔力がある。歌劇などは本当は映像で観るべきだが、耳だけを頼りに「音楽」に耽るのは望外の悦び。


4 COMMENTS

雅之

おはようございます。

>歌劇などは本当は映像で観るべきだが、耳だけを頼りに「音楽」に耽るのは望外の悦び。

おっしゃるとおりです。

そして、そういう習慣を続けているだけでは、数々のオペラの実演に接し目が肥えたご婦人方同士の会話には、絶対に付いていけないもどかしさと虚しさがあります。

>彼は相思相愛のコンスタンツェ・ウェーバーと父の反対を押し切って結婚式を挙げる。

モーツァルトとコンスタンツェの親戚ウェーバーとの関係の真実も気になるところです。

>ベームが老いぼれる(?笑)前

こういう一言で、ベームに対する愛が足りないことがよく理解できます(笑)。言い訳しても無駄ですよ(笑)。

でも、やっぱベームも真価はライヴでしょね。

※ベームを愛する人だけにオススメ(笑)

ウェーバー:歌劇『魔弾の射手』全曲 ベーム&ウィーン国立歌劇場(2CD)
録音時期:1972年5月28日
録音場所:ウィーン国立歌劇場(ライヴ)
http://www.hmv.co.jp/product/detail/2632410

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岡本 浩和

>雅之様
おはようございます。

>そういう習慣を続けているだけでは、数々のオペラの実演に接し目が肥えたご婦人方同士の会話には、絶対に付いていけないもどかしさと虚しさがあります。

そうですね。バランスですね。映像で楽しみ、そして音だけで楽しみ・・・。

>ウェーバーとの関係の真実も気になるところです。

僕はウェーバーについては疎くて一からの勉強になりますが、面白そうですね。しかしながら、ウェーバー関係の伝記類ってあまり世の中にでてなさそうですね。

>ベームに対する愛が足りないことがよく理解できます

言い訳はしませんが、最後の来日を聴かれた雅之さんへの嫉妬からくる挑戦的な言葉でした(笑)
お薦めの「魔弾の射手」は未聴です。もちろん僕はベームを愛しておりますので聴いてみたいと思います。
ありがとうございます。

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畑山千恵子

この演奏、国内盤で出てほしいものです。「イドメネオ」、「皇帝ティトゥスの慈悲」も出てほしいものです。ことに、「イドメネオ」、「ティトゥス」は、ベームのモーツァルトのオペラとしても重要です。ぜひ、国内盤が出ることを期待します。

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岡本 浩和

>畑山千恵子様
こんにちは。
ご紹介の両盤とも名演ですね。
偶然ですが、今朝からベームによる「皇帝ティトゥスの慈悲」を聴いております。
祝典的作品ですが、最晩年のモーツァルトの透明感があちこちに感じられます。

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