各声部が独立し、そして共生する。その理想の形を体現するのが、いわばポリフォニー音楽。MJQを聴いて思う。例えばバッハの音楽はジャズに通じる。なるほどジャズというのはポリフォニーの音楽なんだ・・・。
中世・ルネサンス期の音楽に源泉を持つ、確かにそれぞれ勝手気ままに、それでいてルールを逸脱しないギリギリの線で音楽を創造する行為こそが「ジャズ」。
肝はベースライン。リズム隊がお粗末だとジャズは輝かない。しかし、重心の安定した、その上縦横無尽の展開を見せるそれを目の当たりにすると、その音楽は一線を越え、僕たちをすぐさま虜にする。
1950年代の、あの頃のいわゆるモダン・ジャズは古くて新しい。その上、熱い。何百年も前から脈々と流れる音楽の基本パターンを踏襲しつつ、最小限の3つの楽器でそれまでにない新しい音楽を生み出すのだから。ハンプトン・ホーズ・トリオも、当然ホーズのスウィング感溢れるピアノ・プレイに心奪われるものの、レッド・ミッチェルのベースとチャック・トンプソンのドラムス・プレイにこそ真髄を見る。これこそまさに縁の下の力持ち。ジャズの場合、特にこの「縁の下」が重要だ。
Hampton Hawes, Vol.1:The Trio(1955.6.28録音)
Personnel
Hampton Hawes (piano)
Red Mitchell (bass)
Chuck Thompson (drums)
正確なパルスを持つ生々しい色艶こそがレッド・ミッチェルのベースの特長。そこにチャック・トンプソンのドラムスが対抗することなく、そしてぶつかることなく和する。
とはいえ、何といってもホーズのピアノ・ソロが圧巻。
冒頭、ガーシュウィンの名曲”I Got Rhythm”において彼のピアノが勢い火を噴く。恐るべき指の回り、そしてイマジネーション溢れるタッチの妙。対立するミッチェルのベースもそれに影響を受け、跳ね回るのだ。
コール・ポーターの”So in Love”の、何という静かなる哀愁。しかし、芯のある力強いピアノだ。あるいは、カーン&ハマースミスⅡ世の”All the Things You Are”のイントロ・ピアノ・ソロの涙なくして聴けない美しさ。
白眉はラスト・ナンバー”Carioca”。明朗で快活、かつ洒落たラテン・ビートに心躍る。気のせいかホーズのピアノも、他の楽曲に比して実にエネルギーに満ちる。わずか2分22秒に込められた奇蹟である。
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