冨田勲の「展覧会の絵」

tomita_moussorgsky_pictures_at_an_exhibition.jpg「人を導く仕事」の鉄則。超3次元的に解釈すると、実力をつけること、つまり経験を積むことであり、それは他の誰でもなく自分自身との闘いであるということに等しい。プライドとは「生き残ること」だという。これも笑ってしまうほど超現実的であり、3次元的である。でも、身体を持って生まれてきた以上、そして今現在この世で生活している以上、「生活」を第一に考えることは当然のことである。甘えてはいられない。

ビジネスでは「損して得とれ」ともよくいわれる。確かにその通りだと思う。でも、そこに「意図」や「計算」が入るならそれはどうも違うと僕など思ってしまう。根が正直なだけに「計算」がまるでできない。本当に「してあげたい」と思えたときにしか「してあげること」ってできないんじゃないか?そんな風に考えてしまうのだ。それって甘いのか?世間ってそんなに甘いもんじゃないとある人は言う。

21世紀という時代においては、前世紀体の「考え方」は通用しないと僕は思う。根底に「愛」がないと成り立たぬ。頑固といわれればそれまでだが、信念は曲げちゃいけない。70年代、冨田勲のムーグ・シンセサイザーが一世を風靡した。「ムーグ」といえば、ロック音楽においてはThe Beatlesが(厳密にはGeorge Harrisonが)”Here Comes the Sun”で使用したのが初めだったのだろうか。それよりEL&PのKeith Emersonの方がもっと衝撃的だったか。そう、彼らのライヴ録音である「展覧会の絵」を始めて耳にした時は本当にぶっ飛んだ。そして感動した。それこそ音楽の持つジャンルを超えた普遍性に胸打たれた。

冨田勲/ムソルグスキー:展覧会の絵
冨田勲(シンセサイザー)

いや、これはやっぱり凄い!7ヶ月の期間を要して生み出された、冨田氏本人の言葉を借りるなら竹細工のような手作り感満載の傑作録音。ムソルグスキーのこの名作を初めて聴いたのはフェドセーエフ&モスクワ放送響とのアナログ盤によってだったと記憶する。その後、ホロヴィッツの有名なカーネギーホール・ライヴの壮絶な演奏で原曲に触れ、止めが前述のEL&Pによるロック・バージョンであり、このシンセサイザー盤だった!アル中のムソルグスキーが友人の絵にインスパイアされた音楽だといわれるが、この中には天使も悪魔もいる。清澄なる「美」が現れては、おどろおどろしい
「醜」が顔を出す。でも、その美醜の中にこそ「人間らしさ」を感じられるのだから、何事も簡単に否定はできない。一方的な見方では通用しないのだ。

そういえば、先ほどNHKのニュースを見ていたら、シーシェパードが日本の調査捕鯨団の監視船と衝突したニュースが採り上げられていた。シーシェパードが調査捕鯨を妨害したということなのだが、それも日本の立場からみた視点に立っているに過ぎない。いずれも「私が正しい」ことを主張しているのだが、真実はどこにあるのやら。

今年は無限の可能性を秘めたこの音楽-「展覧会の絵」に愛知とし子が挑戦する。楽しみだ。


6 COMMENTS

雅之

おはようございます。
YMOの第4のメンバーで、シンセサイザー・マニピュレーターとして重要な役割を担った松武秀樹は、もともと冨田勲の助手でしたからね(19歳で弟子入り)、YMOもPerfume(楽曲提供 中田ヤスタカ )も、冨田の元祖テクノ音楽のDNAをしっかりと受け継いでいますね。
我々は、クラシック音楽演奏で、「人工的」という言葉を、よく軽蔑的に使いますよね、「カラヤン&ベルリン・フィルのブルックナーは人工的」とか・・・、でも本当はあういう表現っておかしいです。演奏行為は全部人工的なのですし、CDやLPで聴くのも、人工的な行為です。ピアノで演奏するのもシンセサイザーで演奏するのも、じつは「人工的」という本質では、そう変わりません。
そういえば、先月でしたか、ピアニストの小原孝がNHKFMの番組「弾き語りフォーユー」でYMOの「東風」を小原自身のピアノ・アレンジ版で弾いているのを聴きましたが、あれはカッコよかったです。小原も天才です。
音楽は空気という「氣」を利用し、シンセサイザーやオーディオは、電気という「氣」をも利用する、冨田の「展覧会の絵」「惑星」は、「風神」「雷神」の双方にお世話になっている、天然由来のバランスのとれた音楽なのですね、じつは・・・(笑)。
http://www.youtube.com/watch?v=dLp3cVl_7Fc&feature=related
突然ですが、一昨年に出た、「大人の科学マガジン別冊 シンセサイザー・クロニクル」 (Gakken Mook 別冊大人の科学マガジン)
http://www.amazon.co.jp/%E5%A4%A7%E4%BA%BA%E3%81%AE%E7%A7%91%E5%AD%A6%E3%83%9E%E3%82%AC%E3%82%B8%E3%83%B3%E5%88%A5%E5%86%8A-%E3%82%B7%E3%83%B3%E3%82%BB%E3%82%B5%E3%82%A4%E3%82%B6%E3%83%BC%E3%83%BB%E3%82%AF%E3%83%AD%E3%83%8B%E3%82%AF%E3%83%AB-Gakken-Mook-%E5%88%A5%E5%86%8A%E5%A4%A7%E4%BA%BA%E3%81%AE%E7%A7%91%E5%AD%A6%E3%83%9E%E3%82%AC%E3%82%B8%E3%83%B3/dp/4056051836/ref=sr_1_1?ie=UTF8&s=books&qid=1262813686&sr=8-1
は、¥ 3,360 で 驚くほど高度な遊びが楽しめるので、絶対におススメ、私の使用経験から太鼓判を押します。
アンドロイドは電気羊の夢を見るか?

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岡本 浩和

>雅之様
おはようございます。
YMOは明らかに冨田からの影響ありますよね。
ところで、「人工的」ということについての見解、おっしゃるとおりだと思います。
>音楽は空気という「氣」を利用し、シンセサイザーやオーディオは、電気という「氣」をも利用する、冨田の「展覧会の絵」「惑星」は、「風神」「雷神」の双方にお世話になっている、天然由来のバランスのとれた音楽なのですね、じつは
これは名言です!!それにしても「ライディーン」懐かしいなぁ!
ご紹介のシンセサイザー・クロニクルについては当時話題になったので買ってみようかとは思ってましたが、結局スルーしてしまいました。絶対おススメとあらば試してみなきゃですね。ありがとうございます。
ちなみに、雅之さんはフィリップ・K・ディックにお詳しいのですか?僕は若い頃いくつかは読みましたが、数が少ないのでまったく言及しかねるのです。しかし、昔からとても気になっている作家です。

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雅之

恥ずかしながらフィリップ・K・ディックで読んだのは、「アンドロイドは電気羊の夢を見るか? 」だけです。何といっても映画「ブレードランナー」に熱中しましたので・・・。「2001年宇宙の旅」や「惑星ソラリス」と並ぶSF映画の金字塔だと思っております。
http://www.hmv.co.jp/product/detail/2616846

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岡本 浩和

>雅之様
わざわざご回答ありがとうございます。
何といっても「アンドロイド~」は「ブレードランナー」の原作ですからね!

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アレグロ・コン・ブリオ~第5章 » Blog Archive » モントゥーの「春の祭典」(GT9049)

[…] 朝日新聞夕刊を見ていたら、「人生の贈りもの」は冨田勲さんだった。かつて、「展覧会の絵」をはじめとする彼のシンセサイザー音楽を繰り返し聴き、その独創的なアレンジと、いわゆる電子楽器の無限大の響きに度肝を抜かれ、その可能性に随分惹かれたことを思い出した。そのうち飽きが来てしまったのか、夢中で聴くことはなくなったけれど、時折取り出して耳にする冨田サウンドはやっぱり「心のツボ」を刺激する。 […]

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