Cheap Trick、スルタノフ!

勉強がてら東放学園の公開「ロック講座」に参加した。題して「ロック史~リック・ニールセン、ロック人生、30年を語る~」というもの。QueenやKissなどと同様70年代に日本がブームの火付け役となり、その後本国アメリカでもメジャーになった伝説のバンドCheap Trickのいわずと知れたギタリスト。合計90分間の公開講座で当然ながら演奏はない。しかしながら、古き良き70年代ロックの王道を歩み続けてきたバンドの中心メンバーを招いての授業だけに一般のオールド・ファンも交えての楽しい会。ともかくRick Nielsenは典型的なアメリカ人らしく妙に明るい。インタビュー形式で進められた講座の内容は表層的なものに過ぎないが、20歳前後の若い生徒に混じりながら、中年のおじさん、おばさんが何人もパイプ椅子に腰掛け、興奮して聞いている様を見ると、やはりジャンルを問わず音楽が人間に与える影響の大きさを実感する。Cheap Trickに関してはそれほど僕も詳しくないので彼らの音楽に関しては詳述を避けるが、どうやら78年にリリースされた「At Budokan」が爆発的にヒットし、武道館を世界的に有名にしたようだ。今日の授業でもRick本人が語っていたが、それ以前にはThe BeatlesやDeep Purple、Bob Dylanなども武道館で来日ライブを行い、音源もリリースされていたもののCheap Trickによって初めて武道館が来日アーティストにとっての憧れの殿堂となったということだ。どうやらその事実が彼らにしてみれば自慢らしい。

アレクセイ・スルタノフという旧ソ連出身のすごいピアニストがいる。彼は惜しくも35歳という若さで脳卒中のためこの世を去っている。1995年、第13回ショパン国際ピアノコンクールにて1位なしの2位に入賞した彼のテクニック、音楽性は古今のピアニストの中では圧倒的なもので、正直僕は彼の存在すら知らなかったし、音源を聴いたこともなかった。昨夜、コンクールで実際に演奏した「幻想即興曲」のLiveを聴く。

ショパン:幻想即興曲作品66
アレクセイ・スルタノフ(ピアノ)

このショパンの有名な遺作は、僕も若い頃から好きでよく聴いていた。あまりに聴きすぎたこともあり最近はほとんど耳にすることもなくなったのだが、事情があり幾つかの演奏を聴き比べてみた。アルトゥール・ルービンシュタインウラディミール・ホロヴィッツサンソン・フランソワアナトール・ウゴルスキなどなど。
いわゆるショパン弾きとして世界的に著名な巨匠ピアニストを横目にスルタノフのピアノが発するロマンチシズムが炸裂する。凄過ぎる!どうして彼が2位なのか?多分に政治的な事情があるとしか思えない。とにかく残された録音があまりにも少ないのがとても残念だが、この「幻想即興曲」が残されていたことだけでもまずは感謝するべきだろう。

どこの世界でも表舞台にほとんど出ないまま忘れ去られていく「天才」がいよう。「運」というものの力なのか、それとも「マスコミ」が作り出した幻想なのか、ともかく「事実」を自分の目や耳で確認、体験することがやっぱり一番重要だ。
スルタノフは91年以降4度来日をしているという。今はそれが聴けなかったことが悔しい。

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