人生すべて順調なり

2011年の夏が嵐のように過ぎ去り、ようやく秋めいた季節になった。
気がつけばもう10月。昨晩、NHK音楽祭2011で聴いたベレゾフスキーの弾くチャイコフスキーは本当に心に沁みわたる名曲の名演奏だった。ロシア音楽の愁いを帯びた旋律と得も言われぬピアニズムが、あの大き過ぎるNHKホールに響き渡った瞬間の快感というのは何物にも代え難い。音楽の尊さと、音楽をするということが観客とのまさにコミュニケーションであるということをあらためて思い知らされたそんな素敵な経験だった。独りで物思いに耽るのも良いが、誰か相手がいて知恵を分かち合うことはもっと素晴らしい。人が人として存在するために必要なのが人であるということ。それも(年上だろうと年下だろうと)互いに尊敬し合える人の存在が。

一昨日からラフマニノフの第2交響曲を繰り返し聴いている。神無月の今頃に相応しい、甘美な調べに満ち満ちたこの音楽は疲れた心身を見事に癒してくれる。特に70年代初頭にプレヴィンが初めて完全版を録音したという音盤は昔からの愛聴盤で、過去の記憶を沸々と蘇らせてもくれ、本当に飽きない。

ラフマニノフ:
・交響曲第2番ホ短調作品27
・ヴォカリーズ作品34-14
・歌劇「アレコ」~間奏曲&女たちの踊り
アンドレ・プレヴィン指揮ロンドン交響楽団

この大シンフォニー作曲当時のラフマニノフは、決して状態が良いわけではなかったらしい。時に自信を喪失し、無気力になってしまう。そんなときに決まって彼は外国の音楽、巨匠の音楽に救いを求めたという。例えば、ヘンデルの「サムソン」、ベートーヴェンの「荘厳ミサ曲」、あるいはバッハの「マタイ受難曲」など・・・。
ラフマニノフが求めた心の安息がこれらの大宗教音楽を体感することによってもたらされ、かの第2交響曲作曲の大いなるエネルギーになったとしたならば、荒廃した現代においていわゆる古典音楽の巨匠たちの音楽を享受しないというのは何ともったいないことか(大袈裟だけど、そういう意味合いも込めて僕は「早わかりクラシック音楽講座」を開催してもいる)。

ちなみに、本CDの選曲の妙味。シンフォニーの後に、まるでアンコールのように悲しみにもだえるような(笑)「ヴォカリーズ」が収録され、さらに歌劇「アレコ」からの陽気な抜粋曲で締められているところ。素敵・・・。
人生すべて順調なり。


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