モンク・スイート

セロニアス・モンクが亡くなって今年で30年になる。ジャズを聴くようになってしばらくしてからようやく彼の存在を知った僕だが、忘れもしないのは大学に入学したのが亡くなったちょうど翌年で、いわゆる教養課程で小島美子先生の「音楽」の講義が6限だったかにあり、面白そうだと履修登録したものの、夜遅い時間だったこともあり、そして当時は音楽が好きだとはいえ、あまりに幅広い、当時の僕の許容範囲を超えた内容に少し怖気づいたということもあり、ほんの2度ほど出席しただけで行かなくなってしまったこと。
内容や前後の文脈はすっかり忘却の彼方なのだけれど、憶えているのは、その最初の授業でまさにセロニアス・モンクのレコードを大音量で聴かされたこと。今だったら食い入るように聴き、そして必ず全出席したであろう授業なのだが、後悔先に立たず(そもそも猫に小判、豚に真珠、馬の耳に念仏・・・、だったろうけど)。

モンクの音楽は前衛である。いわゆる現代音楽以上に20世紀的で、少なくとも僕の場合繰り返し聴くに及び虜になり、ようやく一生の宝になりつつあるという代物。例えば、クロノス・カルテットが録音した、彼の音楽を弦楽四重奏用に編曲したものなど、何とも表現し難い風情に溢れており、単なるジャズ音楽ではない絶対音楽としての懐の広さ、器の大きさすら感じさせてくれる。

Kronos Quartet with Ron Carter:Monk Suite(1984録音)

Personnel
David Harrington (1st violin)
John Sherba (2nd violin)
Hank Dutt (viola)
Joan Jeanrenaud (cello)
Ron Carter (bass)
Chuck Israels (bass)
Eddie Marshall (drums)

何とそこにはロン・カーターがいて、チャック・イスラエルがいて・・・。
いわゆるクラシック音楽の四重奏団と生粋のジャズ・ミュージシャンの協演というアルバムだが、違和感がないどころか両者が完全に溶け合っているところが凄い。というより、このことはやっぱり音楽にジャンルや垣根は存在しないという証拠でもある。
1曲目”Well, You Needn’t”からすでに独特の解放感と即興性を醸し出す。このノリはクラシック音楽にはない。次の”Rhythm-A-Ning”はプレイヤーが本当に楽しんで演奏していることが手に取るようにわかる傑作アレンジ。以下、言葉で語り尽くせない名曲たちが弦楽器のアンサンブルによって表現される・・・”Round Midnight”がシェーンベルクの作品のように聴こえる・・・。

モンクのオリジナル作品6曲と、モンクが好んで演奏したエリントン作品3曲、合計40分ほどのこのアルバムの価値は実に計り知れない。

2 COMMENTS

雅之

おはようございます。

モンク、深いですねぇ。

何なんでしょう、あの深さは。

モンクこそ、岡本さんがいつもおっしゃる、「間」の大切さを教えてくれますね。

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