ダウランドのリュート歌曲集第1巻を聴いて思ふ

dowland_complete_lute_songs音楽の源泉は信仰だ。そして、人間の平和も争いも、その原因となるのは古来その多くが信仰。どこの宗教、宗派に属するかによって人々は運命が定められた。

カトリック教徒であったがために欧州各国をいわば放浪したジョン・ダウランドの奇蹟。それこそ、あらゆる地域のイディオムを吸収し、自身の音楽にその空気まで取り込んだがゆえの普遍性。彼の音楽は空間を超える。

スティングがリュートを弾きつつ歌った録音を聴けば、ダウランドの音楽が時間すらも超えることがわかる。ダウランドの歌は、恋の歌であり、失恋の歌である。その内容は、400年の時を経た現代に生み出される歌と何ら変わらない。シンプルだが深い味わいを持つ旋律、音楽にいつも僕たちは涙する。

1597年に出版されたリュート歌曲集第1巻は、4声の”Unquiet thoughts(騒ぎ立つ思いよ)”によって幕を開ける。不穏な詩に反し、交錯するノン・ヴィブラートのハーモニーの美しさに心が反応する。

騒ぎ立つ思いよ、心苛むその残虐を控えてくれ
打ち沈む胸のうちに その刃をおさめてくれ
そしておまえ この口からこの胸の思いを
貨幣のごとく鋳造し言葉にしてしまうわが舌よ
静まれ そのわざを用いること もはや許さぬ
さもなくばその舌の根 断ち切ってみせよう

ダウランド:リュート歌曲集第1巻(1597)
コンソート・オブ・ミュージック
アントニー・ルーリー(ディレクター、リュート)
エマ・カークビー(ソプラノ)
グレンダ・シンプソン(ソプラノ)
ジョン・ヨーク・スキナー(カウンターテノール)
マーティン・ヒル(テノール)
デイヴィッド・トーマス(バス)
キャサリン・マッキントッシュ(トレブル・ヴィオール)
ポリー・ウォーターフィールド(テノール・ヴィオール)
イアン・ゲイミー(テノール・ヴィオール)
トレヴァー・ジョーンズ(バス・ヴィオール)(1976.1録音)

本曲集において、聴きどころはやっぱり若きエマ・カークビーの歌唱。
何という中性的でありながら、しかし、直接的な感情の発露を伴う、ひたすら音楽しか感じさせない音楽が鳴り響く。

例えば第7曲”Dear, if you change(いとしい人よ、もしきみが)”での、カークビーの沈潜しゆくあまりに切ないソプラノ・ソロに思わず胸が締め付けられる。なるほど、歌詞は男性から発せられる恋人への思いだ。それをカークビーが歌うとこれほどに魂に響くのか・・・。
続く、3本のヴィオールとリュートによる哀しげな前奏を持つ第8曲”Burst forth, my tears(噴きこぼれよ、わが涙)”の、静かなる慟哭!!

噴きこぼれよ わが涙 わが悲しみをいやまして駆り立て
驕慢な「愛」が与える苦痛をさらけだすがいい
心やさしい子羊らよ「愛」のむごさに泣け
心悩ます「物思い」に自由を縛られて
ああ 嘆くぼくの姿を見て 嘆くがいい わが羊たちよ

古の音楽に身も心も焦がされ、そして癒される。

※歌詞はすべてCDボックス付録の解説書(金澤正剛訳)から抜粋。
2013年9月8日記事:「ダウランドのリュート歌曲集第2巻を聴いて思ふ」

 

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